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躍進を続けるアートバーゼル。アジアディレクターにインタビュー

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バーゼル(スイス)で生まれた世界最大の現代美術のアートフェア「アートバーゼル」。現在ではバーゼルに加えマイアミ(アメリカ)、香港と3大陸の主要都市で毎年開催されている。2016年3月24日から始まるアートバーゼル香港に寄せて行ったインタビューにて、アジアディレクターのアデリン・ウーイに躍進を続けるアートバーセルについて語ってもらった。

──アジア最大級のアートフェアとしてアートバーゼル香港の動向に注目が集まっています。今後の展開や目指している方向性についてお聞かせ下さい。

 アートバーゼル香港はアジアにフォーカスしたアートフェアであり、これからもそれは変わりません。アジアではアートフェアというコンセプトの認知度は欧米よりも低く、アートバーゼル香港も今年で4回目を迎えるまだ若いアートフェアです。だからアートバーゼルのなかでも、バーゼルやマイアミと比べてまだいろいろなことに取り組める余地が残っています。

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アートバーゼル香港2015の展示会場の様子 © Art Basel

 アートバーゼル香港がいちばん重要視していることは、アートフェアとしてのクオリティーです。そして個人的にはコンテンツ。ここでいうコンテンツの重要性とは、あまり現代や近代といったカテゴリにとらわれず、様々なジェネレーションやジャンルのものを取り入れるということです。ただ単に今現在ホットなアート作品やコンテンポラリーの新作を揃えるだけではなく、美術史上のハイライトに注目していきたいと思っています。

 今年はとても興味深いギャラリーとアーティストたちが名を連ねています。多くのギャラリーが1人のアーティストの作品を展示しているソロプレゼンテーションしていたり、アートフェアに出品されたことのないアーティストを紹介したりしています。例えば、TARO NASUからはダムタイプの高嶺格さん、台湾のEslite Galleryからは香港やニューヨークで暮らしていたデイヴィッド・ディアオを紹介します。彼らはアジアと深いつながりがありますが、今回がアートフェアという場で紹介されるのは初めてです。日本のギャラリーからもYumiko Chiba Associateの植松琢麿やタカ・イシイギャラリーの三島喜美代といった、アジアの他の地域ではまだ知られていない日本の素晴らしいアーティストたちを迎えられることができ、とてもうれしく思っています。

 アジアには世界に誇るべき作家や作品が多く存在していて、アートフェアという機会がなければ、それらを目にすることはなかなか難しいかもしれません。アジアには独立から間もない国が多く、現代美術そのものもアジアにいる人々にとって新しいものです。これらにアートバーゼル香港で着目し、アジアの人々のみならず世界に向けて紹介することはとても意味のあることだと思っています。

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アートバーゼル香港2015に出展した香港のGallery EXITの様子 © Art Basel

──アートバーゼル香港に出展しているギャラリーの半数は欧米であり、「アジア性」という点では他のアジアのアートフェアに比べてやや希薄な印象があるように思えます。アートバーゼル香港はアジアに特化しているというよりも、むしろそこに行けば何でも揃うという百貨店的なあり方を志向しているのではないでしょうか?

 デパートでも東京の三越はロンドンのハロッズとは違うように、バーゼルショーにもそれぞれの特色があって、各フェアでしか見られないものがあります。アートバーゼル香港はやはりアジアに注目したアートフェアなので、ニューモダンからネオダダ、具体、コンテンポラリーとアジアに重点を置いた様々な作品を目に触れることができます。実際にバーゼルやマイアミに行くとアジアのギャラリーはほんのわずかで、逆にバーゼルではヨーロッパ、マイアミではアメリカやラテンアメリカのギャラリーなど、香港では見られないものが充実しています。

 でもよく考えるとデパートのような側面もありますね。とにかくフェアに来てさえいただければ、いいものが取り揃えられているので、きっとそこでベストなものを見つけてもらえるはずと思っています。今はもう何でも手に入る時代ですし、アートコレクターの嗜好も変わり続けますから、アートフェアの方程式のようなものはありません。一般的にアートコレクターはまず母国の作品を買うと言われていますが、質の高い作品があれば海外のものも買います。洋服でも国内外問わず、いいものだったら買いますよね。それと同じ事です。

 また、欧米のギャラリーが多いのは、アートバーゼル香港にはアジアのなかだけではなく、西洋と東洋の交流を促す目的があるからです。それぞれのギャラリーやアーティストたちがコミュニケーションをとりながら、刺激し合える場になればいいと思っています。

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香港の高層ビルに投影されたツァオ・フェイの《Same Old, Brand New》 © Art Basel

──目覚ましい発展をとげているアートバーゼル香港ですが、まだ足りないものや課題がありましたら教えてください。

 まだまだたくさん課題はあります。先ほども言ったように、世界に知られていない歴史的に重要なアートがアジアには数多くありますし、アジアの新しいギャラリーのプロモーションを積極的にしていきたいと思っています。アートマーケットは今までになく競争が激しくなってきていますからね。だから新しいギャラリーを応援し、アートバーゼル香港に訪れる多くのコレクターたちの目に触れて自信がつくように、彼らが参加できるよう様々なセクターを設けています。

 アジアにおけるアートの収集はまだ歴史が短い文化です。私がコレクターに伝えていきたいことは、ぜひアートフェアでアートを買ってほしいということです。なぜならアートフェアでギャラリーからアートを買うということは、作家をサポートすることと同じことだからです。オークションではアートは商品として取引されていますが、アートフェアではギャラリーから直接アートを買うことによって、アーティストをサポートすることができるのです。

 今、アジアでは素晴らしいアーティストたちが活躍しています。そのようなユニークな時代に私たちは生きていて、そのようなアジアのアートシーンをこれからも盛り上げて世界に発信していきたいと思っています。

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アートバーゼル、ディレクター・アジアのアデリン・ウーイ
アートバーゼル香港
会期:2016年3月24日~3月26日
場所: Hong Kong Convention and Exhibition Centre
住所:1 Expo Drive, Wanchai, Hong Kong
URL:www.artbasel.com


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