イギリスのテートは1988年以来、28年もの間にわたって館長を務めてきたニコラス・セロータが2017年をもって退任することを発表した。同氏はテート・セント・アイヴスやテート・モダンの開館など、テートの拡大に尽力してきた立役者として知られている。
ニコラス・セロータは1946年生まれ。ケンブリッジ大学とコートールド美術大学で学び、1969年にはテイト委員会「ヤング・フレンド」の委員長に就任。その後、イギリス芸術協議会やオックスフォード近代美術館を経て、1976年にロンドンのホワイトチャペル・ギャラリーの館長に就任。12年間の在任中にアンゼルム・キーファーやゲルハルト・リヒターなどをロンドンに紹介した。
1988年にアラン・ボウネスの後を継ぐかたちでテート館長に就任。90年に入ると「New Display」プロジェクトをスタートさせ、より多くの収蔵品を展示できるような体制をつくりだした。また91年には同館が主催する「ターナー賞」の見直しを行い、同賞を若手現代美術アーティストのための登竜門的存在として再出発させている。
また2000年には今や世界を代表する現代美術館として知られるテート・モダンの開館にも携わり、特にタービン・ホールにおいてユニリーバやヒュンダイなどをスポンサーに迎えたプロジェクトは、同館が世界中から大きな注目を集める要因ともなった。今年に入ってからはテート・モダンの拡張を実現させたほか、2017年にはテート・セント・アイヴスのリニューアルも控えている。

今回の退任に関してテートの評議委員会会長であるブラウン卿は「世界でもっとも優れた館長のひとりであるニコラス・セロータと長年仕事ができたことを光栄に思う。彼のリーダーシップのもと、テートは国内外において秀でた、また世界でもっとも来館者数の多い文化機関のひとつになることができた」とその功績を讃えている。
セロータは「優秀な同僚たちとともにテートを発展させるのは、とてもエキサイティングなチャレンジだった。この30年で、イギリスにおけるビジュアル・アーツへの評価は大きな変化を見せた。テートが他の美術館とともに役立てたことを誇りに思っている」とコメント。同氏は2017年2月より、アーツカウンシル・イングランドの会長に就任することが決定しており、アート界における影響力の強さは今後も継続されていくものと思われる。