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ジェフ・クーンズ、パリ同時多発テロ犠牲者をチューリップで追悼

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アメリカの現代美術家、ジェフ・クーンズは2015年11月13日にパリで発生した同時多発テロの犠牲者を追悼するため、高さ約12メートルにおよぶ巨大作品を制作、パリ市に寄贈することを明らかにした。作品名は《チューリップのブーケ》(Bouquet of Tulips)。

 同作はブロンズ、ステンレス、アルミニウムなどによって構成され、高さは約12メートル、重さは土台部分を含めると約33トンにおよぶ巨大なモニュメント。チューリップの花の部分は、ジェフ・クーンズの特徴であるバルーン状の形態となっている。

 クーンズとジェーン・D・ハートリー駐仏米大使の間で発案されたこの作品について、クーンズは「この作品は1年前に起こった悲惨な出来事への追悼のシンボル。トーチを持った「自由の女神」の右手を参考にしている。米仏の人々の友好を示したい。花は楽観主義や再生、自然の生命力、そして生命のサイクルといったものを連想させる。前へと進む命のシンボルだ」と同作への思いをコメント。パリ市のアンヌ・イダルゴ市長も「喜んで歓迎する。アメリカにおける「自由の女神」同様、パリ市のヘリテージ(遺産)となるだろう」としている。

《チューリップのブーケ》は現在、ドイツで制作が進められており、最終的な承認を経たのち、2017年にパレ・ド・トーキョーとパリ市立近代美術館の間の広場に設置される予定だという。総工費は約300万ユーロ(約3.5億円)で、現在アメリカとフランスで寄付を募っている。

 1886年に、フランスからアメリカに贈られた「自由の女神」が完成してから130年。アメリカからフランスに贈られることになる同作は、パリ市民にどのように受け入れられていくだろうか。


名古屋で戸谷成雄が「断層」をテーマにした新作個展を開催

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チェーンソーで木材を荒々しく削った彫刻で知られる戸谷成雄の個展「断層体」が、ケンジタキギャラリー/名古屋で開催される。本展では新作の大規模なインスタレーションを発表。2017年12月3日〜2017年1月28日まで。

 戸谷成雄は、非西洋的な可能性を追求した豪快な彫刻作品によって、「もの派」以降の彫刻のあり方を問い続けてきた。1988年のベネチア・ビエンナーレ国際芸術展をはじめ数多くの国際展に参加し、世界で高い評価を得ている。

 戸谷は1970年代から彫刻家として活動を始め、1984年より開始した複雑な表面を持つ複数の支柱で構成された「森」シリーズで注目を集めた。以後、94年より「《境界》から」、2006年より「ミニマルバロック」など様々なシリーズを展開し、続けている。

 本展は、地球の表面の亀裂や地震を意識させる「断層」をテーマに、新作彫刻を用いてギャラリーの床面を使った大規模なインスタレーションを発表。日本に生きる私たちの不安定な足元を体験させる内容となっている。

戸谷成雄「断層体」
会期:2016年12月3日~2017年1月28日
会場:ケンジタキギャラリー/名古屋
住所:愛知県名古屋市中区栄3-20-25
電話番号:052-264-7747
開館時間:11:00〜13:00/14:00〜18:00
休館日:日月祝休(12月25日〜2017年1月12日は休廊)
URL:http://www.kenjitaki.com/

もうひとつの「ケンポク」。椹木野衣が見た飴屋法水の新作劇

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演劇を中心に多彩な顔を持つ飴屋法水の新作《何処からの手紙》が、先頃閉幕した「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」で発表された。茨城県北エリアに位置する4つの郵便局にハガキを送り、返信された手紙の指示に従ってこの地をめぐる"演劇"を、椹木野衣がレビューする。

椹木野衣 月評第100回
「ケンポク」はどこにあるのか
茨城県北芸術祭、飴屋法水「何処からの手紙」

 飴屋は活動の当初から、その時ごとに発表の形態を演劇、美術、店舗営業などと様々に変えてきたが、本質的に演劇の人に違いない。

 それは今回の芸術祭参加作品でも変わっていない。なにも舞台や劇場ばかりが演劇の発表機会ではないのだ。なにか物語があり、それを演ずる人がいて、時間を共有しうる場所があり、そこで見る者がいれば、それだけでじゅうぶん劇になる。屋内であろうと屋外であろうと、公共の場所であろうと私的な空間であろうと、そのことに変わりはない。

 俳優に素人を使うことは演出の効果のうえでしばしば試みられるが、飴屋の場合はそれが動物であったことさえある。観客であるはずの自分が、いつのまにか見られる立場に逆転させられていることも少なくない。しかし、ペットショップを訪ねた自分が実はある進行中の劇の観客で、檻の中の動物たちが俳優であったことに気づく者は少なかろう。

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常陸太田、若柳旅館の一室。サーキットレースのビデオテープ3000本が壁を埋めている

 今回もそれに近いことが起きている。私たちはまず、指定された郵便局の局長宛てにハガキを出し、返信を待つ。やがて郵便局長から届いた封書には、2枚のポストカードと飴屋の書いた文章、そして手書きの地図と簡単な案内が入っている。もっとも、どれもひどく辺鄙(へんぴ)な場所にあるので、受け取っただけで終わりになる場合もあるだろう。しかしたとえその場合でも、見知らぬ郵便局長と「あなた」とのあいだには、飴屋という演出家を通じて、一定の空想上の関係が結ばれる。ましてや、指示書きに従い、丸一日かそれ以上を費やして会場に向かう者は、ふつうに暮らしていたら絶対に足を運ばなかった場所に導かれ、まったく無縁な人と巡り会うかもしれない。そのとき観客であるなら、あなたが出会う人は、たとえ現実を生きる素のままの人だとしても、飴屋が演出したある劇を唐突に生きている。それをなにかに例えるとしたら、やはり「事故」ということになるだろう。

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日立の鉱山記念館にある燻煙器。公害が植物に与える影響を調査・実験する

 たとえばそのうちのひとつで、飴屋は実際に具体的な事故のモチーフを扱っている。その事故は、部屋に貼られた展覧会のポスターを通じて、この地域で起きた、もうひとつ別の事故を引き寄せる。「ケンポク」は、かつてクリストとジャンヌ=クロードが、「アンブレラ」を屋外で広域にわたり展開した地区でもあるのだが、このプロジェクトは日米で2名の死者を出している。アメリカでは突風による倒壊、日本では撤去作業中の感電だった。いま日本では芸術祭がかつてなく盛んだが、日本列島で行われるかぎり、会場は自然災害と隣り合わせだ。だが、そもそも日本で古くより「祭」が盛んだったのは、恐るべき自然の脅威ゆえではなかったか。さらに言えば、そのような災害の犠牲者を予防的に先取り(供物)する意味があったからではなかったか。

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実際に郵便局から返ってきた手紙。封筒の宛名は各郵便局長が手書きで記入してくれる。なかには手紙と写真、行き先の地図が入っている

 としたら、日本における大規模芸術祭の先駆けの地と考えられるケンポクだからこそ、この問題に肉薄する必要がある。時期を同じくして、近隣の水戸芸術館では、先の「アンブレラ」の回顧展を開いている。残念だったのは、その検証が展示ではほんの申しわけ程度しか、図録ではまったく触れられていなかったことだ。私がそのことに強く思考を促されたのは、むしろ飴屋の展示のなかで反芻された「アンブレラ」の残像を通じてのことだった。

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上小川にある一本木

PROFILE
さわらぎ・のい 美術批評家。1962年生まれ。近著に『後美術論』(美術出版社)、会田誠との共著『戦争画とニッポン』(講談社)、『アウトサイダー・アート入門』(幻冬舎新書)など。8月に刊行された『日本美術全集19 拡張する戦後美術』(小学館)では責任編集を務めた。『後美術論』で第25回吉田秀和賞を受賞。

『美術手帖』2016年12月号「REVIEWS 01」より)

飴屋法水「何処からの手紙」
会期:2016年9月17日~11月20日(終了)
会場:KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭
飴屋法水は1961年山梨県生まれ。本芸術祭は茨城県北部に位置する6市町(北茨城市、大子町、高萩市、日立市、常陸太田市、常陸大宮市)を舞台に、85組のアーティストが作品を展示。飴屋の「何処からの手紙」は、実在する4つの郵便局(上小川、大宮玉川、日立会瀬、常陸太田下大門)の局長に宛ててハガキを送ると、それぞれの場所から手紙が届き、そのなかに書かれた場所に実際に赴く体験型の作品。

ギャラリストの新世代 カナカワニシギャラリー・河西香奈

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2015年、写真を軸に、その他のあらゆる現象学的メディウムを用いた現代美術を紹介するギャラリーとして、南麻布にオープンしたKANA KAWANISHI GALLERY。音楽、服飾、出版など、様々な分野を経て現在はギャラリーを運営するディレクターの河西香奈に話を聞いた。

未踏の表現を求めて

ニューヨークでの日々

 2015年3月、東京・南麻布にKANA KAWANISHI GALLERYは誕生した。ディレクターを務める河西香奈は、音楽、服飾、出版など、様々な領域の活動を経てギャラリー経営に至ったユニークな経歴の持ち主だ。

 4歳から9歳まで、父の仕事の都合でロンドンにて生活をしていた河西は、帰国後、中学校で音楽に魅了される。「ドラムを始めて、ジャズやロックなど演奏していました」。高校入学後は、ファッションに開眼。大学では、西洋服飾史を専攻し、大学4年生で1年間、ニューヨークのフォーダム大学へ交換留学生として渡った。

「日本で勉強した内容をあらためて英語で学べる良い経験でした」。インターンシップを行った大手レコード会社では、デモ音源を聞きレビューを書く業務に従事、充実した日々を経て帰国した。

ファッションから出版、アートの世界へ

「特に興味があったのは、社会を読み解くためのファッション。卒業論文では、19世紀のアメリカ人女性が地位向上と共にパリ志向から脱却していく様子を、雑誌文献から読み解きました」という河西は、卒業後ストリートブランドの会社へ就職。その後離職のタイミングで、同ブランドを特集した書籍を出版する予定であったニューヨークの出版社、リッツォーリの編集作業に関わることになる。「すごくめまぐるしいですよね(笑)。でも、この仕事が私の転換点になりました」。

 リッツォーリでは、東京の文化を包括的に紹介する書籍で「ファッション」「写真」のジャンルを担当。特集での出会いをきっかけに、写真家のアシスタントなども務めた。そして2014年、自身が代表となる「KANA KAWANISHI ART OFFICE」を設立。海外の出版社に向け、作品集の企画を提案するなどの活動を行った。そんななか、転機が訪れる。「ある作家さんから、『ボランタリーな活動は、どうしても疲れてくる。この業界で作家と健全な関係を保つためには、作品を売ったほうがいい』と言われたんです」。これをきっかけのひとつに、アムステルダムの現代美術写真フェア「Unseen」に出展するなど、アートフェアを中心とした活動を展開。「作家との長期的な関係を結ぶ上で、スペースは必要」だと考えた河西は2015年、ギャラリーを開廊させる。

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取材時に開催していたのは、太陽光そのものを被写体として写真を撮影する片桐飛鳥の個展 Photo by Chika Takami

人と宇宙をつなぐアート

 同ギャラリーが紹介するアーティストは、素材、現象、制作行為の関係性に着目し、幅広いメディアを素材とする藤崎了一。フリークライマーとしての柔軟な視点と身体力を用い、街に潜む見えない境界線を可視化させる菊地良太。時間性・記録性をテーマとした写真表現を行い、その延長線上として、ハードディスクドライブを使用した彫刻などを手がける安瀬英雄など、主に写真を軸に、コンセプチュアルな作品を手がける作家たちだ。「この宇宙に存在しているけれど、私たちが知らなかったものを見せてくれる作家、あるいは私たちが普段見ている世界のステージを一段上げてくれるような作品とこれからも出会っていきたいです」。

もっと聞きたい!

Q.思い出の一品は?

 2008年、ニューヨークの出版社「リッツォーリ」から出版された『TOKYO LIFE』です。約500ページに当時の文化が詰まっていて、私はファッションと写真のページを担当。出版や写真の世界に足を踏み入れることになった、思い出深い1冊です。

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Photo by Chika Takami

Q.注目の作家は?

 吉楽洋平さんです。野鳥図鑑から鳥の挿絵を切り抜いた詩的な作品シリーズ「BIRDS」が有名ですが、2015年11月のパリ同時多発テロ事件を体験し、新たな展開を見せています。12月17日から開催する個展では、マーブリングの手法による作品を発表します。

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吉楽洋平 Formless(部分) 2016 © Yohei Kichiraku Courtesy of KANA KAWANISHI GALLERY

PROFILE
かわにし・かな 神奈川県出身、幼少期をロンドンで過ごす。日本女子大学在学中に、ニューヨークのフォーダム大学に留学。2006年よりRizzoli New Yorkの東京コーディネーターとして書籍編集に携わる。アーティストマネジメント・編集事務所、展覧会企画財団を経て2014年にKANA KAWANISHI ART OFFICE、2015年にKANA KAWANISHI GALLERYを設立。

文=野路千晶
『美術手帖』2016年12月号「ART NAVI」より)

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KANA KAWANISHI GALLERYの入り口 Photo by Chika Takami
KANA KAWANISHI GALLERY
住所:東京都港区南麻布3-9-11
電話番号:03-5843-9128
開館時間:12:00〜19:00
休館日:日、月、祝、12月23日〜1月9日
URL:www.kanakawanishi.com
12月17日から1月29日まで、吉楽洋平の個展を開催。

東京でスナップした「美しい男性」の姿。蔵真墨の個展が開催

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東京・秋葉原のアーツ千代田3331にあるnap galleryにて、12月10日より写真家・蔵真墨による個展「Men are Beautiful」が開催される。展覧会開催にあわせ、同名の写真集も刊行される。

 人物の自然な姿をモチーフに、フィルムによるスナップ写真を多く制作してきた蔵真墨。これまでに出身地である富山県氷見市の人々や風景を撮った「氷見」、東京から大阪までの道中記として制作された「蔵のお伊勢参り」シリーズなどを発表してきた。

 nap galleryで初の個展となる本展では、東京の路上を中心に、海外の街やレストランなど、様々な場所で撮影されたスナップ写真を展示する。作品の被写体となるのはすべて男性。歴史上「美の象徴」の多くは女性であったことから、「美しさの範疇を広げる」試みとして着想されたシリーズだという。

 女性が社会のなかで感じるやりきれなさを描いた小説が添えられた、アメリカの写真家、ゲリー・ウィノグランドの写真集『Women are Beautiful』(1975)からとって「Men are Beautiful」と題された本展は、街や人々の「いま」を記録するだけでなく、ジェンダーにとらわれない社会のあり方を考察する試みでもある。初日となる12月10日には、写真集も刊行される。

蔵真墨「Men are Beautiful」
会期:2016年12月10日〜1月28日
会場:nap gallery
住所:千代田区外神田6-11-14 206号
電話番号:03-6803-2429
開館時間:水・金・土 12:00〜18:30、木 12:00〜21:00、日は予約のみ
休館日:月、火、祝、12月26日〜1月10日
URL:www.napgallery.jp

『Men are Beautiful』
蔵真墨=著
Urgent│4500円+税

東京初! レアンドロ・エルリッヒが森美術館で大規模個展開催へ

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東京・森美術館は、2017年度の展覧会ラインナップを発表した。ASEAN創立50周年を迎える次年度は、国内最大規模となる東南アジア現代美術の展覧会と、東京初となるレアンドロ・エルリッヒの大規模個展を開催する。

 2017年7月5日から始まる「サンシャワー:東南アジアの現代美術 1980年代から現在まで」(2017年10月23日まで)は森美術館、国立新美術館、国際交流基金アジアセンターが合同で主催する日本国内で過去最大規模の東南アジア現代美術展。熱帯気候の東南アジア地域で頻繁に見られる気象現象「サンシャワー(天気雨)」を冠した同展では、自由の希求、アイデンティティ、成長とその影、コミュニティ、信仰と伝統、歴史の再訪など、同地域における1980年代以降の現代アートの発展を、複数の異なる視点から掘り下げ、国際的な現代アートの動向と照らし合わせながら、そのダイナミズムと多様性を紹介する。

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コラクリット・アルナーノンチャイ おかしな名前の人たちが集まった部屋の中で歴史で絵画を描く3 2015 ビデオ 24分55秒 Courtesy: Carlos/Ishikawa London; Clearing Brussels/New York

 いっぽう、11月18日から開催されるのが「レアンドロ・エルリッヒ展(仮題)」(2018年4月1日まで)だ。金沢21世紀美術館に恒久設置されている《スイミング・プール》(2004)によって、日本では一躍有名になったアルゼンチン出身のアーティスト、レアンドロ・エルリッヒ。その作品は、視覚を中心に身体感覚に訴えかけるトリックを用いて、鑑賞者が抱く常識を覆すような体験を与えるものが多くみられる。2006年の「越後妻有アートトリエンナーレ」では、《妻有の家》で鏡の効果を利用し、建物の壁面に人々がぶらさがっているような光景をつくりだした。国内ではこのほか、「瀬戸内国際芸術祭2010」や、「越後妻有アートトリエンナーレ2012」などの芸術祭への参加をはじめ、14年には金沢21世紀美術館で日本初の個展を開催した。本展はエルリッヒにとって東京における初の個展となり、24年にわたる活動の全容に迫るものとなる。

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レアンドロ・エルリッヒ スイミング・プール 2004 コンクリート、ガラス、水 280×402×697cm
撮影=Ryo Suzuki 所蔵=金沢21世紀美術館

感覚を開く5作家による展覧会「5Rooms」が神奈川で開催

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「感覚」を揺さぶる作品という基準で選ばれた5作家によるグループ展「5Rooms - 感覚を開く5つの個展」が、神奈川県民ホールギャラリー(横浜)で12月19日から開催される。会期中はアーティストトークや美術鑑賞ワークショップも予定。

 あらゆることを「頭」でコントロールしようとし、時には「心」や「身体」が感じたことにも干渉してしまう人間の性質に着目し、本展は「頭」でつくられたテーマに合わせて作品を選ぶのではなく、作品と向き合い「心に響くか」という直観に従って作家が選ばれた。

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出和絵理 Forest 2014

 出和絵理は紙のように薄くのばした真っ白な磁器を組み立てた繊細な立体作品《Forest》(2016)を、染谷聡は漆とどこかで拾った小枝や石などと独自の方法で関係させた作品《みしき》(2014-16)など他、小野耕石は見る角度によって様々な表情を見せるカラフルなドットをシルクスクリーンで印刷した《Hundred Layers of Colors》(2015-16)を含めた作品群を発表する。さらに、あらゆる境界を超えて被写体と向き合った写真を特徴とする齋藤陽道や、廃棄物を使ってインスタレーションを展開している丸山純子の作品が見られる。

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小野耕石 Hundred Layers of Colors 2016

 本展は、同ギャラリーの5つの展示室を使った各作家の個展形式となる。鑑賞者の感覚を揺さぶる個々の作品と向き合うことによって、さまざまな記憶や感情が呼び起こされることだろう。

5Rooms - 感覚を開く5つの個展
会期:2016年12月19日~2017年1月21日
会場:神奈川県民ホールギャラリー
住所:神奈川県横浜市中区山下町3-1
電話番号:045-662-5901
開館時間:10:00〜18:00(入場は閉場の30分前まで)
休館日:2016年12月30~2017年1月4日
入館料:一般 700円 / 学生・65歳以上 500円 ※高校生以下、無料
URL:http://www.kanakengallery.com/detail?id=34581


【関連イベント】
・アーティストトーク ※各日14:00〜
「技法のガラパゴス的進化 表現の形」
日時:2016年12月24日 
出演:出和 絵理 、小野 耕石

「インスタレーション - 思いが形になる時」
日時:2016年1月7日 
出演:丸山 純子

「『在る』ことへのアプローチ」
日時:2016年1月15日 
出演:染谷 聡 、齋藤 陽道

・視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ
日時:2017年1月9日 10:00~12:30、1月14日 10:00~12:30
申込期間:2016年12月1日〜12月25日 ※抽選あり、12月27日頃結果通知
定員:各回15人 
参加費:無料 (※展覧会の入場券が必要)
※詳細はHPを参照

櫛野展正連載11:アウトサイドの隣人たち ゲームこそ我が人生

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ヤンキー文化や死刑囚による絵画など、美術の「正史」から外れた表現活動を取り上げる展覧会を扱ってきたアウトサイダー・キュレーター、櫛野展正。2016年4月にギャラリー兼イベントスペース「クシノテラス」を立ち上げ、「表現の根源に迫る」人間たちを紹介する活動を続けている。彼がアウトサイドな表現者たちにインタビューし、その内面に迫る連載の第11回は、関心の赴くままに独自の絵画世界を構築する、渡部敏昭を紹介する。

 僕が「ラッキーコーン」というキャラクターを知ったのは、2015年秋のこと。累計25万アクセスを超える公式サイトを通じて、作者の渡部敏昭(わたなべ・としあき)さんと連絡を取ること約1年。頑なに取材を拒否され続けていたが、念願がかなって、先日ようやくお会いすることができた。

 現在54歳になる渡部さんは、広島県呉市の一軒家で暮らしている。取材のために人を招き入れたのは初めてとのことで、たくさんある部屋のうち1部屋だけを寝室兼アトリエとして使用している。

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渡部によるイラスト。柔らかい色合いで、ポップなキャラクターが描かれている

 小さい頃は、絵を描くというよりもオタマジャクシやミズスマシ採りに熱中する子どもで、母親の郷里である広島県西条町(現在の東広島市)までよく採取しに行っていたようだ。「なぜ人気のあるカブトムシなどではなく水生生物なのか」と尋ねたら、「水のなかで動く生物に三次元を感じたから」と答えてくれた。

 高校に入ると、歌番組に熱中した。特に『ザ・ベストテン』(TBS系列)が好きで、友だちと曲の順位当て遊びをよくした。「わしゃあ、どうしても人に負けとうないけぇ、TBSにベストテンの順位を教えてくださいって電話かけたんじゃけど、ぜったい教えてくれませんでした」と笑って振り返る。その当時は、好きだった野口五郎がベストテンに入ると食事がおいしく感じたそうだ。

 高校を卒業すると、広島市内の鉄工所に就職。1年半ほど働いたが、接客態度が悪い、と解雇された。27歳のときに、1度だけ市内のゲームセンターでアルバイトをしたものの、「お父ちゃんがね、お前は病気なんじゃけ、好きなゲームしたり絵を描いたりして普通に暮らせって言うんです。わしが生きとる間は食べさせちゃるけぇって」と、それからはずっと働いていない。

 30歳からは、ゲームと並行してプラモデルづくりにも熱中した。「超合金シリーズの、ポリ塩化ビニール(塩ビ)の立体感が好きなんです。プラモデルをひとつ製作すると、塗料が余るでしょ。それで、またつくる。そうやって次々とつくっとったら、こんな感じになってしもうたんです」。アトリエを見渡すと、ガンダムやスーパー戦隊シリーズなどの懐かしいプラモデルや超合金の玩具が、部屋中を埋め尽くしていた。置き切れないものは、玄関やほかの部屋にまでおよんでいる。

 数年前に父と母が他界した現在は、障害年金を受給しながらひとり暮らしをしている。いまも精神科に定期通院を続ける渡部さんの症状名は、統合失調症だ。22歳と37歳のときには人間関係のトラブルで2度の強制入院を経験した。

「わしの場合、調子がようなりすぎたら悪いことしてしまうけぇ、いけんのんです」。そう語る渡部さんにとっての精神安定剤は、ゲームセンターでアーケードゲームをすることだ。若い頃から近所のゲームセンターに通い詰め、たくさんのゲームで遊んだ。そして実際に遊んだゲームのうち、特に思い入れのある作品はその点数と感想を記録。1988年には、それらをまとめた冊子『ゲームバケーション』を自費出版した。画面のデジタル数字を再現するため、ゲームの点数をスタンプで押して表現したところが、なんともおもしろい。

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渡部が自費出版した『ゲームバケーション』。右下の『Mr. Do! VS ユニコーン』が「ラッキーコーン」制作のヒントになった

「薬の副作用で手が震えて絵が描けんかったんですけど、薬が軽くなってからは絵が描けるようになったんです」と、渡部さんは45歳のときに、以前から溜まっていたアイデアをもとに「ラッキーコーン」のキャラクターを描くようになった。

「アーケードゲームの『Mr. Do! VS ユニコーン』に出てくるユニコーンの赤いボディと青いツノが頭から離れんかったんですよ。ミッキーマウスのようにもしたいな思うても、とてもできん。あるとき、ミッキーマウスのようにしたいんじゃったらミッキーマウスを見てつくりゃいいと気づいたんですよ。それで、ユニコーンとミッキーマウスを合わせてラッキーコーンをつくったんです」。

 やがてミニーマウスに対抗して「ナッキーコーン」という女の子のキャラクターも生まれ、ロケットやハート、ツリーなどのモチーフに囲まれたゲーム画面のような世界がつくり出された。その色彩はとても鮮やかで、プラモデルの豊かな原色が生かされているように感じる。実在の企業や通っているラーメン店が絵のなかに登場するのは、渡部さんの遊び心だ。

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渡部が描いたイラスト。写真下部の左がラッキーコーン、右がナッキーコーン。余白には中華料理屋の情報が書かれている

 彼の絵の描き方は一風変わっている。まず、A3サイズの用紙に鉛筆で下書きをして、B4サイズの用紙に縮小コピー。さらにそれをトレーシングペーパーでなぞり、その裏を鉛筆でこすりあとをつけることで、別のB4用紙に転写する。かなり回りくどい方法に見えるが、このやり方が習慣になっているらしい。最後に、それを面相筆で丁寧に色づけしていく。3年ほどかけて描いたものが溜まると、広島市内の印刷所で『ラッキータイム』『ナッキータイム』という2冊の本として自費出版した。4冊目につくったのは、プラモデルの写真集だ。

 どの冊子も、渡部さん自らがコラージュによって誌面をレイアウトしているのが興味深い。あるページでは関根勤のTシャツにラッキーコーンが貼り付けられ、またあるページではラッキーコーンが戦隊ヒーローなどに扮している。そのもとになった戦隊シリーズに登場する声優の名前が、きれいに分類整理して記されているから、驚きだ。これらの冊子は、タレント名鑑を参考に好きな有名人に贈った。タレントの永六輔や落語家の立川志の輔からは、返事が届いたそうだ。壁には、贈り先のリストが貼られていた。

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『ラッキータイム』の誌面

 そんな渡部さんの最近の楽しみは、広島までアーケードゲームをしに行くことだ。「もう呉にないけぇ、広島のレトロゲーム専門店までいってアーケードゲームをしよります。いまは『アルゴスの戦士』いうゲームしとって、これがめちゃおもしろいんです」と語る。2週間に1度、妹が留守番に帰ってきてくれる日に、広島のカプセルホテルに宿泊し、1泊2日で朝から晩まで、大好きなアーケードゲームをプレイしているのだと言う。

「いまはアイデアが浮かばなくて、描きょうらんのですよ」と語る渡部さんだが、ラッキーコーンを多くの人に知ってもらい、有名になることを望んでいる。自らチラシを作成して商店街のポストに配布して周るなど、努力を続けているが、いまだ正当な評価は得られていない。

 ゲームとプラモデルと絵画、これが渡部さんのすべてだ。様々なモチーフから着想を得て制作する彼の作品は、アウトサイドの片隅で花開いている。しかし、ゲームのようにすぐには結果が伴わない。それもまた人生なのだ。

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アトリエも兼ねた自室で絵を描く渡部。棚にはびっしりとプラモデルが置かれている

HP「LUCKY COON」: www5.hp-ez.com/hp/tosiaki

PROFILE
くしの・のぶまさ 「クシノテラス」アウトサイダー・キュレーター。2000年より知的障害者福祉施設職員として働きながら、「鞆の津ミュージアム」(広島) でキュレーターを担当。16年4月よりアウトサイダーアート専門ギャラリー「クシノテラス」オープンのため独立。社会の周縁で表現を行う人たちに焦点を当て、全国各地の取材を続けている。クシノテラスWEBサイト:http://kushiterra.com/

12月6日に展覧会の関連トークイベントを東京で開催!

2017年1月29日までクシノテラス(広島県・福山)で開催中のグループ展「遅咲きレボリューション!」。その関連トークイベントが、12月6日に「LOFT9 Shibuya」で行われる。アウトサイダー・キュレーター、櫛野展正が、体験ノンフィクション漫談芸人・コラアゲンはいごうまんをゲストに迎え「アウトサイドな表現者」を紹介する。詳細はこちら

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伝統のBMWアートカー、今年はジョン・バルデッサリがデザイン

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BMWは1975年以来、発表を続けているBMWアートカーの最新作をアメリカで開催されているアート・バーゼル・マイアミビーチで発表した。今年はアメリカのコンセプチュアルアーティスト、ジョン・バルデッサリがデザインを手がけている。

 BMWアートカーは、これまでアレクサンダー・カルダーや、アンディ・ウォーホル、ジェフ・クーンズなど、世界的なアーティストたちが、その時代時代のBMWの車をもとにして、デザインを手がけてきた。

 19番目となるアートカーをデザインしたジョン・バルデッサリは1931年生まれ。画家としてキャリアをスタートさせたのち、66年頃より絵画の制作をやめ、言葉、写真、ビデオなどを用いた作品で芸術の枠組みや意味を問う作品を発表してきた。

 今回のBMWアートカーのワールドプレミアは、アート・バーゼル・マイアミビーチ期間中の11月30日に開催。マイアミ・ビーチ・ボタニカル・ガーデンで公開された。最高時速300キロ、585馬力あるジョン・バルデッサリのBMW M6 GTLMは、同フェア終了の12月4日まで一般公開されている。

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Photograph by Chris Tedesco. © BMW AG.

 バルデッサリは今回のアートカーについて次のようなコメントを寄せている。「この車を現代生活の象徴と考えたとき、BMWアートカーに関する私のコンセプトはおどけた風刺になりましたが、同時に私のトレードマークのアイデアのいくつかを強調するものでもあります。ですから、BMWアートカーは間違いなく典型的なバルデッサリであり、これまで私がつくったなかで最速のアートワークと言えます!」。

 同車はBMWアートカーの伝統に従い、2017年1月28日・29日のデイトナ24時間レースのレーストラックにおいて走行が実証される予定。

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ジョン・バルデッサリ Photograph by Chris Tedesco. © BMW AG.

久留米市美術館がリニューアル、第1弾展は「九州洋画」 

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久留米市美術館の開館を記念した展覧会「2016 ふたたび久留米からはじまる。九州洋画」が、2017年1月22年まで開催されている。青木繁、坂本繁二郎など九州にゆかりのある洋画家たちの作品約110点を展示し、「九州」が日本洋画史において果たしてきた役割を振り返る。

 旧石橋美術館である同館は、今年10月より石橋財団から久留米市に運営が引き継がれ、久留米市美術館としてリニューアル。オープンした。新たな美術館の幕開けに、九州の洋画史を通覧できるまたとない機会となった。

 九州はこれまで数多くの洋画家を輩出しており、明治期には東京美術学校で教鞭をとった黒田清輝と藤島武二、その後継者として岡田三郎助と和田英作、その後も青木繁、坂本繁二郎、児島善三郎、海老原喜之助と洋画の人脈が受け継がれていった。久留米に着目してみると、青木や坂本のほかにも、吉田博、髙島野十郎、古賀春江など才能豊かな画家たちを生み出している。

 本展は、九州出身あるいは九州にゆかりのある洋画家65名の作品約110点によって、九州の豊かな文化的土壌と魅力を紹介する。

 九州各地の風景を題材にした第1章「美しき九州」、初期の洋画家たちの作品を並べた第2章「トップランナー」、各県ごとの洋画の歴史をたどる第3章「九州洋画めぐり」、九州で制作を続けた画家たちを扱った第4章「九州人」と、テーマ別の展示構成になっており、多角的なアプローチで「九州洋画」に迫っている。

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床次正精 西郷肖像 明治中頃 鹿児島市立美術館蔵
2016 ふたたび久留米からはじまる。九州洋画
会期:2016年11月19日〜2017年1月22日
会場:久留米市美術館
住所:福岡県久留米市野中町1015
電話番号:0942-39-1131
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月休、年末年始
入館料:一般1000(800)円/シニア700(500)円/大高生500(400)円/中学生以下無料
※( )内は15名以上の団体料金
URL:http://www.ishibashi-bunka.jp/kcam/


【関連イベント】
「九州洋画談義」九州各県の美術館から館代表の学芸員が参集し、各県の魅力を語る。
第1回目
日時:2016年12月10日、14:00〜15:30
登壇者:加藤康彦(大分県立美術館副館長兼学芸企画課長)、西本匡伸(福岡県立美術館副館長)、林田龍太(熊本県立美術館主任学芸員)、森園敦(長崎県美術館学芸員)

第2回目
日時:2017年1月14日、14:00〜15:30
登壇者:松本誠一(佐賀県立美術館副館長)、山西健夫(鹿児島市立美術館副館長)、吉田健(宮崎県立美術館学芸課長)

会場:本館1階多目的ルーム
進行役:森山秀子(久留米市美術館副館長兼学芸課長)
定員:各回先着70名
参加費:無料 ※要展覧会チケット


【同時開催】
展「九州をあそぼう ダンボールアート遊園地 in くるめ」
会期:2016年11月19日〜2017年1月22日
会場:久留米市美術館 本館1階
入場料:3歳以上 500円 ※2階展示との相互割引有り

新進作家の海外研修の集大成を発表!DOMANI展が開催

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文化庁の支援で海外研修を受けた若手芸術家たちの成果を発表する「19th DOMANI・明日展」が、国立新美術館(六本木)で開催される。日本から欧米やアジア圏に滞在した新進芸術家13名による作品を展示し、会期中は出展作家によるギャラリートークや座談会を予定。開催は2016年12月10日〜2017年2月5日。

 文化庁は、若手芸術家を海外に派遣し、その専門分野の研修を支援する「新進芸術家海外研修制度」を1967年より実施しており、「DOMANI・明日展」はその成果を発表する機会として1998年から開催されている。また、2015年に立ち上がった「DOMANI・明日展 PLUS」は、より小規模でテーマ的な企画となっており、本展覧会シリーズとあわせて研修制度から輩出された作家たちを紹介している。

 第19回を迎える「DOMANI・明日展」では、会場の巨大な展示空間を活かし、2020年東京オリンピックを見据えた「reconsidering Japan」というゆるやかなテーマのもと、絵画、写真、映像、アニメーション、インスタレーション、陶芸、メディアアートといった、様々な表現を見ることができる。

 参加作家は、奇想の生き物や妖怪をモチーフに日本画を描く金子富之(カンボジア)、森林や日常風景を記録する写真家の今井智己(オランダ)、カナダで研修中に制作したアニメーション作品「水準原点」(2015)がザグレブ国際アニメーション映画祭で準グランプリを受賞した折笠良など、研修を終えて間もない13名。展覧会とあわせて、参加作家によるギャラリートークや座談会も予定されており、日本の未来を担う才能たちと出会うことができる。

19th DOMANI・明日展
会期:2016年12月10日~2017年2月5日
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~18:00、金・土は20:00まで
休館日:火休、2016年12月20日〜2017年1月10日
入館料:一般 1000(500)円 / 大学生 500(300)円
※1月21日は、開館10周年を記念して、入場無料
※( )内は前売および20名以上の団体料金
※高校生、18 歳未満の方(学生証または年齢のわかるものが必要)および障害者手帳をお持ちの方(付添の方1名含む)は無料
URL:http://domani-ten.com/
参加作家:池内晶子、岡田葉、南隆雄、秋吉風人、保科晶子、松井えり菜、曽谷朝絵、三原聡一郎、山内光枝、今井智己、折笠良、金子富之、平川祐樹


【関連イベント】
座談会オープニング記念トーク「欧州展示事情」
日時:12月10日、14:00~15:30
出演者:秋吉風人、南隆雄
ゲスト:澤田諒
会場:国立新美術館 3階研修室 A、B
料金:無料
定員:50名
※要事前申込み

座談会スペシャルトーク「MEET THE ASIA-PACIFIC AREA」
日時:2017年01月28日、14:00〜15:30
出演者:金子富之、山内光枝
ゲスト:中村裕太
会場:国立新美術館 3階研修室 A、B
料金:無料
定員:50名
※要事前申込み

ギャラリートーク
日時:2016年12月11日、14:00〜15:30
出演者:岡田葉、保科晶子、曽谷朝絵

日時:2016年12月18日、14:00〜15:30 
出演者:今井智己、折笠良、平川祐樹

日時:2017年1月22日、14:00〜15:30 
出演者:池内晶子、松井えり菜、三原聡一郎

会場:国立新美術館 2 階 企画展示室 2E 内
料金:無料

抽象と具象の間に KAYOKOYUKIで富田正宣が個展開催

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KAYOKOYUKI(東京・駒込)にて、12月17日より富田正宣による個展「quiz」が開催される。半抽象的な油絵を手がける若手画家による新作展。

 富田正宣は、1989年生まれの気鋭のペインター。抽象とも具象ともいえるような独自の表現で、一貫して油絵を制作している。これまでSpace Wunderkammerやターナーギャラリーなどを会場として、東京を中心に個展やグループ展を開催してきた。

 特定の現象や風景からモチーフを抽出し、「立ったり倒れたりする直前」や「何かに向かっている」中途といった概念を絵画として成立させようと試みる。油絵具が何層にも重ねられた一見抽象的な画面には、端々に人の姿や手などのモチーフが見て取れる。現実に依拠しながらも、現実とは異なる視点で世界のありようを浮かび上がらせる作品群だ。

 作品にタイトルをつけることを、意味を付け加えるのではなく「存在に記号を付与する行為」ととらえているという富田。KAYOKOYUKIでは初めての展覧会となる本展タイトル「quiz」も出品作の題名からとられた言葉だが、「問題」や「なぞなぞ」をといった言葉の意味ではなく、アルファベットのシルエットに着目して名付けたという。独特の感覚とタッチで生み出される、新作が発表される。

富田正宣「quiz」
会期:2016年12月17日~2017年1月29日
会場:KAYOKOYUKI
住所:東京都豊島区駒込2-14-2
電話番号:03-6873-6306
開館時間:水〜土 12:00〜19:00、日 12:00〜17:00
休館日:月、火、祝、12月26日〜1月11日
URL:http://www.kayokoyuki.com/

「ヒールレスシューズ」の舘鼻則孝、岡本太郎記念館で展覧会開催

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東京・南青山の岡本太郎記念館で、舘鼻則孝による個展「呪力の美学」が開催されている。本展のために制作された新作などで構成。会期は2017年3月5日まで。

 舘鼻則孝は、国内外でアーティスト、ファッションデザイナーとして活動する。高校時代からファッションデザイナーを志して東京藝術大学に進学して染織を学び、遊女に関する文化研究を行いながら着物や下駄を制作。2010年、花魁の下駄から着想を得て卒業制作として発表した「ヒールレスシューズ」をレディー・ガガが着用し、話題となった。伝統工芸の領域でも活動し、2016年3月にはパリのカルティエ現代美術財団で人形浄瑠璃文楽の公演『TATEHANA BUNRAKU : The Love Suicides on the Bridge』の監督を務めた。

 本展では、「ヒールレスシューズ」シリーズなどの新作を発表。舘鼻にとって「孤高の存在」である岡本太郎にインスパイアされて制作した、「自分自身に"マジナイ"をかけ外界からの理解を拒んだ作品群」と語る。また、自身の骸骨を鋳造彫刻とした「Traces of a Continuing History」シリーズの一部も展示される。

 太郎が幼少期を過ごした地に建てられた岡本太郎記念館の建物は、1954年から太郎が亡くなる96年まで、アトリエ兼住居として使用されていた。ル・コルビュジエの弟子であった坂倉準三が手がけた、ブロック壁や凸レンズ形が屋根がユニークな建築にも注目だ。

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舘鼻則孝 Homage to Taro Series : Heel-less Shoes "Sun" 2016 Photo by Noritaka Tatehana © NORITAKA TATEHANA,2016
舘鼻則孝「呪力の美学」
会期:2016年11月3日~2017年3月5日
会場:岡本太郎記念館
住所:東京都港区南青山6-1-19
電話番号:03-3406-0801
開館時間:10:00~18:00(最終入館17:30)
休館日:火(祝なら開館)、年末年始(12月28日~1月4日)
入館料:一般 620円 / 小学生 310円
URL:http://www.taro-okamoto.or.jp/
【関連イベント】
・アーティストトーク
日時:2016年12月14日 19:00〜 山口桂(Christie's New York)×舘鼻則孝
   2017年1月13日 19:00〜 平野暁臣(岡本太郎記念館館長)×舘鼻則孝
申し込み:サイトを参照

・スタジオスタッフによるギャラリートーク
日時:12月16日 14:00〜
   1月20日 14:00〜
   2月17日 14:00〜
申し込み:不要

プリズム彫刻から生み出される光線によるインスタレーション

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資生堂ギャラリー(東京・銀座)にて、幅広い分野で活躍するアーティスト、デザイナーの吉岡徳仁による個展「吉岡 徳仁 スペクトル ー プリズムから放たれる虹の光線」が開催される。会期は2017年1月13日〜3月26日。

 美術、デザイン、建築などの領域でマルチに活動する吉岡徳仁。紙の椅子「Honey-pop」やauの携帯電話「MEDIA SKIN」を手がけたことで知られるほか、SWAROVSKIやISSEY MIYAKEのショップデザインも担当する。

 アーティストとしては、自然と人間の関係性に着目した活動を展開。2011年のヴェネチア・ビエンナーレで建築プロジェクト「ガラスの茶室─光庵」を発表し(2015年に京都の青蓮院・将軍塚青龍殿に奉納展示)、2013年に東京都現代美術館で開催された個展「TOKUJIN YOSHIOKA_Crystallize」ではプリズムでつくられた「虹の教会-Rainbow Church」を展示するなど、近年では特に「光」と人間の感覚をテーマとした作品を制作してきた。

 本展ではプリズムを用い、無限の色がつくり出す光が空間全体を満たす、体験型の新作インスタレーションを発表する。プリズムの多面体で光を分散させることで、虹色の光線(スペクトル)が広がる神秘的な空間を生み出す。

吉岡 徳仁 スペクトル ー プリズムから放たれる虹の光線
会期:2017年1月13日~3月26日
会場:資生堂ギャラリー
住所:東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビルB1F
電話番号:03-3572-3901
開館時間:11:00~19:00(日、祝は~18:00)
休館日:月
URL:https://www.shiseidogroup.jp/gallery/

原美術館で初個展が決定!現代の肖像画家エリザベス・ペイトン

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現代のユース・カルチャーの象徴的存在の肖像画で知られるアメリカの女性作家、エリザベス・ペイトンの日本の美術館では初となる個展が原美術館(品川)で開催が決定した。日本では紹介される機会の少なかったペイトンの25年の画業を約40点から一望できる。会期は2017年1月21日〜5月7日。

 現在ニューヨークを拠点に活動するエリザベス・ペイトンは、1990年代初めより絵画や素描、版画を中心に制作をし、とりわけミュージシャンや歴史上の人物、あるいは親しい友人や愛犬の肖像画を描いている。キャンバスの大きさは控えめながら、その大胆な色彩や繊細な線描写によって、対象の美しさを際立たせ魅力的な存在に変貌させることから、ペイトンの絵画は"新しい具象画"と称されてきた。世界各地で幾多の個展やグループ展に参加し、国際的に高い評価を得ている。

 真摯に肖像画と向き合うことによって、ペイトンはその概念を大きく広げてきた。フランス写実主義のギュスターヴ・クールベ(1819-1877)からポップ・アートの旗手、アンディ・ウォーホル(1928-1987)に至る肖像画を研究し、独自の自由で現代的な表現を確立させている。ペイトンは、歴史や文学の登場人物を同時代の人物と同じような距離感で描く。さらに、同時代の人物を描く際には、歴史的な文脈を花や本といったモチーフに含めたり、背景に入り込ませたりと、ひとつの画面に過去と現在を見事に凝縮させている。

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エリザベス・ペイトン Nick(First drawing) 2002 紙に色鉛筆 22.2×15.2cm ©Elizabeth Peyton, courtesy Sadie Coles HQ, London, Gladstone Gallery, New York, neugerriemschneider, Berlin

 近年では、美術史やオペラから着想を得ている。5年ほど前から、神話をもとにしたワーグナー(1813-1883)のオペラが作品の主題として頻繁に表れ、静物画や素描にそれらのインスピレーションが色濃く反映されており、表現のさらなる深化をうかがうことができる。

 本展では、これまで日本では紹介される機会が少なかったペイトンの活動を振り返ることができると同時に、現代の視点から絵画の歴史を感じることができるだろう。

エリザベス ペイトン展(仮題)
会期:2017年1月21日~5月7日
会場:原美術館
住所:東京都品川区北品川4-7-25
電話番号:03-3445-0651(代)
開館時間:11:00~17:00(祝日を除く水曜日は20:00まで、入館は閉館時間の30分前まで)
休館日:月休(3月20日は開館)、3月21日
入館料:一般 1100円 / 大高生 700円 / 小中生 500円 / 原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生は入館無料 / 20名以上の団体は1人100円引
URL:http://www.haramuseum.or.jp/

豊島にアンリ・サラの新作インスタレーション展示がオープン

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「瀬戸内国際芸術祭2016」の舞台となった瀬戸内海の豊島に、恒久展示としてアルバニア出身のアーティスト、アンリ・サラのインスタレーション《ALL OF A TREMBLE》が今秋オープンした。海辺の日本家屋を丸ごと使い、重なり合う音と映像が複層的な空間を織りなす本作を紹介する。

海辺の家屋が奏でるイメージと音の協奏 アンリ・サラの恒久展示がオープン

 この秋、豊島にまたひとつ美しい恒久展示が生み出された。「瀬戸内国際芸術祭2016」の秋会期に合わせ、豊島シーウォールハウスが開館し、アルバニア出身のアーティスト、アンリ・サラのインスタレーションが設置された。

 タイトルは《ALL OF A TREMBLE(オール・オブ・ア・トレンブル)》。かつて模様を言語に変換する機械が発明された際、その機械が最初に発した言葉であり、「ぞくぞくする」「ふるえる」という意味を持つ。その名のとおり穏やかな瀬戸内海を目前に佇む家屋全体が、土地と響きながら、絡み合うイメージと音を奏でているかのようだ。

 庭から鑑賞できる縁側と室内を隔てるように設置された土壁には、まるでオルゴールのような鉄盤をまとった木製の筒状楽器が設置され、自動回転でかわいらしい音色が流れる。これは1800年頃のオランダで用いられていた壁紙に模様を付けるための道具で、その名残を感じさせるかのように、土壁には文様が刻まれている。オルゴールは壁に刻まれた文様を音に転換しているかのようでありながら、楽器自体が文様を壁に刻みつけているようにも見え、この西洋の道具から響く音色は、なぜかアジアのどこかで聞くような東洋的な響きを持つ。

 サラはまだ学生だった頃に、自身の母を取材するとともに自らの出自と政治的な背景を持つ映像作品《インテルビスタ》(1998)を制作したことで注目され、以降は映像、音、空間によりイメージが重層的に絡み合う展示空間を提示する技量の高さから、各国で賞賛を集めてきた。そして、初期作から一貫して示されているサラの関心が、ふたつの異なるものの出会いによる同一性と相違である。

 2013年のヴェネチア・ビエンナーレには、戦争で右手を失ったふたりのピアニストが左手のみで共演する映像作品《ラベル ラベル》を発表。大写しにされたピアノを弾くふたつの左手は、同じ楽曲を奏でながらも、各所でテンポにズレが生じている。演奏者の経てきた経験とともに、両者による音の共鳴とずれを目前にした際、観客は言語ではすくい取りようのないイメージの存在に気づかされる。

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《オール・オブ・ア・トレンブル》のメイン作品《より長い嘆き(フィルム「長い嘆き」に併せたジャメル・ムーンドックのサックス、アンドレ・ヴィダのサックス、小濱明人の尺八演奏)》。窓の外に見える瀬戸内海と呼応するような演出がなされている 撮影=大林直治 写真提供=ベネッセホールディングス

 日本家屋全体を作品化した豊島でのインスタレーションは約20分ごとのタームで、数か所から順に音と動きが現れる。メインとなる空間では映像作品《長い嘆き》が投写されている。これは05年に制作されたサックス奏者ジャメル・ムーンドックがベルリンのアパートの窓外で即興演奏する姿をとらえたものである。スクリーンは田の字型に仕切られた住居空間を斜めに横断するように設置され、4つのスピーカーに取り囲まれている。それぞれ音源が異なり、ひとつは映像と同様の演奏音、そのほかは、映像に登場するムーンドックの即興演奏を映像制作とは別の機会に収録した音源、香川県出身の尺八奏者小濱明人による即興演奏、異なるサックス奏者(アンドレ・ヴィダ)による即興演奏。聞こえてくるすべての音は、音同士の対話のように演出されており、そこには、人の息によって演奏される吹奏楽器を用いているという同一性と、奏者や楽器の違いによる対比がある。

 ほかにも、作中の随所でふたつの異なるものの出会いが秘められている。たとえば昭和の名残を色濃く残す長く空き家だった離島の木造家屋と、映像に映し出される欧州の近代的な空き家アパートと窓の外に映る都市の風景もそうだ。いくつもの同一性と対比のイメージが重なりあう様を、サラは「家そのものが人間の身体」のようだと表現していた。

 本作はベネッセ賞受賞を機に、3年の構想を経てようやく実現した。またもや豊島に世界から熱い視線が注がれることは間違いない。

友川綾子=文
『美術手帖』2016年12月号「INFORMATION」より)

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アンリ・サラ © Jutta Benzenberg

PROFILE
Anri Sala 1974年アルバニア共和国、ティラナ生まれ。現在ベルリン在住。アルバニアで文学士号(絵画)を取得後、フランスでビデオ制作や映画の監督手法を学ぶ。2001年に第49回ヴェネチア・ビエンナーレで若手作家賞受賞、13年同ビエンナーレでベネッセ賞受賞。主な展覧会に11年「1395 Days Without Red」(国立国際美術館、大阪ほか)、12年回顧展「アンリ・サラ Two Films」(ポンピドゥー・センター、パリほか)、14年「The Present Moment(in D)」(ドイツ、ハンス・デア・クンスト)など。

ALL OF A TREMBLE
香川県の豊島に公開されたアンリ・サラによるインスタレーション展示《ALL OF A TREMBLE(オール・オブ・ア・トレンブル)》。豊島シーウォールハウスと名づけられた、今は使われていない民家1棟すべてが作品となっている。キュレーションは三木あき子。サウンド編集はオリヴィエ・ゴワナール。公開日に関してはベネッセアートサイト直島のウェブサイトを参照。
URL:benesse-artsite.jp

孤高の画家・山田正亮の最大規模の回顧展が東近美で開催

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美術の潮流から距離をおき孤独に描き続けた画家、山田正亮(やまだ・まさあき)の初の本格的回顧展が、東京国立近代美術館(竹橋)で開催される。会期は12月6日〜2月12日。

 山田正亮(1929〜2010)は、戦後間もない時期から50年以上にわたり、特定の団体やグループに属すことなく、「描く」ことを自らの人生と一体化させて一途に制作活動を続けた画家だ。近年では、戦後日本美術への新たな視座をもたらす作家として海外からの注目も高まり、2016年10月にはロンドンのアートフェア「フリーズマスターズ」で個展が開催された。

「描き続けたまえ 絵画との契約である」という言葉を残した山田の作品は、主に「Still Life」「Work」「Color」の3つのシリーズに分けられる。記憶をもとに描かれたという静物画の「Still Life」、40年にわたって描き続けられた、垂直線と水平線を組み合わせて画面を構成する「Work」、色彩への尽きぬ探究心をうかがわせる晩年の「Color」はどれも、東京郊外のアトリエで制作された。

 本展は、没後6年を経て、初めて開催される本格的回顧展。約5000点に及ぶ作品の中から、油彩画約200点と紙作品約30点を、50冊以上の制作ノートとともに公開する。アーティストの石田尚志、OJUN、坂本夏子、研究者の本江邦夫を迎えての講演会も予定されている。

 また、本展のカタログとして、没後初の本格的な作品集も刊行される。(12月19日発売予定。詳細はhttp://www.bijutsu.press/books/2016/12/endless.htmlより

endless 山田正亮の絵画
会期:2016年12月6日〜2017年2月12日
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜17:00 (金は〜20:00、入館は閉館30分前まで)
休館日: 月(1月2日、9日は開館)、年末年始(12月28日〜2017年1月1日)、1月10日
入館料:一般 1000円 / 大学生 500円 /高校生以下無料
URL:http://www.momat.go.jp/

【関連イベント】
・講演会
日時:2017年1月15日 14:00-15:30 石田尚志(映像作家・画家)+OJUN(画家)
   2017年1月29日 14:00-15:30 本江邦夫(多摩美術大学教授)
   2017年2月11日 14:00-15:30 坂本夏子(画家)
場所:講堂(地下1階)
参加方法:開場は開演30分前、聴講無料(先着140名)、申込不要

・endless ギャラリートーク
日時:2016年12月18日 10:00〜17:00
開館時間から閉館時間まで、カタログの寄稿者たちがリレー形式でトークを行う
※詳細は美術館HPなどを参照

アーツ前橋で「食」がテーマの「フードスケープ」展が開催中

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アーツ前橋(群馬)にて、「食」をテーマとした展覧会「フードスケープ 私たちは食べものでできている」が開催されている。会期は1月17日まで。

 本展は「服の記憶─私の服は誰のもの?」(2014)、「ここに棲む─地域社会へのまなざし」(2015)に続く、「衣食住」をテーマにアーツ前橋で開催されてきた展覧会シリーズの第3弾。食品や食事の場面を扱った作品の展示などを通じ、身体から環境問題まで様々な問題と関わる「食べること」の未来について考える企画だ。

 作品を出品するのは、岩間朝子、小沢剛、ゴードン・マッタ=クラーク、ジル・スタッサール、中村節也、中山晴奈、南城一夫、マシュー・ムーア、廣瀬智央、ワプケ・フェーンストラ、福田貂太郎。2013年から前橋の食や農業文化の現状を探るリサーチプロジェクト「ダイニングプロジェクト 風の食堂」に参加してきたフェルナンド・ガルシア・ドリー、南風食堂、風景と食設計室 ホーも参加している。

 身体をつくり、命をつなぐだけでなく、文化の一部であり、コミュニケーションの手段ともなる「食」について、美術作品を通じて多様な角度からアプローチする展覧会となっている。また、これまで昆虫食や薬草、野菜など様々な食材や料理に関連したイベントが開催された。会期後半にも、食にまつわる映画の上映会「フライデー・フード・シネマ 」などが予定されている。

フードスケープ 私たちは食べものでできている
会期:2016年10月21日~2017年1月17日
会場:アーツ前橋
住所:群馬県前橋市千代田町5-1-16
電話番号:027-230-1144
開館時間:11:00〜19:00
休館日:水
URL:https://www.artsmaebashi.jp/


【関連イベント】
・「フライデー・フード・シネマ」
日時:12月9日、16日、23日 13:00~/19:00~
会場:シネマまえばし(アーツ前橋と同じ建物の3階)
上映作品:
12月9日
 13:00~『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?」
 19:00~『聖者たちの食卓』
12月16日
 13:00~『未来の食卓』
 19:00~『イラン式料理本』
12月23日
 13:00~『フード・インク』
 19:00~『ノーマ、世界を変える料理』
入場料:800円(展覧会観覧券の提示で500円)
定員:各回先着100名、申込不要

・ティーセレモニーツアー
日時:12月10日、2017年1月14日 14:00~
会場:アーツ前橋 ギャラリー
参加費:無料(要鑑覧券、要申込)

物質と知覚の普遍性を問う、アニッシュ・カプーアに聞く。

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視覚や空間の認識に問題を提起し、存在の深淵さを提示するアニッシュ・カプーア。9月9日〜10月15日にSCAI THE BATHHOUSEで開催された個展は、アーティストの制作活動における源流を再確認する内容となった。5年ぶりとなる日本での本展について、作家に話を聞いた。

哲学的な問いを投げかけるモノトーンな作品世界

 インドのムンバイ出身で現在はロンドン在住の、現代美術界を代表するアーティスト、アニッシュ・カプーア。近年では、2012年に構造デザイナーのセシル・バルモンドとロンドンオリンピックの記念モニュメントの設計を担当し、15年にはヴェルサイユ宮殿で個展を開催するなど、常に国際的な注目を集めている。

「この展覧会では、空っぽな物体/対象(オブジェクト)の制作を試みています。しかしながら、それはたんに空っぽであるというわけではありません。そこには常に『空虚が満ちているのか?』という両義的な問いかけがあります。どのようにしたらそれが可能になるのか、それはいったいなんなのか──それは物体/対象と、そのリアリティーの本質、あるいは物質(マテリアル)/非物質(ノンマテリアル)についての根源的な問いです。この20年間、人類はとりわけ物理学の分野において、この物質性(マテリアリティー)の始まりについて多くの努力と発見を重ねてきました。ここでより重要なことは、私が作品制作を通して追い求める物質とは、たんなる物理的な物質ではなく、より普遍的な物質であるということです」。

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アニッシュ・カプーア アリス─ダブル・サークル 2014 ステンレススチール 80×80×80cm

 ギャラリーに入ると、手前の部屋の中央には透明なアクリルを用いた立体作品、壁にはカプーアのトレードマークとも言えるステンレスやファイバーグラスを用いた皿(ディッシュ)シリーズの新作が展示されている。また、奥の部屋にも同シリーズの新作と、和紙にガッシュで描かれた抽象画、そして中央のテーブルには建築模型が数点展示されている。

「アクリル・ブロックの内側にもうひとつのアクリル・ブロックが入れ子状に入った新作《無題》は、一見しただけでは中に入っているブロックがあまりよく見えません。不可視の物体/対象です。私はいつも知覚の小さな変化に興味を持っていますが、それはまさに最高の遊び(スーパー・プレイ)です。いつ見ても同じように見える作品とは異なり、見るたびに何か特別な体験をもたらしてくれます」。

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手前は、アニッシュ・カプーア《無題》(2016、アクリル、78×45×45cm)

 カプーアの作品を特徴づける要素として深淵な「暗闇」の存在がある。それは物理的な体験であると同時に心理的な体験でもある。彼は2014年に英国の企業サリー・ナノシステムが開発した、史上もっとも黒い物質「ベンタブラック」を作品制作に取り入れている。この素材は、カーボン・ナノ・チューブを用いることで、可視光の最大99・96 パーセントを吸収するという。

「テーブル上に展示している建築模型は、ベンタブラックを使うことを想定しています。それは真っ黒で、物質というよりはまるでブラックホールです。それ自体がひとつの物語、あるいは驚くべき物質の神話を体現しているようでもあります。開発当初は、2センチ四方程度の大きさしかつくることができませんでしたが、近い将来、私たちの身体や知覚空間を包み込むことができるくらいの大きさの作品もつくれるようになるでしょう」。

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SCAI THE BATHHOUSEでの展示風景。写真手前は、カプーアが構想のために制作した建築模型
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建築模型の黒い部分は、実現の際にはカプーアが独占使用権をもつ史上もっとも黒いとされる物質「ベンタブラック」の使用が想定されている

 テーブルに載る小さな作品から屋外に設置する巨大なインスタレーションに至るまで、カプーアの作品群が持つ独特なスケール感とミステリアスな体験を支えるのは、人間の知覚空間における微小な揺らぎに迫る最先端の科学技術だけでなく、素材それ自体が持つ原初的な普遍性である。

「新しいアートをつくるためには、エモーショナルな空間をつくり出す必要があります。それは異なるイメージやかたちのことを指しているのではありません。スタジオで何かをつくったときに、その物体/対象をしっかりと観察し、考察しなければなりません。これはいったいなんなのか、なぜそれなのか。そこには複雑な物語が存在します。制作プロセスや技術的な問題は後で考えればいいのです。物体/対象との間で意味のある会話が必要なのです」。

現代社会に向き合うアーティスト

 2013年には東日本大震災の被災地支援プロジェクト「アーク・ノヴァ」で、バルーン型移動式コンサートホールを磯崎新と設計し、また、15年には艾未未(アイ・ウェイウェイ)とともに現在欧州で起こっている難民問題に抗議するためのパレードを行うなど、社会的な活動にも精力的に取組んでいる。

「アーティストにかぎらず、作家、詩人、俳優、ミュージシャンなど、芸術文化で活動する人々が政治について考え、人類への問いかけとして声をあげることはとても重要なことです。いま何をすべきか、そして何をすべきでないか。いま世界には6000万人以上の難民が世界中をわたり歩いているといわれています。21世紀に入ってもなお、なぜお金が人の生命よりも重要とされているのか。とても重要な問いかけです」。

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アニッシュ・カプーア クリップ 2016 ステンレススチール 150×75×41cm

 以前、カプーアはインタビュー(『美術手帖』1999年7月号)において、自身のことを「間にいる人(Mr. Inbetween)」と称し、かつて現代美術の巨匠たちが実践した、「物質がすべて」(ドナルド・ジャッド)と「物質はもっと複雑で大きな物語の記号」(ヨーゼフ・ボイス)の間──抽象と象徴の間で制作をしていると語った。現実と非現実、内と外、2Dと3D、見えるものと見えないもの......。途方もなく両極に離れたものの「間」が、やがて微小な差異しか持たない、限りなく透明に近い境界としての「閾(いき)」に変容する。彼はそのような世界を私たちに提示しているのかもしれない。

島田浩太朗=文 
『美術手帖』2016年12月号「ARTIST PICK UP」より)

PROFILE
ANISH KAPOOR 1954年インド、ムンバイ生まれ。ロンドン在住。ステンレスや大理石など様々な素材を用い、知覚や空間に揺さぶりをかける作品を制作している。2015年にヴェルサイユ宮殿で個展を開催。同年に艾未未(アイ・ウェイウェイ)と欧州各国の難民政策を批判するパフォーマンスを、ロンドンで行った。

アニッシュ・カプーア展
会期:2016年9月9日〜10月15日(終了)
会場:SCAI THE BATHHOUSE
住所:東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
電話番号:03-3821-1144
URL:www.scaithebathhouse.com
9月9日〜10月15日、SCAI THE BATHHOUSE(東京)にて開催された。日本では5年ぶりとなる本展では、ステンレスによる立体作品や建築模型、ドローイングなど新作を含む11点を展示。

「chappie」を生んだグルーヴィジョンズが個展を開催

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スパイラルガーデン(東京・南青山)にて、東京を拠点とするデザインスタジオ、グルーヴィジョンズによる個展「GROOVISIONS 5×27」が開催される。会期は2017年1月6日〜1月15日。

 1993年に京都で活動を開始したデザインスタジオ、グルーヴィジョンズは、音楽、出版、プロダクト、インテリア、ファッション、ウェブなど多様な領域で活動してきた。また、設立当初につくられた着せ替えキャラクター「chappie」は、1999年には歌手としてCDデビューを果たし、企業や学校のイメージキャラクターも務めているほか、2015年には似顔絵アプリとしてリリースされ、話題となった。

 2017年は、グルーヴィジョンズが東京に拠点を移して20年を迎える節目の年。四半世紀に及ぶ活動を振り返って開催される本展では、アートワークのアーカイブを展示する。展覧会タイトル「GROOVISIONS 5×27」とは、会場に設置される全長約13メートル、縦横比5:27の大型ディスプレイから。このディスプレイで新作映像が発表されるほか、chappieをモチーフとしたインスタレーションも登場する。

 また会場には、2016年7月に京都にオープンしたグルーヴィジョンズが運営するセレクトショップ「三三屋(みみや)」の東京支店が、展覧会期間限定で出店する。本展で展示される作品も、一部は購入が可能だ。

GROOVISIONS 5×27
会期:2017年1月6日〜1月15日
会場:スパイラルガーデン
住所:東京都港区南青山5-6-23 スパイラル1階
電話番号:03-3498-1171
開館時間:11:00〜20:00
休館日:会期中無休
入館料:無料
URL:http://www.spiral.co.jp/e_schedule/detail_2112.html
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