SCAI THE BATHHOUSE(東京・谷中)にて、最新のテクノロジーを使ったインスタレーションなどで知られる美術家・森万里子の個展が3月11日より開催される。さまざまなメディアを駆使して自然や科学、思想について探求を続ける作家による、同ギャラリーでは7年ぶりとなる展覧会は、円が描く軌跡「サイクロイド」や宇宙論がテーマとなる。
森万里子は、1967年東京生まれ。文化服装学院を卒業後、ロンドンのバイアム・ショウ美術学校やチェルシー美術大学で学び、最新の技術を使ったインスタレーションや立体作品、絵画を発表してきた。97年には第47回ヴェネチア・ビエンナーレで優秀賞を受賞するなど、国際的に注目を集めるアーティストのひとりだ。
90年代には日本の都市空間を舞台として、自らが登場する近未来的な写真作品を発表。近年では、輪廻転生や自然との融合をテーマに、宇宙や宗教、自然科学から発想した大規模な立体作品などを制作している。ヴェネチア・ビエンナーレで優秀賞を得た、飛天に扮した作家自身とともにCGの菩薩たちが登場する3Dビデオ作品《ニルヴァーナ》(1997)や、巨大な宇宙船型のインタラクティブ・インスタレーション《WAVE UFO》(2005)が、代表作として挙げられる。
本展は、展覧会タイトルにもなっている最新作「Cycloid」シリーズを中心に、彫刻や平面作品で構成される。円がある規則のもとで回転するときに描く軌跡「サイクロイド」を使い、繊細な形状を生み出した彫刻作品のほか、宇宙論の解釈から着想した立体作品を発表。同時に、沖縄の海を見て描いたドローイングをもとにしたフォト・ペインティングも展示。自然のエネルギーや法則からインスピレーションを得て、理論や概念を可視化した作品群が展開される。
現在はニューヨークを拠点に活動し、2007年よりヨーロッパ、ブラジル、ロンドン、ニューヨーク、オーストラリアにて、これまでの活動を総括する大規模個展を開催してきた森。また、2010年の宮古島をはじめ、屋外に作品を設置するプロジェクトも展開している。国内での個展開催は、2013年の「Infinite Renew」(エスパス・ルイ・ヴィトン東京)展以来となる。