リッツォーリでは、東京の文化を包括的に紹介する書籍で「ファッション」「写真」のジャンルを担当。特集での出会いをきっかけに、写真家のアシスタントなども務めた。そして2014年、自身が代表となる「KANA KAWANISHI ART OFFICE」を設立。海外の出版社に向け、作品集の企画を提案するなどの活動を行った。そんななか、転機が訪れる。「ある作家さんから、『ボランタリーな活動は、どうしても疲れてくる。この業界で作家と健全な関係を保つためには、作品を売ったほうがいい』と言われたんです」。これをきっかけのひとつに、アムステルダムの現代美術写真フェア「Unseen」に出展するなど、アートフェアを中心とした活動を展開。「作家との長期的な関係を結ぶ上で、スペースは必要」だと考えた河西は2015年、ギャラリーを開廊させる。
取材時に開催していたのは、太陽光そのものを被写体として写真を撮影する片桐飛鳥の個展 Photo by Chika Takami
PROFILE かわにし・かな 神奈川県出身、幼少期をロンドンで過ごす。日本女子大学在学中に、ニューヨークのフォーダム大学に留学。2006年よりRizzoli New Yorkの東京コーディネーターとして書籍編集に携わる。アーティストマネジメント・編集事務所、展覧会企画財団を経て2014年にKANA KAWANISHI ART OFFICE、2015年にKANA KAWANISHI GALLERYを設立。
nap galleryで初の個展となる本展では、東京の路上を中心に、海外の街やレストランなど、様々な場所で撮影されたスナップ写真を展示する。作品の被写体となるのはすべて男性。歴史上「美の象徴」の多くは女性であったことから、「美しさの範疇を広げる」試みとして着想されたシリーズだという。
女性が社会のなかで感じるやりきれなさを描いた小説が添えられた、アメリカの写真家、ゲリー・ウィノグランドの写真集『Women are Beautiful』(1975)からとって「Men are Beautiful」と題された本展は、街や人々の「いま」を記録するだけでなく、ジェンダーにとらわれない社会のあり方を考察する試みでもある。初日となる12月10日には、写真集も刊行される。
出和絵理は紙のように薄くのばした真っ白な磁器を組み立てた繊細な立体作品《Forest》(2016)を、染谷聡は漆とどこかで拾った小枝や石などと独自の方法で関係させた作品《みしき》(2014-16)など他、小野耕石は見る角度によって様々な表情を見せるカラフルなドットをシルクスクリーンで印刷した《Hundred Layers of Colors》(2015-16)を含めた作品群を発表する。さらに、あらゆる境界を超えて被写体と向き合った写真を特徴とする齋藤陽道や、廃棄物を使ってインスタレーションを展開している丸山純子の作品が見られる。
「アーケードゲームの『Mr. Do! VS ユニコーン』に出てくるユニコーンの赤いボディと青いツノが頭から離れんかったんですよ。ミッキーマウスのようにもしたいな思うても、とてもできん。あるとき、ミッキーマウスのようにしたいんじゃったらミッキーマウスを見てつくりゃいいと気づいたんですよ。それで、ユニコーンとミッキーマウスを合わせてラッキーコーンをつくったんです」。
舘鼻則孝は、国内外でアーティスト、ファッションデザイナーとして活動する。高校時代からファッションデザイナーを志して東京藝術大学に進学して染織を学び、遊女に関する文化研究を行いながら着物や下駄を制作。2010年、花魁の下駄から着想を得て卒業制作として発表した「ヒールレスシューズ」をレディー・ガガが着用し、話題となった。伝統工芸の領域でも活動し、2016年3月にはパリのカルティエ現代美術財団で人形浄瑠璃文楽の公演『TATEHANA BUNRAKU : The Love Suicides on the Bridge』の監督を務めた。
本展では、「ヒールレスシューズ」シリーズなどの新作を発表。舘鼻にとって「孤高の存在」である岡本太郎にインスパイアされて制作した、「自分自身に"マジナイ"をかけ外界からの理解を拒んだ作品群」と語る。また、自身の骸骨を鋳造彫刻とした「Traces of a Continuing History」シリーズの一部も展示される。
タイトルは《ALL OF A TREMBLE(オール・オブ・ア・トレンブル)》。かつて模様を言語に変換する機械が発明された際、その機械が最初に発した言葉であり、「ぞくぞくする」「ふるえる」という意味を持つ。その名のとおり穏やかな瀬戸内海を目前に佇む家屋全体が、土地と響きながら、絡み合うイメージと音を奏でているかのようだ。
PROFILE Anri Sala 1974年アルバニア共和国、ティラナ生まれ。現在ベルリン在住。アルバニアで文学士号(絵画)を取得後、フランスでビデオ制作や映画の監督手法を学ぶ。2001年に第49回ヴェネチア・ビエンナーレで若手作家賞受賞、13年同ビエンナーレでベネッセ賞受賞。主な展覧会に11年「1395 Days Without Red」(国立国際美術館、大阪ほか)、12年回顧展「アンリ・サラ Two Films」(ポンピドゥー・センター、パリほか)、14年「The Present Moment(in D)」(ドイツ、ハンス・デア・クンスト)など。
ALL OF A TREMBLE
香川県の豊島に公開されたアンリ・サラによるインスタレーション展示《ALL OF A TREMBLE(オール・オブ・ア・トレンブル)》。豊島シーウォールハウスと名づけられた、今は使われていない民家1棟すべてが作品となっている。キュレーションは三木あき子。サウンド編集はオリヴィエ・ゴワナール。公開日に関してはベネッセアートサイト直島のウェブサイトを参照。 URL:benesse-artsite.jp