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箱根・彫刻の森美術館の作品を撮る。篠山紀信×アートの個展

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写真家・篠山紀信による、彫刻の森美術館(神奈川・箱根)の野外彫刻作品を撮り下ろした作品などで構成される展覧会「篠山紀信写真展 KISHIN meets ART」が、同館で開催中だ。会期は2017年4月5日まで。

 ヌードやポートレート、都市風景をモチーフとした写真作品で知られる篠山紀信。近年では、美術館での個展「篠山紀信展 写真力」が2012年より全国巡回を続けており、原美術館(東京・品川)でも2017年1月まで「快楽の館」展が開催されているなど、アートの領域での活動も増加している。

 本展覧会ではその「アート」をテーマに、彫刻の森美術館の野外彫刻を撮り下ろした作品群を、同館にて展示している。ヘンリー・ムーアの《ファミリー・グループ》(1948-49)、エミール・アントワーヌ・ブールデル《弓を引くヘラクレス》(1909)などをモチーフに、作品との出会いの瞬間を切り取る。

 また、岡本太郎や草間彌生ら、篠山がこれまで交流を重ねたアーティストやその仕事場を被写体とした作品も発表。複数台のカメラを結合する、独自のジョイント写真の手法「シノラマ」を使って撮影した作品も展示しており、複眼的な写真表現を生み出している。

篠山紀信写真展 KISHIN meets ART
会期:2016年9月17日~2017年4月5日
会場:彫刻の森美術館 本館ギャラリー / 緑陰ギャラリー
住所:神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1121
電話番号:0460-82-1161
開館時間:9:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:なし
入館料:一般 1600円 / 大高生 1200円 / 小中学生 800円
URL:http://www.hakone-oam.or.jp/specials/2016/kishinmeetsart/

PARCOがつくる新しいカルチャー発信拠点、12月オープン

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今年8月7日に、一時休業のため閉館した渋谷パルコ。その地に新たなカルチャー発信拠点として、パルコがアートスペース「GALLERY X BY PARCO」をオープンする。場所は渋谷PARCOパート1、パート3のほど近くの渋谷スペイン坂。

「GALLERY X BY PARCO」は、音響設備も整えており、アートの展示のみならず、音楽、映像、パフォーマンスなど幅広い分野のカルチャーイベントにも対応できる施設。今後はアート、ファッション、アニメなど様々なジャンルの企画を展開し、渋谷PARCOパート1、パート3の休業中も継続的に情報発信することで渋谷の街の賑わいを創出していくという。

 同館の第一弾企画は、毎年秋に渋谷PARCOで開催されてきた女子クリエイターの祭典「シブカル祭。」のスピンオフ企画「女子と渋谷の展覧会 fromシブカル祭。」。女子クリエイターたちが、「渋谷のストリート」をテーマに、作品を制作・展示する。また会期中は、クリスマスにちなんだイベントも開催される予定。参加作家は、愛☆まどんな、青柳菜摘、オカダキサラ、とんだ林蘭ほか。

女子と渋谷の展覧会 from シブカル祭。
会期:2016年12月9日~25日
会場:GALLERY X BY PARCO
住所:東京都渋谷区宇田川町13-17
開館時間:11:00~20:00
入館料:無料
URL:http://www.parco-art.com/web/

【関連イベント】
オープニングレセプション「シブカル(OPENING)NIGHT!
日時:12月9日 19:00~21:00
参加クリエイターが集い、ライブ&パフォーマンスとケータリングで、オープ二ングを飾る。

「クリスマス直前!プレゼントマーケット!」
日時:12月17日 12:00〜(予定)
女子クリエイターたちが集う、「クリスマス」マーケット。

75万人動員の「篠山紀信展 写真力」、17年横浜美術館に巡回

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2012年6月に熊本市現代美術館で開幕して以来、東京オペラシティ アートギャラリーをはじめ、新潟県立万代島美術館、札幌芸術の森、松本市美術館など日本全国25会場を巡回、計75万人以上を動員してきた「篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE by KISHIN」が2017年1月に横浜美術館で開催される。

 本展では篠山が自ら選んだ作品を「GODー鬼籍に入られた人々」「STARーすべての人々に知られる有名人」「SPECTACLEー私たちを異次元に連れ出す夢の世界」「BODYー裸の肉体ー美とエロスと闘い」「ACCIDENTSー2011年3月11日ー東日本大震災で被災された人々の肖像」という5つの章に分けて紹介。

 なかでも高さ3メートル、幅4.5メートルの大画面で眼前に迫る山口百恵や、長さ約9メートルにわたって展開する後藤久美子のメルヘンの世界など、写真の常識を超えたスケールの写真には注目だ。これまで、美術館を「写真の死体置き場だ」とし、美術館での写真展に疑問を抱いてきた篠山紀信にとって、この大きさが「写真力」を引き出す鍵となった。各美術館の展示室ごとに異なる表情を見せる大作が、横浜ではどのような空間をつくりだすだろうか。

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篠山紀信 ジョン・レノン オノ・ヨーコ 1980

 このほか、横浜展のための特別セレクションとして、横浜出身の女優・草笛光子や、横浜・伊勢佐木町の路上ライブから出発し、幅広い世代から支持を集める北川悠仁と岩沢厚治によるユニット「ゆず」など、横浜と、そこに暮らす人々のために篠山が選んだ作品が新たに加わる。

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篠山紀信 ゆず ゆっぴ 2008

 篠山は本展について「この展覧会は美術館の大空間と圧倒的インパクトのある写真との戦い。つまり空間力VS写真力のバトルです。鑑賞ではなく体感! 是非ご自身の体をその空間の中に浸してみて下さい。横浜美術館でお待ちしています」とコメントしている。

 なお1月9日まで東京・品川の原美術館では、篠山が同館の建築に魅了されて撮り下ろした新作で構成された「篠山紀信 快楽の館」が開催中。こちらもあわせてチェックしたい。

篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE BY KISHIN
会期:2017年1月4日~2月28日
会場:横浜美術館
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
電話番号:045-221-0300
開館時間:10:00~18:00(2月23日〜16:00、2月24日〜20:30)
休館日:木休 ただし1月5日、2月23日は開館
入館料:一般 1500円 / 大高生 900円 / 中学生 600円 小学生以下無料
URL:http://kishin-yokohama.com/


【関連イベント】
アーティストトーク
出演:篠山紀信
日時:2017年1月7日 15:00~16:30(14:30会場)※トーク終了後、図録購入者を対象にサイン会を実施
会場:横浜美術館レクチャーホール
定員:240名(当日13:30より総合案内で整理券配布、参加無料)

上田麗奈と藤ちょこ先生のデジタルペイント講座 ⑩背景編

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初心者にもやさしい直感的な操作が可能な多機能・低価格のペイントソフトとして、多くのクリエイターから支持を得ているペイントソフト「openCanvas」。本連載では、声優の上田麗奈が、同ソフトのメインアートワークを手がけた人気イラストレーター・藤ちょこさんにその魅力を教わりながら、オリジナルのデジタルイラストを制作。第7回からは写真をベースに新たな作品に挑戦しています。第10回の今回は、それぞれの物の質感を描きこんでいきます。

影を描いて柵の質感を出す

全12回の講座も残すところあと3回。前回までの作業で、人物と背景にひととおり色を塗り終えました。残りの回では、openCanvasの様々な機能を組み合わせながら、もとの写真を参考に物の質感を出すなど作品をより精度の高いものへと仕上げていきます。

藤ちょこ(以下、藤):今日は、背景部分の物の質感を出していきます。最初に柵の部分から作業していきましょう。 もとの写真を見ると、光源が手前(カメラ側)のほうにありますよね。まず、柵の下の部分に暗めの色をエアブラシでのせていきましょう。スポイトツールで、柵の塗りに使用したグレーの色を拾ってください。それより暗めのグレーを選択します。レイヤーの機能で透明部分を保護しておいて、柵全体の下から上へ、ふわっとグラデーションをかけるようなイメージで塗っていきます。エアブラシの直径は太めがいいです。

上田麗奈(以下、上田):こうですか?

藤:そうですね。今度はエアブラシからペンツールに替えて、柵の上の棒の影が落ちている部分を描いていきます。

上田:ふんふんふん。[柵の上の棒をなぞるように影を入れていく]

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柵の全体にグラデーションを入れ、上の棒の影を加えるだけで、柵が立体的に見えてくる

藤:こうすると立体感が出てきます。ちなみに、柵の線画はピンクだったり、壁の線画はオレンジだったりカラフルですが、その理由は?

上田:特にないです(笑)。わかりやすいと思って。

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冗談を交えながらの、和気あいあいとした収録の様子。講座も10回目を迎え、藤ちょこ先生もスタッフも、上田の性格や癖がわかってきた

藤:なるほど。そうしたら、レイヤーのモードを切り替えることで、塗りの色に馴染んでくるかと思います。この絵だと「乗算」や、暗い部分と明るい部分をバランスよく掛け合わせる「オーバーレイ」あたりがよいかもしれません。

上田:[レイヤーモードを次々変えながら]ん〜、悩ましい......「オーバーレイ」かな。

藤:奥のほうの柵の柱が重なっている部分にも影を入れることで、さらに立体的になります。この作業は、直線ツールでも、フリーハンドでもやりやすいほうで大丈夫です。

開発チーム(以下、開発):そんなにパースを意識しなくてもいいんですね?

藤:はい、こういうところはある程度感覚的に描いて、それらしく見えればいいと思います。必ずしも、パースが正確であることがいい絵の条件というわけでもないですから。続いて、柵の下の棒の上面を塗りましょう。新たにレイヤーを作成してください。上面の形を多角形ツールで指定してもいいですし、「自由選択」でフリーハンドで塗りつぶしてもいいですよ。

上田:「自由選択」の方がラクです〜〜!

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柵の上部にある棒の上面を明るく描くことで、棒の太さや幅が表現されてきた

藤:さらに、写真を見ながら、光が当たっている柵の上部にある棒の上面を塗ってみましょう。明るめのグレーを選択して、奥のほうの面積が少なくなるように描くと立体的になります。

上田:[柵の上面を塗りながら]この明るい面を少しぼかしてみたいです。

藤:フィルタの機能でレイヤー全体をぼかすこともできますが、際の部分をぼかすなら「ぼかしツール」を使いましょう。ツールバーの水滴のマークを選んで、色の境目をこするようにペンを動かすと、ぼかすことができますよ。

上田:[ぼかしツールで柵の上の棒の、上面と側面の境界をぼかす]こんな感じです!

藤:あと、柱にも明るい色でハイライトを入れていくと、金属の感じが出ます。

上田:こういうのは、どのくらい描き込めばいいでしょうか?

藤:これはもう好みですね。

上田:ふむふむ。[柵の部分に明るいグレーで光の効果を適宜加えていく]

光沢を描いて金属の質感を出す

藤:次は、ゴミ箱を描き込みましょう。写真のゴミ箱とは質感を替えて、金属製のゴミ箱にしてみましょうか。エアブラシで縦に線を引いていくと、円柱らしく見えてきます。影のできる側面に、太めのエアブラシでフワッと濃いめの色を載せると効果的です。

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手元にあるアルミ缶を例にしながら、ゴミ箱の描写の説明をする藤ちょこ先生。写真はもちろん、身の回りのものを参考に絵を描いていく

上田:......[黙々と作業する]

藤:アルミの質感が出てきましたね。ゴミ箱の口から見える内側も描いたら、最後に明るめのグレーで円形の上面を塗って、側面に光の点を加えましょう。より金属らしくなりますよ。

上田:ほー。

藤:これでも十分ですが、さらにここに光の反射を加えてみましょう。ゴミ箱の線画の上に新しいレイヤーを作成して、レイヤーのモードを「加算」にしておきます。第4回第6回で光るシャボン玉の表現に使用した効果ですね。この状態で、光の当たっている箇所にエアブラシでオレンジ系の色をかけます。[ゴミ箱の左側にオレンジ色の光をのせる]

uedareina10_04.jpgエアブラシで垂直線を引くと、ゴミ箱の円柱の側面が金属らしくなる

上田:うわー! 金属っぽくなってきたー。

開発:ゴミ箱がとてもリアルになりましたね。

藤:光が強すぎると感じたら、自然な感じになるまでレイヤーの透明度で濃度を調整してください。そうしたら、一度ファイルを保存しましょう。

ザラザラした壁面や床の質感を出す

藤:次は床ですね。タイルの色より少し濃い目の色を選択してください。壁際に沿うような感じで、床にエアブラシでフワッと色を入れてみてください。それから、柵の下の部分に、影を入れます。この要領で、二重窓の間の部分や壁面に、窓枠の影を入れていきます。それを終えたら、先ほどのように線画のレイヤーモードを替えて、線を塗りの部分と馴染ませていってください。

上田:あれ? どれがどのレイヤーだろう??

藤:レイヤーが増えてきましたからね。そういうときはレイヤーの左側の目のマークをクリックして、表示/非表示を切り替えるといいです。

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作画に集中している上田。別モニターで、藤ちょこ先生が上田の手元の作業をチェックしている

藤:次は、床や壁のコンクリートの質感を出していきましょう。新しいレイヤーを作成したら、エアブラシからペンツールに替えて、「ペン先集」というウインドウを見てみてください。openCanvasでは、いろんな質感のペン先が選べるんです。ここでは、ザラザラした線を描けるペン先を選択します。線を引くというより、スタンプを押すような感じで描いていくほうが、壁の表面をザラザラした印象にできると思います。上田さんがお得意のポンポンと点を打っていく作業です!

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様々なペン先の種類。太さや濃度を替えることで、幅広い表現がさらに可能。それぞれどんな表現に適しているか試しながら、自分なりの使い方を習得していきたい

上田:ポンポンポン〜♪[点描していく]

藤:ポイントは、質感を出しながら、光の当たっている壁面と当たっていない壁面の差をはっきり出したり、壁と床の境目がくっきりするように影を入れて立体感を出していくことですね。新しいレイヤーを「乗算」モードにして作業すると、自然な暗さが生まれるので、空間ができてきます。

上田:こんな感じでしょうか!

藤:あ、床に質感が出てきましたね。木を描いたときのように、床の影もペンの色をときどき替えて作業すると、色に深みが出てきます。あとは、影を描き込んだ箇所を部分的に消しゴムツールで消すことで、ハイライトを入れましょう。立体感を出すことができます。床のタイルの目に沿って、少し消してみましょう。

上田:ふむふむ。床、できました!

ガラス面の映り込みの質感を出す

地道な作業にもねばり強く取り組む上田。写真をもとに描き出した作品ですが、徐々に画面上に上田の作風が見えてきました。

藤:では、これが本日最後。窓ガラスの質感を出します。もとにしている写真には様々なものが映り込んでいるのですが、これをそのままきっちり描くというよりは、この光の反射の全体像を描くつもりで臨みましょう。新規レイヤーを「加算」モードにして、水色系のペンで描くといいと思います。太めのペンで大きく描いてみてください。

上田:こんな感じですか?

藤:はい、思い切りよく描いてください。はみ出したところはあとから消せば大丈夫です。最後は、レイヤーの透明度を調整して消しゴムで部分的に消すと、そこに人影が映っているようになります。

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レイヤー全体の透明度を調整して、ガラスに映り込んだ風景をうっすら表示させる

開発:ほぉ〜〜〜

上田:へぇ〜〜〜。できあがってきました!

藤:次回は、人物の描画ですね。

上田:はい。あと2回、がんばります!

第10回の講座内容を上田麗奈が動画でおさらい!

 第10回「背景編」のイベントファイルを早回しで再生しながら、上田麗奈と藤ちょこ先生が、おさらいします。

 
【上田麗奈と藤ちょこ先生のデジタルペイント講座】
 
第1回 第2回 第3回 第4回
 
第5回 第6回 第7回 第8回
 
第9回 第10回 第11回 第12回
 

PROFILE
うえだ・れいな 富山県生まれ。声優。第5回81オーディション特別賞・小学館賞、第9回声優アワード新人女優賞受賞。アニメ「Dimension W」(2016年、百合崎ミラ役)などに出演。12月21日には、ミニアルバム「RefRain」にて歌手デビューする。特技は水彩画・ボールペン画、趣味は掃除。

ふじちょこ 千葉県出身、東京都在住のイラストレーター。ライトノベルの挿絵やカードゲームのイラストを中心に活動中。「openCanvas」のメインビジュアルを担当。「賢者の弟子を名乗る賢者」「八男って、それはないでしょう!」挿絵、「カードファイト!!ヴァンガード」カードイラストなど。BNN新社より画集「極彩少女世界」発売中。pixiv:藤原 27517  Twitter:@fuzichoco  公式サイト:http://fuzichoco.com

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ペイントソフト openCanvas パッケージ版
ペイントソフト openCanvas
価格:【パッケージ版】通常版 6,800円(税抜)/ガイドブック付き 7,800円(税抜)
   【ダウンロード版】通常版 5,370円(税抜)
URL:http://store.junglejapan.com/ext/oc/

動作環境(※詳細はメーカーのホームページでご確認ください。)
OS:Windows Vista Service Pack2、Windows 7 Service Pack1、Windows 8/8.1、Windows 10
HDD:インストール用に10MB以上の空き容量(画像の保存、作業領域用に2GB以上の空き容量を推奨)
CPU:SSE2に対応するx86互換プロセッサ
メモリ容量:OSが推奨するメモリ容量(32bitは4GB、64bitは8GB以上を推奨)
ディスプレイ:1024×768、True Color(1280x768以上を推奨)
インターネット接続:アクティベーション(シリアルキーの認証)、自動アップデートにはPCのインターネット接続環境が必要
周辺機器:Wacomタブレットからの筆圧に対応、TabletPC APIに対応したタブレットPCからの筆圧に対応
入力対応フォーマット:BMP、JPEG、PNG、PSD、OCI(openCanvas形式)、WPB(openCanvas1.1形式)
入力対応フォーマット:BMP、JPEG、PNG、PSD、OCI(openCanvas形式)
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名和晃平が選んだ! 「CAF賞選抜展」で注目の16作家が展示

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京都市南区に位置するアートホテル「ホテルアンテルーム京都」。ここを舞台に、新進アーティスト16名が集う「CAF賞選抜展」が11月19日に開幕した。本展は公益財団法人現代芸術振興財団が2014年より主催し、全国の学生を対象に、若手アーティストの育成を目的として毎年実施しているアートアワード「CAF賞」の選抜展だ。選抜アーティストを選んだのは現代美術家の名和晃平。その狙いとは?

「CAF賞選抜展」で作品を見せるのは、過去3回の「CAF賞」受賞作家の中から選ばれた、増田将大、畑山太志、田中望、須永有、ジダーノワ・アリーナ、大和美緒、浅井拓馬、星野夏来、富田直樹、村松英俊、村井祐希、表良樹、井田幸昌、戸嶋優多、西村有未、粕谷優の16名だ。

 「ホテルをアーティストのプレイグラウンドにする」というコンセプトでつくられたホテルアンテルーム京都。入り口では村井祐希の巨大な立体作品が来場者、あるいは宿泊者を出迎える。メイン会場となるのはアンテルーム京都のエントランスギャラリー「Gallery 9.5」だ。ここには7作家がそれぞれが今回のために制作した新作など、力作を展示している。またこのほかカフェの入り口や、客室に続く通路、そして一部客室にも展示は広がっており、まさにホテルアンテルーム京都全体を使っての展覧会となった。

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ホテル入り口に設置された村井祐希の《Super Omelet Embankment section》
cafreport2.JPG左から畑山太志、井田幸晶、大和美緒の作品。
P1140171.JPGカフェ前の壁面にも作品が展示され、宿泊客の目を楽しませる。手前は須永有《「あなたの顔はよく見える」−1》

 開幕初日に行われたレセプションには参加作家のほか、関係者が多数出席して盛り上がりを見せた。本展のセレクションに携わった名和晃平はその場で次のように語っている。「3年間審査員をさせていただいて、その中でたくさんの作家と出会ってきた。その作家たちを京都でも紹介できないかと財団の事務局と話したことがこの展覧会実現のきっかけとなっています。CAF賞は東京で展覧会をやってきましたが、応募者のリストを見ると関西の美大勢が頑張っていて、よく見てみると、関西の美大から関東の大学院に進んだ人がいたり、逆の人もいて、クロスしている。そういうつながりが見えてきたことが面白かったので、今回のセレクションは作品の良し悪しもありますが、受賞した後に積極的に作家活動をしている人や、京都にゆかりがあって、その活動に注目すべき人にも混じってもらいました。関西の美大生にも刺激になるのではないかと思います」。

 その言葉通り、当日は参加作家たちが、それぞれの作品について言葉を交わし合う場面が多く見られたのが印象的だ。

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挨拶をする名和晃平。ホテルアンテルーム京都には名和の作品ももちろん展示されている

 出身地も大学も様々なバックグラウンドを持つ若手作家たちが、「CAF賞」という共通項を持って集まり、切磋琢磨するこの「CAF賞選抜展」。表現技法もコンセプトもまったく異なるが、胸に抱く美術への情熱は同じくするアーティストたち。京都で今もっとも勢いのある展覧会をぜひお見逃しなく。

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村松英俊(手前)は手押しポンプに大理石でつくったハンドルという異質な組み合わせを見せる。左は西村有未、右は田中望の大作
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ソファ前には増田将大の大作《Interval of time #2》が掲げられている。腰を据えてじっくり鑑賞したい
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戸嶋優多は3Dプリンターを使った立体《None》を展示。奥に見えるディスプレイは星野夏来《美術の歩み〔下〕》の一部
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客室へと続く通路の両側には粕谷優の《roedside trees》が並ぶ
CAF賞選抜展
会期:2016年11月19日~2017年1月9日 
会場:ホテルアンテルーム京都
住所:京都府京都市南区東九条明田町7
開館時間:12:00~19:00(11月19日18:00〜)
休館日:12月18日〜20日休
入館料:無料
URL:http://gendai-art.org/caf_kyoto/index.html
参加アーティスト:増田将大、畑山太志、田中望、須永有、ジダーノワ・アリーナ、大和美緒、浅井拓馬、星野夏来、富田直樹、村松英俊、村井祐希、表良樹、井田幸昌、戸嶋優多、西村有未、粕谷優

大山エンリコイサムの香港トラベル・レポート

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海沿いを中心に多くのアートスポットが集まり、活気を見せている街、香港。2019年には美術館「M+」の開館を控えており、その広がりは今後も続く勢いを見せている。そんな香港のいまを、東京とニューヨークという2つの大都市での生活を経験し、ストリートやグラフィティ文化にもとづく作品を発表する大山エンリコイサムはどう見たのだろうか。香港の街が持つ特徴を観察した、滞在記を届ける。

 香港アーツセンターとアジアン・カルチュラル・カウンシルの香港支部が共催する連続講演「クリエイティブ・マインド・シリーズ」の初回で発表をするために、私は今年9月に初めて香港島を訪れた。1週間の短い滞在だったが、幸い知人の案内もあり、様々な場所を訪れ、この都市の混成的でユニークな表情に触れることができた。心象を記しておきたい。

都市空間の複合性

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香港島の丘陵側にある観光地「ビクトリア・ピーク」から海側を見下ろす。海と山に挟まれたエリアに高層ビル群が立ち並んでいることが、よくわかる。向かいに見えるのは九龍エリア
Photo by Ryosuke Chishima

 まず、東京に生まれ育ち現在はニューヨークに住んでいる私から見て、アジアとアメリカの都市を構成する対照的な特徴が、香港島では不思議なかたちで同居していると感じられた。ニューヨークのマンハッタン島はその限られた土地ゆえに不動産の開拓が水平ではなく垂直に進み、建築家のレム・コールハースの言葉を借りれば「人工のワイルドウエスト」または「空のフロンティア」である摩天楼を生み出した。香港島もまた、似た地理的条件がもたらす高層ビルの密集によって特徴づけられる。このことから両都市は、家賃高騰や居住空間の不足といった共通の問題を抱えている。

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香港の中心部。歩行空間は東京にも似た雰囲気を感じさせるが、上空に目をやると、ニューヨークを想起させる高層ビルが建ち並ぶ
Photo by Ryosuke Chishima

 しかし、ニューヨークの摩天楼の足元に広がる通りは整備されたグリッド構造であるのに対し、香港のストリートは入り組んで錯綜している。これは主に3つの理由によると私は考える。まずは地形である。北側は湾曲する海岸線に、南側はいびつに伸びる丘陵線によってかたどられた東西に細長い土地では、下部構造のグランドデザインを幾何学的に設計することは難しかったのではないか。実際、香港島の主要道路は海岸線をなぞるように伸びている。

 次に、土地の高低差が挙げられる。東西に広がりつつ海岸から丘陵へせり上がる地形は、立体的な起伏を空間に与えている。片側には海が、逆側には山が広がる勾配は、それだけで目眩を覚えるほどだ。

 3点目に、島中央部のセントラル・エリアに顕著な車道と歩道のゾーニングがある。自動車中心に設計された地上と、その上をまたがる歩行者用の陸橋や上空通路、さらにそれらと組み合わされたショッピング・モールやオフィスビルなどが、複合的な空間を形成している。ちょっとした空中都市のおもむきと言ってよい。

 以上の要素によって、香港の街路は豊かな複雑さに満ちている。それはアジアに多く見られる雑多性とも言える。タイムズ・スクエアやそごうのテナント・ビル付近には、渋谷のスペイン坂やパルコ付近を想起させる街並みもあり、東京出身の私としては馴染みやすい景観だった。

 再び上空に目を向けると、そびえ立つビル群の多くが実はパステル調のカラーで彩られていることに気がつく。それは気持ちが軽やかになる南国的な色調で、よく見れば街路樹もヤシ類が目立つ。この点において、同じ摩天楼と言っても灰色で無機質なニューヨークとは異なっている。

入り混じる洋の東西

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香港島の繁華街にある竹製足場。街路を暗くすることなく、むしろアート作品のように視覚的に美しい

 このふたつの空間性──オーガニックでアジア的な街路と、垂直に宙へ伸びるビル群──をブリッジする興味深い事象がある。それは竹材を用いた工事用の仮設足場だ。東京やニューヨークでは単管パイプで足場を組むことが多いが、香港をはじめ中華圏では現在でも竹材を用いると言う。鉄製の単管足場の周囲は暗くなりがちだが、竹材は視覚的にも美しく、有機的に街に溶けこむ。驚くべきことに、相当な高さのビルもこれら竹の足場で囲い込んでしまう。欧米が推し進めた近代都市計画の産物である高層建築を、街路からオーガニックに繁茂するアジアの伝統知が包んでしまうようだ。香港島のいたるところに点在するこれらの竹製足場は圧巻である。

 洋の東西が入り混じる香港島の特徴は、居住者自身にも見て取れる。1997年に中国に返還されるまでイギリス領土であった香港の人々のなかには、自分たちは中国本土よりもヨーロッパの生活様式に慣れ親しんでいると考える者も少なくない。さらに英語の普及率が高く、タックス・ヘイブン相当に税率の低い香港は、多国籍企業からアジアにおける金融機能の拠点と位置づけられることが多く、外国人の来訪者や赴任者が多い。

 他方で、東南アジア諸国から出稼ぎにくる単純労働者も相当数いる。そのことを象徴しているのが、出稼ぎフィリピン人女性の日曜日の慣例として、セントラル・エリアを中心に香港島の様々な地域で行われる「ピクニック」だ。おびただしい数のフィリピン人女性が都市のあらゆる隙間に所狭しとシートを広げ、のんべんだらりと寝そべったり、炊き出しをしたり、お喋りに興じたりする様子は、(本人たちの意図せぬところで彼女らの存在が主張され)政治的ですらある。こうして都市をダイナミックに構成する様々な文化的・経済的要因が、香港の人々のアイデンティティーの配合に強く影響していることは想像に難くない。

中心部のアート施設

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「香港アーツセンター [ジョッキー・クラブ ifva エブリウェア] ifva カーニバル」は、「都市はシネマである」というコンセプトのもと多くの市民を惹きつけた
Courtesy of Hong Kong Arts Centre

 次に、訪れることのできたアート関連のイベントや施設について触れておきたい。慈善団体の香港ジョッキー・クラブの支援のもと開催された「香港アーツセンター [ジョッキー・クラブ ifva エブリウェア] ifva カーニバル」は、短編映画やビデオ、アニメーション、メディア・アートなどの作品を展示するアート・フェスティバルだ。香港観覧車付近のエリアで、9月24、25日の2日間にわたって行われた。

 1995年に「インキュベーター・フォー・フィルム・アンド・ビジュアル・メディア・イン・アジア」として始まった同イベント。今年は初めて交通量の多い屋外での開催となり、より一般層に向けて開かれた体裁となった。内容も、いわゆる参加型アートやセンサーで観客の動きを取りこむメディア・アートなど家族連れでも楽しめるものから、サウンド・アートや海景を利用したサイト・スペシフィックな作品といったコンセプチュアルなものまで多岐にわたる。また、会場一角のテントでは映像作品が上映され、ステージでは音楽ライブが行われるなど、活気にあふれていた。

 同イベントは、9月から11月にかけて週末に運行されたシャトルバスのサービス「香港アート・イン・モーション」の道程にも組みこまれていた。やはり香港アーツセンターが運営する同サービスは、香港内のアートスポットを無料バスで巡るもので、ほかに「コミックス・ホーム・ベース」や「M+パビリオン」、「Oi!」、そして香港島の南側に位置し、多くの若手ギャラリーやオルタナティブ・スペースが集まる「サウス・アイランド・カルチュラル・ディストリクト」などを訪れることができる。このうち私自身が足を運んだ施設を、最後に簡単に紹介したい。

 中心部の湾仔(ワンチャイ)にある香港アーツセンターの分館、コミックス・ホーム・ベースは、香港のコミック・アートのシーンを紹介するほか、現在リノベーション中である本館の代わりに特別イベントなども実施している。私が参加した「クリエイティブ・マインド・シリーズ」も同館4階で行われた。ローカルのコミック・アーティストによる少部数発行の同人誌なども紹介されており、香港におけるコミック・アートの層の厚さを感じさせた。

 M+パビリオンは、目下建設中の大型美術館「M+」の本館が完成するまで、その横でプレ・オープンしている施設である。この秋には、2015年のヴェネチア・ビエンナーレに香港パビリオンで参加した曾建華(ツァン・キンワー)の個展「ナッシング」が開催され、私も関連トークを聴講した。質疑応答も含め通訳なしにすべて英語で行われていたことが、記憶に残っている。

 北角エリアにある「Oi!」は、ロイヤル香港ヨット・クラブの会館として1908年に建てられた歴史的な建造物をリノベーションしたスペースだ。展示会場のほかに広場やカフェが併設され、市民の憩いの場としても機能する、コミュニティーに根ざした施設である。アートに関心がなくても訪れたくなる居心地のよさだ。

 また香港島西部にある上環(ジョウカン)エリアには、既婚警察官の宿舎をリノベーションし、現在はギャラリーやアーティストのスタジオ、カフェや図書館などが入る大型複合施設「PMQ」に加え、「アジア・アート・アーカイブ」や「アジアン・カルチュラル・カウンシル」の香港支部オフィスがある。セントラル・エリアでは、本年中に開館が予定されている、元中央警察署を改装した芸術複合施設「タイクゥン」なども視察することができた。

 中心部にアート施設の新設が続く香港の勢いを感じることができた滞在であった。次の機会には、島南部のカルチュラル・ディストリクトにも足を伸ばしたい。

PROFILE
おおやま・えんりこいさむ 1983年東京生まれ。2012年秋よりニューヨーク在住。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科先端表現専攻修了。グラフィティ文化の視覚言語を翻案したモチーフ「クイック・ターン・ストラクチャー」を軸に、壁画やペインティング作品を発表している。エッセイや執筆も行っており、著書に『アゲインスト・リテラシー──グラフィティ文化論』(2015年、LIXIL出版)がある。

心の傷を"継ぐ"アーティスト・渡辺篤インタビュー 後編

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東京藝術大学在学中から自身の体験に基づく、傷や囚われとの向き合いを根幹とし、かつ、社会批評性の強い作品を発表してきたアーティスト・渡辺篤。卒業後は路上生活やひきこもりの経験を経て、2013年に活動を再開した。「引きこもり」「傷」「鬱」など自身の経験をもとに、作品づくりに取り組んできた渡辺が、「黄金町バザール2016ーアジア的生活」に初参加し、さまざまな人の「心の傷」をウェブ上で匿名で募集する新プロジェクトとして発表した。「黄金町バザール」での新作について語る前編に続き後編では、渡辺がアーティストを目指したきっかけや、キーパーソン会田誠との関係、また渡辺を語る上で欠かせない「引きこもり」にまつわるエピソードなどをお届けする。

──前編では「黄金町バザール 2016」で発表されたプロジェクト「あなたの傷を教えて下さい。」についてお聞きしましたが、後編では渡辺さんご自身のこれまでを振り返ってうかがいたいと思います。そもそもアーティストを目指そうと思ったのはいつ頃ですか?

 中学2年生のときですね。当時NHKで、武蔵野美術大学と多摩美術大学の油絵科の学生が壁画を描いて対決するという放送があって、それぞれの校風が壁画からありありと見えたんです。そこで美術大学の存在を知りました。もともと僕は足が速くて陸上部の部長をやったり、勉強の成績もそこそこ良かったりと、いろいろなことに少しずつ才能があったんです。でも本当に極めたいのはなんだろう、と考えてたどり着いたのが絵画だった。そのときの美術の先生が女子美術大学出身で、美大のことを詳しく教えてもらいました。「授業全部が美術の時間」「就職せずに絵を描いて生活していけるかもしれない」と受け取ってしまいまして。これはいいぞと(笑)。

──絵を描くのは昔から好きだったんですか?

 小学1年生の頃からコンクールの賞を総取りして「賞状コレクター」みたいになっていました(笑)。高校では美術部でもないのに、神奈川県の絵画コンクールで優秀賞を受賞したり。

──そして、大学は東京藝術大学を選択。4浪の末、2001年に入学を果たします。

 多くの美大予備校は洗脳教育みたいに、藝大に受かることを至上命題としていると思います。僕はその教育にはまって「(藝大に)入らなければいけない」となってしまった。自分の技術や画風や思想を、藝大に受かる人格へと変えていく時間でしたね。だから浪人時代は苦しかった。

──実際に入学してから理想と現実とのギャップはありましたか?

 教わることができないんですよ。予備校時代は筆の使い方やキャンバスの張り方を教わりますが、大学では1年生の4月から「作家としての心得を感じ取れ」という空気があり、作品をつくっては講評の繰り返しが始まるんです。すると、それまで受験という目的のある作品をつくってきた自分は、自由に作品をつくることが上手くできなかった。なのに教わることは何もないというような状態。ただ飲み会の席で「作家として態度」のようなものを聞けるコミュニティーに入れてもらった、というのが芸大時代だったのかなと思います。

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せかい なるほど いじんでん[3] 2007 キャンバスに油絵の具、オイルパステル、自作額縁、参考文献パネル、研究ファイル 233.6×187.3cm  池田大作の肖像画。東京藝術大学の卒業制作展で発表され、『週刊現代』に取り上げられるなど話題を呼んだ

──渡辺さんは学生時代からひとつのスタイルを極めるのではなく、多種多様な作品を制作してきました。それはなぜでしょう。

 今振り返って思うのは、「手先が器用になりたくない」ということですね。4年も浪人すればある程度器用になりますし、そのおかげで合格したような気もするんです。でも、もし「現代美術」の対立軸として「デザイン」や「工芸」があるとするならば、現代美術は思想的であるべきだし、技術の洗練ではないと思っているんです。4浪の末、デッサンも上手になりましたが、それは作品の要素に必要以上に入れるべきではないし、「ちょっと器用なお父さんがDIYでつくれるくらいの作業」をなるべく超えてはいけないと思ってるんです(笑)。

 それは会田誠さんの門を叩いてから、彼もおそらく同じだと感じましたし、そこにシンパシーを感じました。彼は時として100円ショップの「ダイソー」で筆や絵具も買う(彼は技法材料研究室に在籍していたので、どの色であれば100円ショップで買っても劣化しないか、ということを分かっています)。 「弘法筆を選ばず」であるべきだということを意識しています。

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アベティはそれを見たことがない 2007 はなくそ(2年間溜めた作者の)、日本銀行本店金庫に置かれた金の展示台(複製物)、映像DVD(1分25秒)個人蔵  2007年の「KINCO ~日銀ウォーキングミュージアム」(日本銀行本店地下金庫)で初めて展示された

──これまでたびたび会田誠さんの制作を手伝ってきた渡辺さんにとって、会田さんとの関係性は渡かなり重要な部分を占めているのではないかと感じます。出会いはいつですか?

 東京藝大大学院2年生のときですね。きっかけは『美術手帖』です。当時、会田さんには一度も会ったことがなかったけど、親和性を感じていたんですね。それで『美術手帖』(2008年5月号)の会田誠特集を読んで、「いよいよ会いに行かないとダメだ」と思った。美術家としてよりも、「いちビューワーとしてファン」みたいな意識もあって......。でもイメージが壊れてしまうかもしれないという思いから、実際の会田さんに会うのは怖かったんですよね。それで雑誌の中の「青空座談会」に参加していた会田さんを除くアーティストたち全員に、順に会いに行ったんです。会うのは怖いけど、会田さんの息吹は感じたいという気持ちですね。

 でも最終的には会いに行った。そのときポートフォリオを見せたら、僕の作品(《せかい なるほど いじんでん[3]》)をすでに知ってくれていた。それですぐに会田さんの個展(「ワイはミヅマの岩鬼じゃーい!!」、ミヅマアートギャラリー、2008年)の際にアシスタントになったんです。そのあと大学院の修了制作講評会のとき、ミヅマアートギャラリーの三潴さんがゲストで来て、僕がその対応係をやっていたら三潴さんに「(会田誠の)北京での長期滞在制作のアシスタントにならない?」と言われ、距離が縮まっていったんです。

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『美術手帖』2008年5月号に収録された「青空座談会」。都内公園の「ブルーテント村」にあった物々交換カフェ「エノアールカフェ」を会場に、司会の会田誠のほか、いちむらみさこ、卯城竜太(Chim↑Pom)、遠藤一郎、小川てつオ、小田マサノリ(イルコモンズ)、武盾一郎、富永剛総、増山麗奈が参加した

──ファンとして憧れていた会田誠さんと実際に出会い、渡辺さんにはどのような変化がありましたか?

 日本の芸道には「守破離」という概念がありますが、それを時間を追って経験しているなと感じますね。(今は)会田さんは冷静に、乗り越えなくてはいけない存在だと思っています。

──引きこもっている間は、会田さんをはじめとするアーティストたちには会わなかった?

 深刻な引きこもりの間(7か月半)は誰とも会いませんでしたが、そのあとの約2年では会田さんの森美術館の個展(「天才でごめんなさい」、2012〜13年)を手伝ったりました。それでもやはり7か月半も世間から断絶されていると、それを戻すのに年単位の時間が必要なんですよね。そんなとき、社会は強い人たちで構成されているなと思います。ナイーブだとすぐに弾かれてしまう。でも、アートの世界は自分の究極のエゴを納期までにかたちにする、言い方を変えるととても暴力的なものだし、引きこもりのメンタリティのままではアートはできないと思います。だから今の僕は生まれ変わったんだなと。「引きこもりだってなにかはつくれる」と言いたいけど、実際のアートの現場は(精神的に)とても強い人たちがたくさんいるし、上手くプレゼンテーションできなければ排除されていく。

──渡辺さんが世間から断絶される原因となった引きこもりですが、改めてその要因が何だったのかお聞かせください。

 僕は2001年から、9年ほど藝大に在籍していたわけですが、それを終えた半年後から引きこもりになりました。きっかけはいくつかあったのですが、簡単に言うと「居場所がなくなった」ということです。ルーティンワークとしての通う場所がなくなり、自立したアーティストとしてやっていかなくてはならないという不安もありました。プロの美術家へのシフトはスムーズにいかなかった。それと同時に、結婚を約束していた人の裏切りや、渋谷の宮下公園で参加していたホームレス排除への抵抗運動から僕自身が排除されたこと(途中参加してきたフェミニズム運動の人々との軋轢)などがありました。居場所がなくなってしまったんですね。

──先ほど「引きこもりにアートはできない。だから今の僕は生まれ変わった」とおっしゃいました。引きこもりから脱するには大きなエネルギーが必要だったと思いますが、どういうきっかけがあったのでしょうか?

 引きこもりを始めて7か月ほど経ったとき、母は僕を「助けたい」という意思をほんの少し見せてくれました。にもかかわらず、結局その後も放置されたままだった。今は理解できるけど、母もクセのある夫や、引きこもってしまった僕のことで疲弊しており、気力がなかったんですよね。でも僕は母に期待し続けた。やがて、「引きこもりが長引けば長引くほど、社会復帰は遠のくのに、なぜそのままにしておくんだ」という母への憤りが募っていきました。そして母が居間にいるとわかったタイミングで、「(引きこもっていた部屋の)扉を無理にでも開ける意思は見せてくれよ」という思いから、実家のドアを蹴破ったんです。「扉はこうやって開けるんだよ!」と。そしたら父に警察を呼ばれ、病院に強制的に入れられそうになった。それが嫌ならば窓から飛び出してホームレスになるしかない、という究極の状況になったんです。引きこもりを維持できなくなった。だったら第3の道として、母に寄り添っていながら生きていこうと。自分ばかりが傷ついていたと思っていたところに、母も傷を負っていたんだと気づいてしまったんですね。だから部屋を出ようと。

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DOOR 2016 コンクリートに金継ぎ、塗料  「黄金町バザール 2016」では渡辺が蹴破ったドアをコンクリートで再現したものが発表された ©ATSUSHI WATANABE photo by KEISUKE INOUE Courtesy of Koganecho Bazaar

 引きこもりをやめた日(2011年2月11日)、母と対話し、セルフポートレートを撮りました。僕は部屋の外で生きていく上で、漠然と生きることはできない。部屋の外に出るということは、アーティストとして生きるということだから、引きこもっていた7か月半を生産的な時間としないと、それを背負って生きていけない。界隈のアーティストは7か月半分だけ良い作品をつくって、イキイキと生きているわけで......。だからその時間を、制作時間だったのだということにしようと。髪や髭が伸びたこと、部屋が荒廃したことはこの撮影のために必要な役づくり/場づくりだったんだということに、認識を変えてみようと閃いたんです。その瞬間、アーティストとして生きる強いスイッチが入ったんですよね。

──引きこもりをやめたとき、アーティストにならないという選択肢はなかったんですか?

 それはなかったですね。中学時代からの目覚めとして、作品をつくって生きていく以外は選択肢にない。復帰してから引きこもり経験をテーマにした作品をつくりだしたのも、宿命だと思っています。

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ポスター(イエロー) 2014  引きこもりを止めた日に撮ったセルフポートレートをポスターにして発表した。アンディ・ウォーホルの有名な言葉「in the future everybody will be world famous for fifteen minutes.」を引用している
©ATSUSHI WATANABE

──今年、「黄金町バザール」に参加するとともに、初めて横浜市芸術文化振興財団の若手芸術家育成助成にも選ばれました。助成を受けて、今後「こういう作品やってみたい」、「どこかで展覧会をやってみたい」などの将来像はありますか?

 例えば2年後くらいに海外のレジデンスに行きたいなと思っていて、逆算して英語の勉強をしています。あと、来年の8月の個展のタイミングに間に合うように、作品パンフレットバイリンガルでつくれたらなとも思っています。

──昔から海外で作品発表をしたいとは思ってたのでしょうか?

 現代美術家が日本にずっといるのは無理だろうなって。みんなさほど言わないけど、切実だと思いますよ。日本で作品買ってくれる人は限られてる。名前が挙げられるくらいしかいないじゃないですか。資本を持っているトップアーティストたちが、アシスタントを数百人規模で抱えて、どんどんつくりたいものをつくれるのなら、現状、国際舞台では資本力での闘いだとも言えると思っていて......。それこそ実業家の要素なんかも大事かもと思う。いろいろ逆算して考えていかないと、アーティストはアーティストでいられないと思っています。

──次の作品の構想があればお聞かせください。

 例えば3Dプリンターで、自分の実家のかたちをつくって、それを割って壊して直すとか、そういったことを考えています。コンクリートでの立体作品の金継ぎというか......。引きこもりテーマの以前は、1展覧会1テーマ1素材でずっと続けてきましたが、(引きこもり経験をきっかけとした作品は)もうすこし続けてみようかなと思います。だからタイプは全然違うけど、通底してるものはあるというようなインスタレーションのプランとか、映像のプランもいくつかあって、それはふさわしい企画があったときに出していきたいですね。ときには、評価云々は気にせずに、引きこもりを経験した自分だからこそ、つくらざるを得ないものをつくっていきます。

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渡辺篤 「黄金町バザール 2016」設営中の会場にて ©ATSUSHI WATANABE photo by KEISUKE INOUE Courtesy of Koganecho Bazaar

PROFILE
わたなべ・あつし 1978年神奈川県生まれ。2007年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。2009年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修了。主な展示に2014年「ヨセナベ展」(Art Lab Akiba、東京)、同年「止まった部屋 動き出した家」(NANJO HOUSE、東京)など。

関連URL:渡辺篤公式サイト http://www.atsushi-watanabe.jp

工芸とデザインの「境目」をテーマに金沢で深澤直人監修の展覧会

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「ものづくり」としての共通点を持ちながら、異なるジャンルとして区別される「工芸」と「デザイン」。両者の「境目」を探ることをコンセプトに、プロダクトデザイナー・深澤直人が監修する展覧会「工芸とデザインの境目」が、金沢21世紀美術館で開催されている。2017年3月20日まで。

 工芸作家は自身の手でものをつくるが、デザイナーはデザインに徹し、ものをつくらない。できあがったものは、工芸では「作品」と呼ばれ、デザインでは「製品」といわれる。2つのジャンルの間には様々な違いがある一方で、「デザイン的工芸」「工芸的デザイン」といえるような、両方の要素を持つ作品・製品も少なくなく、はっきりとした「境界線」を引くことはできない。

「工芸とデザインに境目はあるか」という問いのもと構成された本展は、「プロセスと素材」「手と機械」「かたち」「経年劣化」「工芸とデザインの境目」の5つのテーマで構成。工芸作家の技と最新のデジタル工作機械、また生み出された作品や製品などを対比的に紹介する。

 監修を務めたのは、国内外で有名ブランドのデザインやコンサルティングを担当するプロダクトデザイナー、深澤直人。それぞれのテーマ内で工芸とデザインをあえて「対立」させる構図をとり、2つのジャンルの境界という「問うてもしょうがない問い」を突きつけて、鑑賞者の価値観を揺さぶることを目指したという。

工芸とデザインの境目
会期:2016年10月8日~2017年3月20日
会場:金沢21世紀美術館
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
電話番号:076-220-2800
開館時間:10:00~18:00(金・土は〜20:00、1月2日・3日は〜17:00)
休館日:月(ただし1月2日、9日、3月20日は開場)、12月29日〜1月1日、1月10日
入館料:一般 1000円 / 大学生・65歳以上 800円 / 小中高生 400円

スティーブ・ライヒと太陽光で写し取る 篠田太郎が個展開催

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MISA SHIN GALLERY(東京・白金高輪)にて、篠田太郎による個展「太陽と富士山とスティーブ・ライヒ」が開催されている。会期は12月24日まで。

 造園を学んだのち作家活動を開始した篠田太郎は、宇宙を含む森羅万象を「人類の営みが共在するような進化する自然として理解する」というテーマのもと、人間と自然の関係性を問い直す活動を展開。近年はテクノロジーが発展した現代の都市環境と人間の関係についての洞察をもとに、インスタレーション作品などを発表している。

 本展では、鉄の化合物である鉄塩の感光性を利用したプリント技法の一種「青写真」で制作された作品を展示する。鉄塩を塗った印画紙の上に富士山の頂上から持ち帰った砂や小石を、下にスピーカーを設置して、ミニマル・ミュージックの作曲家、スティーブ・ライヒの作品を再生。砂や小石を音楽で振動させ、それを太陽の光で感光させることで線や陰影を生み出し、作品とした。

 地球に存在する物質を加工することで成り立つ文明や、そういった営みの根源的な存在といえる太陽の光から着想を得て、地球上の鉱物、音の振動など、すでに存在する元素が化学反応をおこし別の物質に生まれ変わるプロセスの痕跡を、太陽の光で写し取った作品だ。

篠田太郎「太陽と富士山とスティーブ・ライヒ」
会期:2016年11月10日~12月24日
会場:MISA SHIN GALLERY
住所:東京都港区白金1-2-7
電話番号:03-00-0000
開館時間:12:00~19:00
休館日:日、月、祝
URL:www.misashin.com

学生限定の「立体アートコンペAAC2016」最優秀賞が決定

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マンションに常設展示する立体作品を募集する学生コンペ「アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション(AAC)2016」の最優秀賞を、七宝焼きを取り入れた、広島市立大学大学院の古川千夏の作品が受賞した。

 首都圏を中心に不動産開発事業を展開するアーバネットコーポレーションは、「より身近な形でアートに触れる機会を提供し、アートのあるライフスタイルを提案する」という理念から、同社が手がける新築マンションの共用部に美術作品を飾るという取り組みを行っている。その一環として、2001年から若手アーティストの発掘・支援・育成も目的とした、学生限定の立体作品コンペを毎年継続して開催し、今年16回目を迎えた。

 本コンペの特徴は、まず常設展示する場所が、日常生活の空間であり、最優秀賞は買い上げられ、その場所に常設展示されるということ。また1次の書類審査で選ばれた3名は、制作費を提供されて実作し、最終審査を受ける。ある程度の制作費や保管スペースを必要とする、スケールの大きい立体作品をつくりたい学生にとっては自分のキャリアを飛躍させるチャンスにもなっている。

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最終審査会場にて、自作についてプレゼンテーションする古川千夏(広島市立大学大学院 芸術学研究科造形芸術専攻 造形計画研究 金属造形研究室)

 今回1次審査を通過したのは、中尾俊祐(和歌山大学システム工学部)、古川千夏(広島市立大学大学院)、堀田光彦(東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻)の3名。東京藝術大学大学美術館館長・教授で金沢21世紀美術館館長の秋元雄史、アート・コーディネーターの内田真由美、『美術手帖』副編集長の望月かおる、主催会社代表取締役社長の服部信治による最終審査の結果、古川の《GEMME》が最優秀賞に選ばれた。

 大学院にて金属造形研究室に所属する古川は、銀箔で覆った球体上に、七宝による花のモチーフを配した作品を発表。有線七宝技法を基本としつつ、輪郭を形づくる銀線を際立たせた独自の方法を用いている。これまでも七宝焼のオブジェを制作してきたが、ここまで大きな作品をつくったのは初めてだという。今年の展示場所となった東京都台東区蔵前の賃貸マンション「ステージファースト蔵前IIアジールコート」のエントランス付近の共用部は、白い壁面にシルバーとゴールドのラインが入ったデザイン性の強い空間だ。そうした、決められた設置空間の中でも、伝統的な技法独特の淡い色彩や繊細な造形が生きるような意匠が凝らされていた。

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最終審査に残った中尾俊祐《Corona》。中尾は現在、システム工学部のデザイン情報学科4年。普段は空間設計を主としており、立体作品を手がけたのは今回が初めてとのこと
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同じく、最終審査に残った堀田光彦《朝の輝き》。堀田は、鋳金研究分野の修士課程1年。鋳金の技法を使って朝顔の豊かな表現を実現させたその技術力は高く評価された

 最終審査に残った中尾俊祐、堀田光彦の2名も、チャレンジ精神に満ちた力作を提出。野心と制作意欲にあふれる学生たちの、今後の展開に期待したい。 

ART MEETS ARCHITECTURE COMPETITION(AAC)2016
第16回立体アートコンペティション
募集内容:マンションの共用空間に展示するための立体アート作品(テーマは自由)
賞金:最優秀賞(1点)総額 100万円。作品はマンションに常設展示/優秀賞(2点以上)賞金 20万円/入選(数点)賞金 5万円
応募資格:全国の大学・大学院・短期大学・専門学校等で美術、芸術、デザイン、建築、空間演出等を学んでいる学生(研究生含む)のグループまたは個人
募集時期:毎年5月〜7月頃(本年度は募集終了)
審査員:秋元雄史(東京藝術大学大学美術館館長・教授/金沢21世紀美術館館長)、内田真由美(アート・コーディネーター)、望月かおる(『美術手帖』副編集長)、服部信治(株式会社アーバネットコーポレーション代表取締役社長)
*第一次審査で入賞作品と入選作品を数点選出、第一次審査通過者(入賞者)には、補助金20万円が支給され、最終審査日までに作品を制作。最終審査では設置場所のマンションに作品を持参、その場に仮設置をした上で審査を行い、最優秀作品を決定。来年度の募集内容はウェブサイト参照
URL:http://www.urbanet.jp/2016/tabid/510/Default.aspx

フランスのペロタン、2017年春に東京に新スペースオープンへ

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フランス・パリを本拠地に、ニューヨーク、香港、ソウルなど世界各国にギャラリーを展開するペロタンが2017年春、東京・六本木のピラミデビルに新スペースをオープンさせる。空間設計は建築家アンドレ・フー(AFSO)が担当。

 アジアのアーティストとの密接な関係を構築することにおいて、欧米ギャラリーの中ではパイオニア的存在のエマニュエル・ペロタンは、1989年、21歳にしてパリに最初のギャラリーを設立。現在ではパリ市内に4つのスペースを構えており、スペースは合計で2000平方メ--トルにおよぶ。2012年には香港に、翌13年にはニューヨークのマディソン通りに、また16年にはソウルにギャラリーをオープンさせるなど、多国的な活動を展開してきた。

 同ギャラリーでは、村上隆をはじめ、MR.やタカノ綾、加藤泉など日本人作家のほか、ソフィ・カル、ローレント・グラッソ、JR、KAWSなど、国際的に活躍するアーティストを多数取り扱っており、特に村上隆を初めて国外にて紹介したギャラリーとして知られている。今回オープンする東京のスペースは、敷地面積約130平方メートル。2012年よりペロタン香港および、ソウルのディレクターを務める中島悦子、アリス・ルンとともに、 同じく12年よりペロタン香港在籍のステファニー・ヴァイヨンが東京に拠点を移し、ギャラリー運営に携わるという。

 アジアでは香港、ソウルにつづく東京でのギャラリーだが、なぜ東京なのか? あるいは東京における現代美術のマーケット規模についてどのように考えているのか? この問いに対し、ペロタン側は「"アジア"と一括りになりがちですが、同じアジアでも国によって異なるマーケットが存在します。日本では2011年の震災以降、日本人の精神性の高さがさらに文化に反映され、高価値化し、経済も盛り上がりを見せています。それによって、海外からのビジターも増えて、あらためて東京に注目が集まっており、ペロタンをきっかけにして、より多くの方が日本に来ていただけるようになれば嬉しいです」と回答。

 また、2017年春というオープンのタイミングについては、「六本木には世界でもトップクラスの森美術館などがあることもあり、もともと日本でギャラリーを設立するのであれば都内でも多くギャラリーの集まる六本木で、と考えてたのですが、ちょうど今年の7月頃に、現在のスペースが空くというお話を受け、設立する次第となりました」としている。 

 気になるのはペロタン東京で今後、どのような展覧会が開催されるのかという点だ。「日本に関わりのあるアーティストの展示を、できる限り行っていければと思っています。また、日本のための特別なプロジェクトの実施や、ペロタンのファッションや音楽など様々なシーンとの繋がりも生かし、多くのクリエーターたちが集まっている東京でのコラボレーションなども考えています」。

 東京では「Blum & Poe」(2014年オープン)以来の海外ギャラリーとなるペロタン。小山登美夫ギャラリーなどが入居する「complex665」(2016年10月オープン)も誕生し、ますます活気づく六本木でどのような影響を与えるのか、注目が集まる。

ペロタン
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F
総面積:130平方メートル
オープン時期:2017年春
URL:https://www.perrotin.com

アート満載のレストラン「PAVILION」、中目黒にオープン

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遠山正道が代表を務め、スープストックトーキョーなどを展開するスマイルズは11月22日、「中目黒高架下」内にLOVEとARTをテーマにしたレストラン「PAVILION」をオープンさせた。コミッションワークを中心に、数々のアート作品が彩る店内。その見どころをアートコレクターとしても知られる遠山に聞いた。

「PAVILION」は東急中目黒駅の高架下に開業した複合施設「中目黒高架下」内、もっとも代官山寄りの場所に店を構える。入り口は二つ。昼と夜で別々のエントランスが用意され、来店者を飽きさせない工夫が見られる。

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ランチタイムのエントランス。右手にはテイクアウトスタンドも

 ランチタイム用のエントランスから入ると、まず目に飛び込んでくるのが西野達による幅5メートル以上にもおよぶコミッションワーク《What if someone finds out?》(2016)だ。一枚板でできた大きなメインダイニングを覆うように設置された同作は、街路灯とヴェスパ、そしてむき出しになったコンクリートの土台によって構成されている。天井高5メートルの同店だからこそできる演出と言えるだろう。

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ランチタイムのエントランスから入ると出迎えてくれるのが西野達《What if someone finds out?》。そのスケールに圧倒される

 西野作品はこれだけではない。なんと女性用トイレには西野達の《Stuck It In From Behind!》(2016)が壁から"生えている"のだが、実はこの作品は、男性用トイレにもつながっている。アートを見ながら用を足す----なかなかない体験がここでは可能だ。

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女性用トイレに設置された西野達《Stuck It In From Behind!》。「トイレからInstagramで投稿したくなる作品」(遠山)

 店内中心にあるバーカウンターの上空では巨大な球体がきらびやかな光を放っている。これは名和晃平によるコミッションワーク《Black Ball》(2016)だ。中心部のライトが内部の鏡面を照らし、鏡面それぞれが互いを反射することで、黒い表面の中に輝きに満ちた空間が生まれる。名和にとってまったく新しい形態の作品となっている。

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照明の役割も果たす名和晃平の《Black Ball》

 またこのほかにも、コーエン・ヤングや、川島小鳥、conix、濱口健など、随所にアート作品が展示されており、どの席に座ってもなんらかの作品が見られるのは嬉しい。

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黒い壁面にかかるのは今年のアートバーゼル香港で購入したというコーエン・ヤングの《Study for aMirror #4》(2016)
pav11.jpg男性用トイレ内には濱口健の《Imaginary Advertising #8》(2011)(上)と《Imaginary Advertising #9》(2011)(下)が隠れるように展示されている
pav8.jpg50メートルの回廊に置かれた大西伸朗《dramukan》(2013)。土台に置いたことでメディウムの透明感が際立っている

 なおディナータイムの入り口となるのは、なんと全長50メートルにもおよぶ回廊。ここには大西伸朗の《doramukan》(2013)が鎮座するほか、サカナクションの山口一郎が作業机として使っていたという大型デスクが、ウェイティングカウンターとして置かれているので、要チェックだ。

 現代美術が凝縮された"アートレストラン"とでも言うべき「PAVILION」。遠山はなぜこのような店をオープンさせたのか。「海外からコレクターが来たときに、連れて行ける場所がなかった。我々がロンドンに行くと、Tramshed(ダミアン・ハーストの巨大なホルマリン漬け作品《Cock 'n' Bull》が店内の中央に展示されている)についつい行ってしまう。そういう感じで、海外や国内から東京に来た誰かを連れて行きたくなるような場所になるといいな、という思いがあった」。

 今後、12月には品川にオープンするスープストックトーキョーの和風版である「おだし東京」にも作品を展示するという。また、アート作品からインスピレーションを受けたコンセプトの店をつくることも視野に入れていると語る遠山。コレクターであり、経営者である彼だからこそできる発想で、アートと食がどのようにつながっていくのか楽しみだ。

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「PAVILION」で使える専用通貨「ROMAN」(中央)。セルフワインバーやROMANでしか購入できないメニューなどエンターテイメント要素も盛り込まれている。コインに彫られているのは遠山正道の横顔
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もちろん料理のクオリティにも注目。手前はテイクアウトもできる「アマゾンの野生のカカオのガトーショコラ」と「ほぼ黄身(君)のプリン」
PAVILION
住所:東京都目黒区上目黒1-6-10 中目黒高架下
電話番号:03-6416-5868
営業時間:月〜金 11:30~15:00/17:00〜26:00、土 11:30〜26:00、日 11:30〜21:00
定休日:無休(年末年始をのぞく)
座席数:70席(店内48席、テラス22席)
URL:http://www.pavilion-tokyo.com

三菱一号館美術館でルノワールと梅原龍三郎の「師弟展」開催中

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近代日本の洋画界を牽引し「画壇のライオン」と呼ばれた梅原龍三郎と、フランスの印象派を代表する画家で、梅原の師でもあったピエール=オーギュスト・ルノワールの展覧会が、三菱一号館美術館(東京・丸の内)で開催されている。会期は2017年1月9日まで。

 1888年生まれの洋画家・梅原龍三郎が印象派の巨匠であるルノワールに出会ったのは、彼がパリに留学した翌年の1909年。梅原は20歳、ルノワールは67歳であった。当時、ルノワールはアンリ・マティスやピエール・ボナールなど、年下の芸術家の訪問を受け入れていたという。

 ルノワールを師と仰ぐようになった梅原は、アトリエに通って制作を見学するだけでなく、彼との対話からも多くを学んだ。帰国後は、桃山美術や琳派などの日本の伝統的な絵画様式と、ヨーロッパで学んだ油絵を融合させた独自の画風を確立し、日本近代洋画の巨匠となる。帰国後の作品にも、モチーフ選びなどにルノワールの影響が見て取れるという。

 ルノワールの死後、ギリシャ神話の一場面を描いた作品《パリスの審判》を模写した梅原。2人の師弟関係に着目して近代美術の東西交流を紹介する本展では、ルノワールの《パリスの審判》(1908、三菱一号館美術館寄託)と梅原の《パリスの審判》(1978)を同時に展示する。ほかに、梅原が蒐集した作品や、梅原と親交があった画家たちの作品も紹介。

拝啓 ルノワール先生─梅原龍三郎に息づく師の教え
会期:2016年10月19日~2017年1月9日
会場:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、1月4日〜6日は〜20:00)
休館日:月、2016年12月29日〜2017年1月1日
入館料:一般 1600円 / 大高生 1000円 / 小中学生 500円
URL:http://mimt.jp/renoirumehara/

東松照明、石内都らがURANOで「核」がテーマのグループ展

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東京・天王洲に新スペースをオープンしたURANOにて、グループ展「Unclear nuclear」が開催される。原爆や原発などの「核」をテーマに、国内外で活動する7人の作家が作品を展示する。

 コレクターの島林秀行がキュレーションを行う本展には、新井卓、石内都、河口龍夫、高嶺格、東松照明、潘逸舟(ハン・イシュ)、山田周平の7人が出品。1930年生まれの故人である東松から1987年生まれの潘まで三世代にわたって、広島・長崎への原子爆弾投下や、福島第一原子力発電所の事故をはじめとする、核にまつわる問題を作品化している作家が参加する。

 世界最古の写真技法・ダゲレオタイプを独学で習得し、作品を制作する新井卓は、240枚のダゲレオタイプで原爆ドームを構成した作品などを発表。1960年代より作品を発表し続けている、戦後の日本の美術を代表する作家のひとりである河口龍夫は、福島の原発事故後に制作した新作を展示する。会期は11月26日〜1月7日。

Unclear nuclear
会期:2016年11月26日〜2017年1月7日
会場:URANO
住所:東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3階
電話番号:03-6433-2303
開館時間:11:00~18:00(金は〜20:00)
休館日:日、月、祝、12月25日〜1月4日
URL:www.urano.tokyo

ついにオープン! すみだ北斎美術館レポート

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江戸時代の人気浮世絵師・葛飾北斎にまつわる美術館「すみだ北斎美術館」が11月22日、東京・両国にオープンした。北斎が生まれた町に誕生した美術館の魅力と、注目の北斎作品をレポート!

くつろげるのに、斬新な空間建築

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3階ホワイエの様子

 立地は隅田川の東側、JR両国駅から徒歩約9分の緑町公園敷地内。江戸時代には弘前藩津軽家の大名屋敷があった場所だ。北斎が生まれたのは目前の北斎通りのどこかであると伝わっていたり、北斎が藩主の依頼を受けて屏風を描いたことがあったりなど、北斎が実際に生活していた記録が残るエリアだ。

 館内は地下1階地上4階建てで、大小2つの企画展示室と常設展示室のほか、図書室、講座室、ミュージアムショップなどが併設されている。設計は妹島和世。SANAAとして金沢21世紀美術館や、フランスのルーヴル・ランスなど多くの公共施設を設計してきた妹島が「すみだ北斎美術館」の設計コンセプトとして据えたのは「街に開き、地域住民の方々に親しまれる美術館」「常に新しいチャレンジを試みた北斎の精神を感じることができる美術館」など。たしかに、デザインは新しく挑戦的、にもかかわらず町の風景がシルバーの壁に映り込み、ゆるやかに溶け込んでいくような柔らかい印象の建築に仕上がった。

北斎の名品が揃う、常設展示室

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常設展示室の様子。左から「冨嶽三十六景」より《凱風快晴》《神奈川沖浪裏》※会期中展示替あり

 所蔵作品の基盤をなすのは、北斎作品収集家であり研究家のピーター・モースによるコレクション。世界から認められた目利きのモースだが1993年に急逝。コレクションの散財を惜しんだ遺族が墨田区の北斎美術館計画に賛同し、約600点近い作品が収蔵された。

 このモース・コレクションはじめ豊富な所蔵作品を展示する常設展示室では、作品鑑賞だけでなく、デジタル・タッチパネル式情報端末で、作品をクローズアップしたり、当時の北斎の情報が出てきたりと、楽しみながら北斎と浮世絵の理解を深める仕掛けも。さらに北斎の住居をほぼ原寸で再現した展示には、北斎と娘・お栄(応為)の人形も登場するなど、遊び心を感じさせる空間だ。

ゆったりと鑑賞できる企画展示室

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企画展示室の様子。真ん中は「冨嶽三十六景」より《山下白雨》 ※会期中展示替あり

 3・4階の2フロアにまたがる企画展示室では、開館記念展「北斎の帰還-幻の絵巻と名品コレクション」展が行われている。常設展示室とは異なる趣きの空間で、作品がゆったりと展示されており、1点1点をじっくりと鑑賞することができる。

 今後は、北斎作品のみならず、北斎を主軸に現代アーティストの展覧会も企画していく予定だ。

開館記念展で初公開の肉筆画絵巻

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《隅田川両岸景色図巻》展示風景。手前は吉原の遊郭を描いた部分

 開館記念展で特に注目したいのは海外に流失し、長く行方知れずであった肉筆画の名品《隅田川両岸景色図巻》の全巻公開。46歳の北斎が、戯作者・烏亭焉馬(うていえんば)の依頼によって描いた本作は、ゆったりとした隅田川を主軸に、現在の品川あたりから遊郭があった吉原までの、両岸の名所が描かれている。

 いまなお流れ続ける隅田川。そのそばの美術館で、北斎が描いた隅田川を鑑賞できるという、粋な機会となった。

隙間からは東京スカイツリー

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3階ホワイエから眺める東京スカイツリー

 現代の東京の新しい象徴となった東京スカイツリーも眺めることができる、すみだ北斎美術館。北斎が生まれ、生活していたこの地で、北斎の作品と思想に出会える、他では味わえない楽しいスポットだ。森羅万象、この世のものもあの世のものも、すべてを描こうとした北斎を21世紀の視点で見つめてみてはいかがだろうか。

開館記念展「北斎の帰還-幻の絵巻と名品コレクション」
会期:2016年11月22日~2017年1月15日
会場:すみだ北斎美術館
住所:東京都墨田区亀沢2-7-2
電話番号:03-5777-8600
開館時間:9:30~17:30
休館日:月(祝日のとき翌平日)、年末年始(2016年12月26日~2017年1月1日)
入館料:一般 1200円 / 高大学生・65歳以上 900円 / 中学生・障がい者 400円 ※小学生以下無料
URL:http://hokusai-museum.jp

美術手帖2016年12月号増刊 葛飾北斎
北斎の名作およそ50点に加え、開館記念展で初公開となる《隅田川両岸景色図巻》を特別付録に。コムアイ(水曜日のカンパネラ)、春風亭一之輔らが北斎ゆかりの地をめぐるなど、当時の最先端ポップカルチャー浮世絵と、絵師たちに思いを馳せる1冊。
編集:美術出版社編集部
出版社:美術出版社
判型:A5判
刊行:2016年11月15日
価格:1620円(税込)


期待のアーティストに聞く! 「アート」を語る伊東宣明

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関西を主な拠点に、人間の本質に迫る映像やインスタレーション作品を発表してきた、1981年生まれの伊東宣明。WAITINGROOM(東京・恵比寿)で11月26日から個展「アートと芸術家」を開催する伊東に、作品について聞いた。

「アート」の奥に翻るリアルとフィクション

 聴診器を通して聞く自分の心臓のリズムに合わせ、赤々とした生肉の塊を叩く《生きている/生きていない》。あるいは「戦時中、髪の毛で代用醤油がつくられていた」という都市伝説をもとに、自身の髪の毛から醤油を生成した《≒醤油》。伊東宣明は「人間の本質的な部分であり、逃げられないもの」だと言う「身体」「精神」「生/死」を軸に、映像やインスタレーション作品を発表してきた。

ato02itoh.jpg伊東宣明 アート(日本Ver.) 2015 シングルチャンネルビデオ、サウンド

 WAITINGROOMにて11月26日から12月25日まで開催する個展では、2種類の映像作品を発表。伊東が各地のアートスポットを巡り、抑揚のある口調で「美術とは何か」を語る自撮りの作品《アート》では、伊東は伝道師のような雰囲気をまとう。「作品の先にある"X"を追い求めるものこそがアートだ、と主張しています」。

 一方、《芸術家》は、作家か「普通」の生活か、その境界に佇む女性が主人公の映像作品だ。歴史上の芸術家の名言で構成された「芸術家十則」を1分以内にすべて絶叫することを伊東により課された女性は、達成までの過程で、時に感情を露わにしながら作家として生きる決心を固めていく。「《芸術家》は、制度によって精神が矯正されること。また、作家の"不自由さ"について表しています」と伊東は言う。これら2つの作品は、異なる「芸術像」を示す。しかし共通するのは、それらがいくつかの事実と矛盾を含んだ「フィクション」であることだ。「美術に対して自分が信じたいこと、あるいは状況への揶揄を込めています」と話す作品は、現実と虚構の狭間をゆらぎ、真意を見え隠れさせる。そして「アーティスト」である伊東本人が作品に登場し語ることで、より複雑に多層化され、見る者の認識をゆさぶる。

文=野路千晶
『美術手帖』2016年12月号「ART NAVI」より)

伊東宣明「アートと芸術家」
会期:2016年11月26日~12月25日
会場:WAITINGROOM
住所:東京都渋谷区恵比寿西2-8-11渋谷百貨ビル3階4B
電話番号:03-3476-1010
開館時間:月 17:00~23:00、木・金・土 12:00~19:00、日 12:00~18:00
休館日:火、水、祝
URL:http://waitingroom.jp/japanese/exhibitions/upcoming.html

「瓦礫」とガラスに垣間みる人間の営為 代官山で藤堂の個展開催

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藤堂の新作個展「瓦礫」が、アートフロントギャラリー(代官山)で2016年11月25日〜12月25日に開催される。

 10年以上ものドイツ・デュッセルドルフ在住経験を持つ藤堂は、自ら世界各地を歩いて収集した石を切断し、その間にガラスを埋め込み磨き上げた石の作品で知られている。ありのままの自然のかたちを人為的に切断し、 光を透過するガラス素材をはさみ込むことによって、石が採取された固有の場所とその土地の経てきた時間と歴史に光を当てようと試みてきた。

 今回は、これまでの自然石や本にガラスをはさむスタイルを発展させ、ベルリンの壁や東北大震災の被災地から拾い出された建物の欠片を素材に、都市や歴史といった文脈から引き離された「断片」を扱った作品を発表。2020年東京オリンピックに向けて再開発が進み、目まぐるしく変化する都市・東京から着想を得た本展は、廃棄物であるとともに歴史の証人ともいえるそれらの「瓦礫」の作品を通して、人類の歴史を多角的にとらえ、人間の営為を浮き彫りにする。

藤堂「瓦礫」
会期:2016年11月25日~12月25日
会場:アートフロントギャラリー
住所:東京都渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラス A棟
電話番号:03-3476-4869
開館時間:11:00~19:00
休館日:月休
URL:www.artfrontgallery.com

日常を切り取る森千裕の新作個展「テニス肘」がサトコオオエで

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ドローイング、写真、立体などメディアを横断的に使った作品を制作している森千裕の新作個展「テニス肘」が、サトコオオエコンテンポラリー(東京・清澄白河)で、11月26日より開催される。

 個展タイトルの「テニス肘」とは「テニスのストロークを繰り返し行なったことで肘が痛くなる障害」のこと。中年以降のテニス愛好家に多く、リタイア後に急にテニス始めた世代が多く抱える疾患で、現代社会の様相を暗示している。その他、自身の作品に共通する、スポーツ、身体、不穏な病気、そして言葉の接続や響きのおもしろさ、といった意味がこのタイトルに込められている。

 森は、都市と人間社会の鋭い観察によって現代の日本社会が抱える問題を、繊細かつ大胆にユーモアを交えて表現しようと試みてきた。その作風は日常的に描き溜めた大量のドローイングを中心に、絵画、写真、立体、映像など多岐にわたり、親しい人との会話のなかで発せられた言葉や広告の文字やロゴといった断片も作品において重要な役割を果たしている。

 本展は、大型の絵画作品3点を含む、写真、立体で展示空間を構成。あわせて初のフォトブックとなる『モリサッシ1』も刊行される。

森千裕「テニス肘」
会期:2016年11月26日~2017年1月21日
会場:Satoko Oe Contemporary
住所:東京都江東区白河3-18-8 第二杉田ビル1階
電話番号:03-5809-9517
開館時間:12:00~19:00
休館日:日月祝休(冬期休廊 12月23日〜1月9日)
URL:http://www.satokooe.com/


【関連イベント】
オープニングレセプション
日時:11月26日 17:00~19:00

トーク・イベント
日時:12月10日 17:00-18:00 島敦彦(愛知県美術館館長)× 森千裕

解析される「レター」 中尾拓哉が見た大山エンリコイサム

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東京・南麻布のTakuro Someya Contemporary Artにて、大山エンリコイサムによる国内初個展「Present Tense」が開催された(2016年8月20日〜9月24日)。グラフィティ文化の資格言語をモチーフとしたシリーズの新作が発表された本展を、中尾拓哉がレビューする。

中尾拓哉 新人月評第8回
文体とスタイル
大山エンリコイサム「Present Tense」展

 そこかしこに散らばる落書きに、一定のルールを読み取るとき、視界は一変する。メッセージがあるわけでもない「からっぽの記号」を集合的な意味とする、グラフィティ文化の視覚言語を構造化し、大山エンリコイサムの「クイック・ターン・ストラクチャー(QTS)」は生まれている。  QTSは、グラフィティ・ライターが文字によって造形の独創性を競う「レター」に依拠しつつも、文字としての拘束は外される。それが「からっぽの記号」を推し進め、いっそう意味を持たない線形で構想されたにせよ、大山のスタイルとしてすでに十分に認知されていよう。ゆえに、その一定のかき方によって、今なお解体し続けているのは「バックグラウンド」である。大山のQTSはメディアを問わず拡散されているのだ。

20160904_001_RR60.jpg大山エンリコイサム FFIGURATI #133 2014-16 アルミ補強された木製パネル(4枚)にキャンバスをマウント、アクリルエアゾール、アクリルマーカー、墨、ラテックス塗料 183×487.7cm 撮影=岡野圭 © Enrico Isamu Ōyama Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art

 本展の新作において探索される表現を取り出していこう。会場に入ると1.着色されたキャンバス上の偶然的なひび割れを含む「面」が、メカニカルペンシルで慎重に浮かび上がらされたミクロな「線」のうっすらとした連結によって覆い尽くされている。2.肩を中心としてかかれた回転する「線」すなわち円が、エアブラシの微細な飛沫で塗りつぶされた「面」のマットな連結によってスクラッチされている。3.同じく肩の回転、あるいは手首のスナップで引かれたOやSのような筆跡の上に散らばる「点」が、角度のついたフィルを持つ84の小さな「立体」の星座にも似た連結によって多方向化されている。

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《FFIGURATI #133》(2014-16)のクィック・ターン・ストラクチャー部分 撮影=岡野圭 © Enrico Isamu Ōyama Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art

 これらは一次元の線が、平行する線から二次元性を獲得し、その面の接合から三次元の形態をつくるものである。線形の運動体は末端をスピードで歪ませたキューブで象られ、その奥行は不可能図形として本来結合しないはずの方向へとねじれる。こうして線、面、立体的に拡散するQTSが、それぞれ面、線、点的に収束されている。これら3つの観測位置において、2つのベクトルをもつ起点と終点を互いに遡行させれば、大山の線的な思考が、手の生み出す駆動と制動によって、精緻になぞられていることがわかる。

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大山エンリコイサム FFIGURATI #138 2016 木製パネルにキャンバスをマウント、 ラテックス塗料、クラックルメディウム、シャープペンシル 50.5×40.5cm 撮影=岡野圭 © Enrico Isamu Ōyama Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art

 ペンシルのスクライブ、マーカーのドリップ、エアゾールの噴射と、あらゆる線形が、運動とスピードとして解析されている。ストリートの特殊な空間に開かれているグラフィティを、別のルールをもつアートへと適切に解体し、再構築することには、きわめて厳密な操作が求められる。しかし、かつてレターとバックグラウンドのためにあった「かく」ことは、グラフィティにも、アートにも編み上げられないトランスフォームを繰り返し、かついずれのコンテクストをも決してないがしろにせずに、そこで絡まる回線を接続し直そうとするためにある。このような思考の経路をたどれば、容易に判読させない文字の形態化であるレターのあり方は、バックグラウンドの深くから入り組むことになる。絵画空間に浮き沈みする、あまりにグラフィティ的な線形は、文字以前にある視覚言語と連動した文体となって、大山のスタイル、すなわちQTSを、身体的、そして造形的な現在時制へと置いたまま、生態的に行き交わせる根拠をつくり出しているのである。

PROFILE
なかお・たくや  美術評論家。1981年生まれ。最近の寄稿にガブリエル・オロスコ論「Reflections on the Go Board」(『Visible Labor』所収、ラットホール・ギャラリー、2016年)など。

『美術手帖』2016年11月号「REVIEWS 10」より)

大山エンリコイサム「Present Tense」
会期:2016年8月20日〜9月24日(終了)
会場:Takuro Someya Contemporary Art
大山エンリコイサムは1983年東京生まれ。2007年慶応義塾大学環境情報学部卒業、09年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。現在ニューヨーク在住。主な個展に14年「クイック・ターン・ストラクチャー」(ニュージャージー・シティ大学)や15年の「インプロヴァイズド・ミュラル」(チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ、ロンドン)、「素数のように」(大和日英基金、ロンドン)など。本展は大山の国内初個展で、新作8点で構成された。

貧弱なキャラクター彫刻が生み出す世界観 山下拓也個展が開催

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段ボールやゴミ袋、ビニールといった素材を活用し立体作品を制作する山下拓也の新作個展「弱弱様Ⅲ」が、11月26日よりTALION GALLERY(東京・目白)にて開催される。

 1985年三重県生まれ、名古屋市在住の山下拓也は、展示空間や素材の条件を利用し、巨大なマスコットや脈略のないキャラクターをモチーフとした、大きなスケールのインスタレーション作品を制作。その不気味かつ滑稽な作風で知られている。

 近年では、《Sham六(六甲山の閉鎖されている六甲オリエンタルホテルのカーテンと装飾品で愛知万博アイルランド館のマスコットであるシャムロックの彫刻を制作する。)▷》(2015)を「六甲ミーツ・アート芸術散歩2015」で、紙を素材に蛍光塗料で彩色した彫刻を暗室に設置した《T.N.O.T.G(        !)②》(2016)を「京都版画トリエンナーレ2016」で展示するなど、さまざまなグループ展に参加している。

 本展は、紙やベニヤ板など薄手の素材を用いながらキャラクターの非自立性に着目し、「貧弱な彫刻」「ゾンビのような彫刻」「彫刻の文脈的・物理的に自立・自律いえない彫刻」というテーマで新作を発表。

山下拓也 「弱弱様Ⅲ」
会期:2016年11月26日~12月25日
会場:TALION GALLERY
住所:東京都豊島区目白 2-2-1 B1
電話番号:03-5927-9858
開館時間:11:00~19:00
休館日:日月祝
URL:http://www.taliongallery.com/
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