豊臣秀次が築いた城下町「近江八幡旧市街」を舞台に、今回で7回となる「BIWAKOビエンナーレ2016 "見果てぬ夢~Eternal Dream"」が9月17日より開催される。近江商人発祥の地として栄えた江戸時代からの市内街並を歩いて回りながら、気鋭の若手実力派を中心に60組以上のアーティストの作品を見ることができる。
2001年から始まったこのビエンナーレは、今回で7回目を迎える。会場となる近江八幡旧市街は、豊臣秀次が築いた城下町を基礎に、近江商人発祥の地として発展。江戸期に建てられた町家が軒を連ね、国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている。しかし市内には、放置された多くの空き町家が点在する。BIWAKOビエンナーレは、これらの残された貴重な建物の保存と活用を試みてきた。

はじまりから16年という歳月は、BIWAKOビエンナーレを一つの「作品」へと育んできた。「建物の交渉、作品の制作から展示まで、すべてが一つの作品」と語るのは、総合ディレクターの中田洋子。今年も60数組のアーティストを選定した。その基準は「私自身が感動できるか否か」。作家も大御所というよりは、若手実力派が多い理由は、「無名なのにすごい作品だったら、これまでにない感動を覚えるでしょう」。コンセプチュアルな理論派より、気骨がありコツコツと職人のように積み上げていく作品に惹かれるという。今回、林茂樹、山本基などの作家が新たに加わった。ここから世界へ活躍の場を広げる作家も多い。

鑑賞者は、10数か所に点在する作品を巡るのだが、多くの会場が徒歩2〜3分の距離にあり、散歩コースにもぴったり。美しい町家や由緒ある寺を訪れ、最後に八幡山の山頂にある展望館に足を伸ばせば、碁盤の目の街並みが見下ろせる。土地に潜む気配と作品の融合。この秋、密度の濃い時間を近江八幡で過ごしたい。

やきものの産地に生まれ、セラミック表現の可能性を追求。綿密に計算された技術のもと、立体作品を制作する初参加の林茂樹
総合ディレクター・中田洋子さんに聞くみどころ
BIWAKOビエンナーレに来ていただいた方々は、無条件に感動していただけると思います。私はアートとは、言葉や次元を超えて、直接、魂のいちばん奥に届くものであってほしいと願っています。人類は戦争や殺戮を繰り返し、しかし生き続けている。そういった愚かな行為とバランスをとり、拮抗するための「知恵」がアートなのではないか。
また、BIWAKOビエンナーレは、海外の人たちにも好評です。日本人が積み上げてきた美意識を呼び覚まし、それを誰もが生まれながらにして持っているという誇りを、共有できる場を目指したい。ぜひ、足を運んでいただき、たった一度きりの一人ひとりの生を、言葉ではなく、心で感じ取ってくださればと思います。

永峰美佳=文
(『美術手帖』2016年8月号より)
"見果てぬ夢~Eternal Dream"
会場:滋賀県近江八幡旧街
開場時間:10:00~17:00
休館日:木休(木曜祝日の場合は翌日振替、最終週は休みなし)
入館料:一般 2500円【2300円】/ 学生(高校生以上) 2000円【1500円】/ 中学生以下・障がい者 無料 ※【】は前売
URL:energyfield.org/biwakobiennale
青木美歌、淺野健一、市川平、井上剛、内田望、パンチョ・キリシ、河合晋平、クレメント・ジャンダール、コシノヒロコ、サークルサイド、田中誠人、中川周士、二階武宏、ヨアナ・ハウロット、三木サチコ、南野馨、林茂樹、ガブリエラ・モラウェッツ、八木玲子、山本基、度曾保浩 他