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Channel: bitecho[ビテチョー]
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期待のアーティストに聞く! 市原えつこが生み出す現代のSF

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最新のテクノロジーを使い、文化や信仰を新しいかたちでとらえ直す作品やプロジェクトに取り組んできた、1988年生まれの市原えつこ。NTTインターコミュニケーション・センター[ICC](東京・初台)の新進作家紹介コーナー「エマージェンシーズ!」で12月20日から個展を開催する市原に、作品について聞いた。

隠された真理から事件を発明する

 センサーが取り付けられた大根の表面に触れると、艶かしい声が発せられる「セクハラ・インターフェース」や、虚構の美女とインタラクションできる「妄想と現実を代替するシステムSR×SI」。市原えつこは、日本特有ともいえるイマジネーション、少しの後ろ暗さを伴う文化・習慣・信仰などをユーモラスな観点から読み解き、そこにテクノロジーを掛け合わせた作品・プロジェクトを発表してきた。これらの活動は時にインターネット上で様々な賛否両論を巻き起こしてきたが、そうした人々の反応は、市原が作品を通して希求するもののひとつだという。「作品はあくまでトリガー。自分の作品そのものよりも、その先の社会の反応や出来事に興味があります」。

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市原えつこ デジタルシャーマン・プロジェクト 撮影=黒羽政士

 NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]の新進作家紹介コーナー「エマージェンシーズ!」にて12月20日から2017年3月12日まで展示する作品のひとつ「デジタルシャーマン・プロジェクト」は、市原が祖母の死をきっかけに再考した「弔い」がテーマ。故人の面を顔に取り付けたロボットに当人の言葉や身振りを「憑依」させ、死者が今世と来世の間をさまようとされる49日間をともに過ごすことで、新たな弔いの形を提示する。

 現実と虚構、日常と非日常の境界を突くSF作品を思わせるこれらの作品の根底にあるものは、人間の生死や性についての真実、そして人間が本来備える性質への探求心だ。「古くから続く祝祭の多くには"狂気"にも近しい奇妙な精神性が見えますが、近代以降、人々は合理化のために様々なメンタリティを無意識に抑圧しているような気がする。私はそうした人間の深淵をポップな見た目で包みながら、白日のもとに晒したいのかもしれません」。

文=野路千晶
『美術手帖』2017年1月号「ART NAVI」より)

エマージェンシーズ!030 市原えつこ
会期:2016年12月20日~2017年3月12日
会場:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
電話番号:0120-144-199
開館時間:11:00~18:00
休館日:月、保守点検日(2月12日)
URL:www.ntticc.or.jp

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