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都築響一が紹介するアンダーグラウンドな九州 「僕的九州遺産」

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『POPEYE』や『BRUTUS』(ともにマガジンハウス)の編集を経て、約30年にわたり現代美術、建築、写真、デザインなどの分野で執筆・編集・制作活動を続けている都築響一。都築によって「九州遺産」に認定されたスポットや人物など、九州のアンダーグラウンドな一面を紹介する展覧会が、福岡の三菱地所アルティアムで開催されている。

 これまで都築は、専門家はもとより一般の人々にさえ見向きもされない、しかしユニークな創作活動や生活様式などに注目して活動してきた。1996年に刊行された、日本各地の秘宝館や観光名所、知られざるスポットをおさめた『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』(筑摩書房)では第23回木村伊兵衛写真賞を受賞するなど、写真家としても高い評価を受けている。

 会場で紹介されているのは、『珍日本紀行』で紹介してきた特異な人物や場所と、都築によって再発見された「九州遺産」の数々。写真やテキスト、映像、実際に各地から集めた立体物やオブジェによって構成される展示会場には、「嬉野観光秘宝館」(佐賀)の展示品を集めた18禁部屋も設けられている。

 「美しくない日本。品のない日本。居心地のいい日本。目の前にある現実をもう少しポジティヴに受け入れることができたら、人生はずっと楽しくなるはずだ」と語る都築。表現活動を通じて日常生活で見落としがちなものごとを新たな角度から見つめ直し、実は私たちの身近に「秘境」が存在するのではないか、と問いかける

都築響一 僕的九州遺産 My private Kyushu
会期:10月1日~10月30日
会場:三菱地所アルティアム
住所:福岡県福岡市中央区天神1-7-11 イムズ8階
電話番号:092-733-2050
開館時間:10:00〜20:00
休館日:10月18日
入館料:一般 400円 /学生 300円

宮島達男の個展が鹿児島で開催中 初公開の新作映像も

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鹿児島県の霧島アートの森で、宮島達男展「生と死ー命のひかりー」が開催されている。宮島の個展は、日本の美術館では6年ぶりの開催となる。宮島の代名詞とも言える、LEDのデジタルカウンターの作品はもちろん、初公開となる映像作品も展示され、宮島の新たな挑戦を目にすることができる。12月4日まで。

 宮島達男は、1988年にデジタルカウンターを使った作品を発表し、同年にヴェネチア・ビエンナーレにも出品して、一躍世界から注目を浴びた。以降、国内外で精力的に作品を制作・発表している、日本を代表する現代美術家のひとりだ。

 宮島のデジタルカウンターのシリーズは、それぞれに異なるスピードで、9から1までの数字を繰り返し刻む。カウントを繰り返すLEDの光は人間の生を表し、その光が消えることは人間の死を意味している。宮島はこうした表現によって連続性や永遠性を示し、人間の普遍的な命について表現してきた。

miya2.jpg宮島達男 Moon in the Ground no.5 2015 Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE

 本展では、こうしたデジタルカウンターを使った作品に加えて、28メートルの壁面に6面のスクリーンが投影される「カウンター・スキン」シリーズの新作映像を公開。メッセージ性の高い宮島の作品に触れることができる貴重な機会だ。会期中には学芸員によるギャラリートークや「七色LEDによるワークショップ」も予定されている。

宮島達男展 生と死―命のひかり―
会期:2016年10月7日~12月4日
会場:鹿児島県霧島アートの森 アートホール
住所: 鹿児島県姶良郡湧水町木場 6340 番地 220
電話番号:0995-74-5945
開園時間:9:00~17:00(入園は16:30まで)
休園日:月休(祝日の場合は、翌日休園)
観覧料:一般 800(600)円 / 大高生 600(400)円 / 小中学生 400(300)円
( )内は前売り又は20人以上の団体料金
URL:http://open-air-museum.org/event/event-34291

【関連イベント】
学芸員によるギャラリートーク
日時:第1回 10月22日 / 第2回 11月5日 / 第3回 11月12日 / 第4回 12月3日 各回13:00〜

七色LEDによるワークショップ
日時:第1回 10月29日 / 第2回 11月26日  各回13:00〜
参加費:300円
定員:各回20名まで(要事前申込、定員になり次第締切)

キュレーター・片岡真実が見た「現代アボリジニ・アート」とは?

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オーストラリアの先住民アボリジニとその子孫であるアーティストたちによって、自らの歴史を再訪するプロジェクトの記録を展示する「ワンロード:現代アボリジニ・アートの世界」展が、全国各地で巡回している。これまで「白人」の視点からしか語られることのなかったアボリジニの歴史を、絵画を中心にさまざまなメディアを用いて迫った本展に寄せて、「アボリジニ・アート」を森美術館の片岡真実が読み解く。

「ワンロード:現代アボリジニ・アートの世界」展
抽象化された文化的記録
片岡真実(森美術館チーフキュレーター)=文

 かつて、ヨーロッパからの入植者が牛を移動させるために切り拓いた、西オーストラリア砂漠地帯の1850キロの一本道。ここでの「白人」との遭遇によって、先住民アボリジニは危機に瀕することになる。「ワンロード」展は、この地の子孫であるアーティストたちが一本道をたどって描いた絵画や資料などから、アボリジニ・アートの世界を見せる展示となっている。私たちはどのような仕方で、アボリジニ・アートへの理解を深めることができるのか。

「キャニング・ ストック・ルート」の歴史を 再訪するプロジェクト

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共同キュレーターのヘイリー・アトキンス(写真上)と「キャニング・ストック・ルート」沿いで描かれた作品群(2007)  Photo by Tim Acker

 アボリジニ・アートの解釈は、それらの作品を展示あるいは鑑賞する場が民族学博物館なのか近現代美術館であるのか、といった文脈からも異なってくるだろう。「現代アボリジニ・アート」と呼ばれているものは、概ねオーストラリア政府が1967年の国民投票を経た改憲によって白豪主義を終えた70年代以降の展開を指す。伝統的には砂や土などの自然素材を使った砂絵やボディペインティングだったものが、71年にアボリジニ指定区のひとつパパンニャでアクリル絵具とキャンバスによる絵画制作が始まり、徐々に各地に拡がった。政府はアボリジニ・アートの産業化を目指し、それが経済的自立を求められたアボリジニたちのコミュニティにとってもひとつの解決策となってきた経緯がある。

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キャニング・ストック・ルート(2007年)  Photo by Tim Acker

 1788年の英国人入植以降、それまで何万年にもわたって、さまざまな自然現象や気候変動を切り抜けて生き残ってきた先住民は、絶滅危機を迎えるまでに迫害されてきた。「ワンロード:現代アボリジニ・アートの世界」展では、失われた歴史のなかでも、とりわけ、オーストラリア西部で100年以上前に牛の輸送路として開拓された「キャニング・ストック・ルート(牛追いルート)」の歴史への再訪を試みたプロジェクトをもとに構成されている。3か所の砂漠をまたぐ2000キロ近いこのルートは、開拓者アルフレッド・キャニングにちなんで命名され、"正統な"歴史ではオーストラリア開拓史を象徴するものとして肯定的に語られてきた。ただし、その開拓をアボリジニの側から見れば、伝統的な水源や先祖の霊魂が宿る故郷(カントリー)を無視した一方的なものだった。2007年に実施された今回のプロジェクトでは、かつてそこに住んでいたアボリジニとその子孫であるアーティスト60名が、このルートを5週間にわたって旅し、絵画、写真、映像、オーラルヒストリーなどをとおしてその歴史を再訪し、記録した。このプロジェクトを牽引したオーストラリア国立博物館のマシュー・トリンカ館長は、「これらの作品群はカルチュラル・ドキュメント(文化的記録)だ」と語っていた。彼らの意図が「現代アボリジニ・アート」を、たんに美術の文脈、とりわけ欧米の抽象絵画との比較対照において意味づけるのではなく、本来アボリジニの人々が制作を行っていた独自の文脈へと立ち返り、抽象化されたその記号を読み解く作業にあったことを汲み取ることができる。それは展示方法にも顕著に表れており、絵画やオブジェクトだけでなく、白人がカントリーをヘリコプターで訪問した際のアボリジニの記憶を語るインタビュー映像や、プロジェクトのプロセスを紹介する写真、さらには各々の絵画に描かれた同心円や縞模様などの記号を読み解く注釈図などが提供されていた。

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アボリジニ・アーティストたち。左からノーラ・ウォムピー、ブーガイ・ワイルター、クームパヤ・ギルガバ、ノーラ・ナンガパ

アボリジニ・アートの 評価をめぐる議論

 日本で開催されたアボリジニ・アートの展覧会としては、2008年の「エミリー・ウングワレー展」との比較が可能だろう( *1)。豪州中央部、ユートピアと呼ばれる砂漠地帯で生涯を送ったエミリー・ウングワレー(1910頃〜96年)は、現代アボリジニ・アートを代表するアーティストのひとりだった。展覧会監修者マーゴ・ニールによる論考には、ウングワレーは「高齢であり、黒人であり女性であり、西洋の美術界の慣例である画家としての修業も受けていない。それにもかかわらず、その西洋の美術界において彼女の作品は無条件に受け入れられ、その需要は極めて高く、イコンともいうべきものとして評価された( *2)」と評されている。その理由として、「まったく美学的な特質」とウングワレーの絵画にみられる抽象性が「点描や円の流派においては、コード化されたシステムとしての図像学を介して先祖の物語が探求されたが、対照的に、エミリーの作品はそのような解読が不可能なものだった(*3)」ことを挙げている。実際、点描や編み目状の模様が描かれた絵画は、日本人であれば草間彌生が連想され、欧米の抽象画家としては、デ・クーニング、フランツ・クライン、あるいはブライス・マーデンなどが自ずと考えられるだろう。言ってみれば、パターン、色彩、構成などのフォーマルな比較や分析は十分可能であり、オーストラリアでは逆にアボリジニ・アートに影響を受けた抽象画家の事例も挙げることができる。

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ビリィー・アトキンス(マトゥミリィ・アーティスト) クムプリンティリイの人食いの物語 2008  キャンバスにアクリル絵具 106.5×105.5cm オーストラリア国立博物館蔵
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「ドリーミング」と呼ばれる独自の世界観にもとづく神話が表されている

 同じニールの論考には、こうした他文化からの視点によるアボリジニ・アートの解釈について、対抗する議論が紹介されている。なかでも、美術史家ダニエル・トマスの、「文化的産物をそれに固有の文化的文脈のなかに閉じ込めてしまうことは、愛国主義者であるか、差別主義者でしかない」という視点、美術史家レックス・バトラーが、「アボリジニ美術についてもっとも生産的に語る方法は(略)それに『忠実』であろうとしたり、その元となっている部族的な文脈の詳細を可能な限り再構成したりすることではなく、その芸術をそれ自体からできる限り切り離して、西洋の哲学と批評の理論のもっとも洗練された緻密さに従わせることである(*3)」という視点などは、ウングワレーの実践をより普遍的あるいは西洋美術の文脈に照らして評価することを肯定するものだろう。一方、伝記作家ジェニファー・ビドルが普遍主義者の立場をとりながら、ウングワレーの絵画について、「目に見えるものではなく、経験のようなもの、つまり先祖の力を引き寄せる方法のようなもの (*3)」が描かれていると指摘している点からは、より感覚的な作品の理解を示唆していることがうかがえる。

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ブーガイ・ワイルター(マトゥミリィ・アーティスト) ミニイプルの粘土の窪地 2007 キャンバスにアクリル絵具 92.5×65cm オーストラリア国立博物館蔵
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ジャーカイウー・ビルジャブ(マトゥミリィ・アーティスト) ウィキリイ 2007リネンにアクリル絵具 91.5×62cm オーストラリア国立博物館蔵

抽象化された文化的記録としてのアボリジニ・アート

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マトゥミリィ・ノーラ 2009 リネンにアクリル絵具 324×508cm オーストラリア国立博物館蔵
クームパヤ・ギルガバ、ジャーカイウー・ビルジャブ、ナーマイユー・ビードゥ、テルマ・ジャドサン、ノーラ・テイラー、ジェーン・ギルガバのマトゥミリィ・アーティスト6名による共作

 こうした視点から今回の「ワンロード」展を見れば、ダニエル・トマスが指摘する愛国主義、差別主義ということになるのかもしれない。それでもなお本展の「文化的記録としての絵画」の位置づけに妥当性があるとすれば、そこには文字を持たない人々が継承してきた「ドリーミング」と呼ばれる独自の宇宙観や世界観に向けられた敬意(たとえそれを完全には理解できないとしても)と、多文化主義以降、グローバル・アートヒストリーの時代における視座の差異といった認識があるだろう。展示中、作品脇の注釈図にある、牛追いルート周辺の井戸、岩穴の水場、先祖の精霊の守護神、カントリーに伝えられる物語などの図解は、アボリジニの人々の中で共有されてきた大地とその意味をわかりやすく伝えてくれる。そのなかで、《ミニイプル(七人姉妹)》、《ウィキリイ》、《ミニイプルの粘土の窪地》など、いずれも大地を切り裂く大きな傷跡のように、赤色でキャニング・ストック・ルートが描写されていることは、胸に痛みを覚えるものでもある。絵画は、彼らの家族やカントリーの記憶としての大地そのものなのだ。また、大地のように床面に展示された《マトゥミリィ・ノーラ》では、地層の断面にも見える色彩が鮮やかだが、それは伝統的に大地を焼きながら植生を再生させる多様な段階を描いたものだという。これはマルトゥの女性たち6名が共同で描いた大作であり、制作へ向けたコレクティブなアプローチもまた、アーティストの独自性を前提にしてきた近現代美術の価値観を再考させるものだ。

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《マトゥミリィノーラ》の注釈図。絵画の中で描かれた鍵となる沼地や場所を同定している。

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香川県立ミュージアムでの《マトゥミリィ・ノーラ》展示の様子 撮影=青地大輔

 アボリジニ・アートに限らず、90年代以降は世界各地の多様な歴史的、文化的、社会的な文脈から生産された作品との出会いが日常的だが、われわれは、それらを抽象化された文化的記録として読み解くのか、普遍的あるいは西洋中心の価値観に照らして評価するのか、もしくは感覚的な理解を求めるのか。アカデミックな領域でいえば、文化人類学的解釈と美術史・美学的解釈の差異だろうか。前掲のトリンカ館長は、英国人入植者がアボリジニを迫害したことの背景に、「未知なるものへの恐れがあった」と言っていたが、未知を消去することで恐れから解放されるのではなく、未知なる世界観や宗教観に向けた理解と敬意によって、自身の内面にある恐れから解放されるべき時代を、われわれは生きている。「ワンロード」展は、現代アボリジニ・アートへの理解を、抽象化された文化的記録という側面から深めることで、多様な価値観の学際的、総合的な解釈を可能にさせる好機だといえるだろう。

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《ミニイプル(七人姉妹)》(2007)の前で語らうトリンカ氏(右)と片岡氏(左) 撮影=青地大輔



*1──国立国際美術館(2008年2月〜4月)、国立新美術館(2008年5月〜7月)で開催。
*2──マーゴ・ニール「意味のしるし||エミリー・カーメ・ウングワレーという天才」、『エミリー・ウングワレー展 アボリジニが生んだ天才画家』、読売新聞東京支社、2008年、P16〜17
*3──同上、P17

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PROFILE
かたおか・まみ 森美術館チーフキュレーター。京都造形大学大学院芸術研究科教授。2012 年、第9回光州ビエンナーレ共同アーティスティックディレクター。18 年の第21回シドニービエンナーレのアーティスティックディレクターに就任。

『美術手帖』2016年10月号より)

「ワンロード:現代アボリジニ・アートの世界」
会期:2016年6月9日〜7月19日(終了)
会場:国立民族博物館(大阪)

会期:2016年8月6日~9月19日(終了)
会場:香川県立ミュージアム

会期:2016年10月1日~2017年1月9日 
会場:市原湖畔美術館
住所:千葉県市原市不入75-1
電話番号:0436-98-1525
開館時間:10:00〜17:00(土・休前日 9:30〜19:00、日・祝 9:30〜18:00)
休館日:月休(祝日の場合は翌火曜日)

【関連イベント】
アボリジニ・デイ in 市原湖畔美術館
オーストラリア西砂漠より、アボリジニ・アーティストが来日。ギャラリーツアーやパフォーマンス、ワークショップを開催予定
日時:2016年11月3日 11:00〜16:00
会場:市原湖畔美術館、芝生広場など
※詳細は美術館HPを参照

会期:2017年4月7日~5月7日 
会場:釧路市立美術館
住所:北海道釧路町幣舞町4−28
電話番号:0154-41-8181
開館時間:10:00〜17:00
休館日:月休

【公式ウェブサイト】

 

小山登美夫ギャラリーの新スペース オープニングは蜷川実花展 

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2016年10月に北参道から六本木に移転する小山登美夫ギャラリー。移転後のオープニングを飾るのは、写真家・映画監督の蜷川実花による個展「Light of」だ。会期は10月21日〜12月3日。

 木村伊兵衛写真賞など多数の受賞歴を持ち、現在までに約90冊の写真集を刊行している蜷川実花。近年では、写真家・映画監督としての活動に加え、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事に就任。2016年3月19日〜5月8日に台北当代芸術館(台湾)で開催された個展「蜷川実花展」は約13万人の入場者数を記録し、国内外でますます活躍の場を広げている。

 本展では、花火や野外フェスを被写体に、暗闇できらめく光をとらえたシリーズ「Light of」が発表される。瞬間的に生み出される光と闇の情景を切り取ったこのシリーズは、蜷川作品の特徴ともいえる色彩の鮮やかさに加え、刹那的な美しさを留めようとする衝動を感じさせる本シリーズの作品を収めた写真集『Light of』(河出書房新社)も、今夏に刊行されている。

 本展は、小山登美男ギャラリーがシュウゴアーツ、タカ・イシイギャラリーとともに六本木の「complex665」に移転後、初めての企画となる。新スペースのオープニングにふさわしい、鮮烈な展覧会となりそうだ。

蜷川実花展「Light of」
会期:2016年10月21日~12月3日
会場:小山登美夫ギャラリー
住所:東京都港区六本木6-5-24 complex665ビル2F 
電話番号:03-6434-7225
開廊時間:11:00~19:00(10月21日、22日の2日間に限り11:00〜21:00)

【今月の1冊】バタイユによる「異端」のマネ論、新訳版

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『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から注目したい作品をピックアップ。毎月、図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介しています。2016年11月号では、20世紀フランスの哲学者、ジョルジュ・バタイユが、独自の切り口で近代絵画の巨匠・マネを読み解く『マネ』を取り上げました。

『マネ』
ジョルジュ・バタイユ=著
マネ作品の可能性を汲み尽した比類なき芸術論

 近代絵画におけるマネの革新性とはなんだったか。まずは、絵画が二次元性の媒体であることを強調する平板な塗りと色彩。それから《草上の昼食》《オランピア》で見られるような、日常空間に裸婦を描いてアカデミズムの決まりごとに抗したスキャンダラスな主題。前者は印象派を起源としてグリーンバーグのフォーマリズムにまで連なるモダニズム絵画の還元主義に、後者は古典絵画を典拠とする引用の手法や、ジェンダー論を含むポストモダニズム的な観点と結びつけて語られることが多かった。対して20世紀フランス哲学界の巨頭ジョルジュ・バタイユが『絵画論』(1955年刊、本書はその新訳)で披露するのは、上記のいずれにも属さない異端のマネ論だ。論旨は難解だが、訳者の江澤健一郎による解説やカラー図版も多数収録しており、バタイユ特有の「至高性」などの概念に不慣れな読者にもアプローチしやすい体裁である。

 一読してまず驚くのは、マネの絵画が孕む不穏さの前に踏みとどまるバタイユの眼差しの強さだ。バタイユの炯眼は、マネという一画家の特異性のみならず、近代絵画の誕生期に失われたものと新たに到来したものとを同時に見晴らしている。宗教の権威が失墜した近代以降、人々を脱自の境地に導く宗教的恍惚は失われたが、芸術は宗教に代わって新たな「至高性」の探究を担った。近代絵画が集められた美術館にあっては「聖なるもの」は沈黙しているが、代わりに政治や神話とは無縁の威厳、「あり得る形態の途方もない戯れ」が出来する。そしてマネこそがこの転換期の芸術を切り拓いた先駆者なのだ。マネの絵画は観者の期待を裏切り、不在の感覚を突きつけ、主題の直接の意味を横すべりさせる。この主題破壊の操作をバタイユは生贄を殺害して変質させる「供犠」と同一視する。宗教が力を奮っていた時代とは別の至上の価値が、こうしてマネの絵画に宿る。大仰で危険な香りさえ漂う理論だが、しかし危険のない無味乾燥の芸術から何が得られるだろうか? バタイユのマネ論は現代の芸術の役割を根底から見直させる激しさをもつ。

 論の終盤でバタイユは、マネの魅力は逡巡やためらいに由来するのではないかと主張する。私たちは完成形に至る前の作品が不確実な宙吊り状態にあったこと、画家が制作のさなかで「際限なき偶然」に幾度も直面していたことを想像しなければならない。過渡期の芸術作品こそ「誕生時の薄暗がり」に置き直すべきなのだ。これを踏まえるならば、本書はまさに、マネ作品の可能性を近代絵画誕生期の闇から汲み尽した比類なき芸術論と言えよう。

中島水緒[なかじま・みお(美術批評)]=文
『美術手帖』2016年11月号「BOOK」より)

『マネ』
ジョルジュ・バタイユ=著、江澤健一郎=訳
月曜社|3600円+税

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」のカラー、初の展覧会を開催

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「エヴァンゲリオン」シリーズの生みの親である映像作家・庵野秀明が代表を務める映像企画・製作会社、株式会社カラーが、創立10周年を記念した初の企画展覧会「株式会社カラー10周年記念展 ~過去(これまで)のエヴァと、未来(これから)のエヴァ。そして現在(いま)のスタジオカラー。~」をラフォーレミュージアム原宿で開催する。

 本展では、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの第1部『:序』(2007年)、第2部『:破』(2009年)、第3部『:Q』(2012年)から、初公開を含む約160点の原画や設定資料を展示。また、宣伝物などに使用されたイラストの原画も初展示される。 

 さらに、庵野秀明が脚本・総監督を務め、大ヒットを記録している映画『シン・ゴジラ』(2016年)からは、ゴジラの第2形態・第3形態・第4形態の雛型3種が展示されるほか、株式会社カラー取締役でもある漫画家・安野モヨコが本展のために『監督不行届』番外編として描き下ろした『おおきなカブ(株)』を、スタジオカラーがアニメーション化して上映。

 このほか、2016年9月に期間限定で公開された宇多田ヒカル「桜流し(ヱヴァ:Qバージョン)」のミュージックビデオの特別上映、短編アニメーションシリーズ「日本アニメ(ーター)見本市」の原画・資料の展示なども加わり、総展示数は約300点におよぶ。

株式会社カラー10周年記念展
~過去(これまで)のエヴァと、未来(これから)のエヴァ。そして現在(いま)のスタジオカラー。
会期:2016年11月23日~11月30日
会場:ラフォーレミュージアム原宿
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿6階
電話番号:03-6712-7839 ※10月31日より開設
開館時間:11:00~21:00
休館日:無休
入館料:500円
URL:http://www.khara.co.jp

東京に舞台芸術が集合 「フェスティバル/トーキョー」開幕!

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東京を舞台に、演劇やダンスなど舞台芸術の祭典「フェスティバル/トーキョー(F/T)」が、10月15日に開幕した。第9回となる今年は「境界を越えて、新しい人へ」をテーマに、12月11日まで作品上演やシンポジウムなどが展開される。

 約2か月間にわたり、池袋エリアを中心とする東京の各地で開催される「F/T 2016」。テーマ「境界を越えて、新しい人へ」には、国内外から集合する多様な作品を通じ、国籍や世代、価値観や経験の差異など、無数に存在する「境界」を越えた対話を生み出したいという意図が込められている。

 今年は、「現代演劇界の巨匠」ともいわれる演出家・クリスチャン・ルパの『Woodcutters―伐採―』が日本初上陸。1980年代のオーストリアで実際に起きた事件をモチーフとしたトーマス・ベルンハルトの小説を元に、国家と芸術のあり方に切り込む長編だ。

 ほかに、井手茂太率いるイデビアン・クルーの新作ダンス作品『シカク』、営業中のカフェを舞台に上演されるチェルフィッチュの『あなたが彼女にしてあげられることは何もない』など、同時代の様相を映し出すさまざまな作品が上演される。

 また、現地でのリサーチやアーティストとの交流を経て実施される、アジアの国の文化や社会を紹介する企画「アジアシリーズ」の第3弾「マレーシア特集」では、同国の新鋭アーティストによる作品の上演や、ゲームやプレゼンテーションなどのレクチャーが行われる。映像上映や、上演演目についての展示、トーク、シンポジウムなども。

フェスティバル/トーキョー(F/T) 2016
会期:2016年10月15日~12月11日
会場:東京芸術劇場、あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)、にしすがも創造舎、池袋西口公園、森下スタジオ
問い合わせ:03-5961-5202
URL:www.festival-tokyo.jp

創作活動の裏側に 『美術手帖』11月号新着ブックリスト

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『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から、エッセイや写真集、図録など、注目したい作品を紹介しています。2016年11月号では、アーティストの著書や芸術祭のコンセプトブックなど、表現や創作の背景にある考え方に触れることができる4冊を取り上げます。

蛭川久康 著『評伝 ウィリアム・モリス』

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 アーツ・アンド・クラフツ運動の主導者、ウィリアム・モリス。死後120年を経た今なお、そのデザインと理論は私たちの日常の中に生きている。聖職者を志し、画家に憧れ、数多の詩を書きながら、家具・調度品から本の装幀までをデザインし、晩年は社会主義運動に身を投じた、ヴィクトリア朝のローリングストーン。ラファエル前派の画家たちのミューズであった妻と友人たちとの奇妙な関係も含め、彼が生涯を通じて追い求めた理想を照らし出す。(松﨑)

蛭川久康=著
平凡社|5800円+税

港千尋 編『夢みる人のクロスロード 芸術と記憶の場所』

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 あいちトリエンナーレ2016のテーマは「虹のキャラヴァンサライ」。アートが生む多様性を虹のイメージに託し、様々なボーダーを越境した道への旅を謳うものだ。本書はそのようなトリエンナーレの理念に基づき、「旅と創造」をめぐる文章と写真を集めたコンセプトブック。旧石器時代の洞窟壁画やパレスチナ・ガザ地区を訪れた研究者や文学者によるの旅エッセイ、味覚や色の文化論的考察など、時空を行き来して編まれた文章が感性を刺激してくれる。(中島)

港千尋=編
平凡社|1500円+税

鴻池朋子 著『どうぶつのことば──根源的暴力をこえて』

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 狼の頭部を持った半獣人や人間の手足を持った蜂などが登場し、独自の創造神話のような世界を描き出してきた美術家、鴻池朋子。美術館の壁面を埋め尽くす襖絵の大作や、膨大な数のドローイングによるコマ撮りアニメーションなど、精力的に作品を発表してきた鴻池は、東北の震災以後、これまでのような制作活動を停止し「大いなる空回りを続けた」。その間に彼女が見聞きし触れたものとはなんだったのか。鴻池自身によるエッセイと対談の記録。(松﨑)

鴻池朋子=著
羽鳥書店|3400円+税

小川希 編『アートプロジェクトの悩み 現場のプロたちはいつも何に直面しているのか』

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 地方で開催される大型国際展から自主企画イベントまで。近年、各地で活発化しているアートプロジェクトだが、資金繰りの問題、地域との連携など、現場のプロは常に多くの課題を抱えている。「Art Center Ongoing」を運営する小川希がキュレーター、ディレクター、作家たちと対話し、それぞれの経験談やキュレーション観を引き出したインタビュー集。小川自身がこの仕事の苦労と喜びを知り尽くしていることもあり、核心に迫った質問が多い。(中島)

中島水緒[なかじま・みお(美術批評)]+松﨑未來[まつざき・みらい(ライター)]=文
『美術手帖』2016年11月号「BOOK」より)


上田麗奈と藤ちょこ先生のデジタルペイント講座⑨ 背景編

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初心者にもやさしい直感的な操作が可能な多機能・低価格のペイントソフトとして、多くのクリエイターから支持を得ているペイントソフト「openCanvas」。今夏公開された「Ver6.1.00」では、イベントファイル再生過程をGIFアニメーションとして保存できる新機能が加わるなど、SNS時代のユーザーの要望に応え、さらに進化を続けています。本連載では、声優の上田麗奈が、同ソフトのメインアートワークを手がけた人気イラストレーター・藤ちょこさんにその魅力を教わりながら、オリジナルのデジタルイラストを制作。第7回からは写真をベースに新たな作品に挑戦しています。今回は2点透視の背景を描いていきます。

本格的な透視図も簡単に描けるパース定規

2016年12月の歌手デビューも決定して、ますます人気上昇中の声優・上田麗奈。声優業もそれ以外のお仕事もいつでも全力投球の上田に、講師の藤ちょこ先生も、どんどんデジタルペイントのお役立ちテクニックを伝授していきます。今回の講座も、作業効率と表現効果が上がるちょっとしたコツが満載です。

藤ちょこ(以下、藤):ではさっそくスタートです。第7回で、パース定規を設定して画面上にガイド用の線をいっぱい引きましたよね。この線を引いたレイヤーと第8回で作成した人物のレイヤーの間に新規レイヤーを作成して背景を描いていきます。[新規レイヤーを作成]最初に人物の背後にある柵を描いてみましょう。2点透視のパース定規を表示させた状態で、写真の柵の線をなぞるようにペンツールを使うと、柵に沿った直線が引けます。

上田麗奈(以下、上田):[柵の柱をなぞりながら]んー、柱と柱の境目がわかりにくい......。こんなでいいのかな。

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線画は見やすいように明るい色で。パース定規を設定すると、フリーハンドで引いた線が、簡単に直線となる

藤:大丈夫ですよ。もし見にくい場合は、下の写真のレイヤーの透明度を調整したり、非表示にしたりして、描いた線を確認していってください。

上田:あれ? 柵の上の棒の線を引こうとすると、自動的に(画面と)水平になっちゃうんですけど、どうしたらいいでしょうか。

藤:ペンツールの「描画方法」のウィンドウで直線のマークを選択してください。始点と終点を指定すれば直線が引けます。

上田:なるほど。[柵の上下の棒の線を引く]まわりの壁や柱の線も続けて描いていきますね。

藤:また新規レイヤーを作成して、柵と後ろの壁とは分けておいたほうが、あとの作業が便利だと思います。数が増えてきたので、いま作業しているレイヤーを間違えないようにレイヤー名をわかりやすくするなどして、工夫しましょう。

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ポニーテールでいつもとちょっと雰囲気が違う上田。髪を束ねて、はりきって作画に取り組む

上田:[新規レイヤーを作成して、窓枠や柱の線を引く]あ、また床のタイルの線がうまく引けない。これも直線ツールですね。[床のタイルの線を引く]うん。次はゴミ箱![ゴミ箱用のレイヤーを作成]もしかして、ゴミ箱の上の丸は、この「描画方法」の直線マークの横にある円のマークを使えばラクですか?

藤:そうです! そのマークを選択すると円が描けます。円を描くときは、パース定規を一度非表示にしましょう。

上田:うーん、ゴミ箱上部の楕円のかたちに合わせるのが難しいですね。

藤:円のかたちは補正することができますよ。補正したいパーツを選択した状態で、上のメニューの「レイヤー」から「変形」の「自由な形」を選んでください。画面を拡大して作業するとわかりやすいと思います。「自由変形」ウインドウが出てくるので、かたちを調整したら、最後に「適用」を押してください。

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uedareina09_02.jpg細部の描写は画面表示を拡大して作業。選択した図形を囲むような長方形上に8点の□が表示されるので、□をカーソルで移動させ、自由にかたちを変える

上田:[楕円を変形して写真に合わせる]簡単にできる! 同じように、ゴミ箱の底の部分も描いて......。穴の部分の線はフリーハンドでいいかな。

藤:ゴミ箱が描けたら、ゴミ箱と重なっているうしろの壁の線などを消しゴムツールで消してください。背景の輪郭線が完成したら、一度ファイルを保存しましょう。

uedareina09_03a.jpg背景の写真を非表示にすると、作業の進行状況が確認しやすい。一通りの線を描き起こしたあとは、位置の前後関係に合わせてレイヤーを重ねていく

形状に合わせた塗りつぶしのツールを選ぶ

背景の輪郭線を描き終わり、次は色塗りの作業。最初に柵の部分を塗っていきます。前期の講座での塗り分け作業(第3回)と異なり、塗りつぶす対象が幾何学形態の場合は、いくつかのツールを組み合わせて作業効率を上げることが可能です。

藤:柵の柱は、ツールウインドウの黒い四角のマーク、「図形塗りつぶし」ツールを使って、細い長方形を描いていくとラクだと思います。もとの写真を参考に、隙間以外の部分を塗っていきます。

上田:......[図形塗りつぶしツールで柵の柱を一本一本描いていく]......

開発チーム(以下、開発):第5回の講座もそうでしたが、背景を描いているときは集中するので、室内がしーんとしますね(笑)。

藤:柵の上下にわたっている横の棒は、その形状を選択した状態で、上から塗りつぶすのがオススメです。ツールウインドウの四角いマークのところから「多角形選択」を選んでください。カーソルで、多角形の頂点を指定していきます。最後の頂点のところでダブルクリック。これで任意の図形のかたちに範囲を指定できます。

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「選択範囲」ツールの右隣の小さな▼マークをクリックすると、選択範囲を指定する方法が選べる。「多角形選択」は自由に多角形の範囲を指定できるツール。柵の上の棒(細長い台形)は、頂点4か所を指定。星型やジグザグの形状などを範囲指定するときに便利

上田:[柵の線に沿って細長い台形を描き、図形を塗りつぶす]おー、思い通りに塗りつぶせますね。

藤:いいですね、それっぽくなってきました。空間ができてきましたね。

開発:「空間ができる」ってなんかカッコイイ言い方ですね。

藤:え、そうですか? 絵を描くとき、わりとみんな使いますよ?

上田:芝居における「においがある」みたいな言葉ですかね?

bt:そういう言い回しがあるんですね。業界ごとに独特の表現があって面白いですね。

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収録中の机まわりにはいつもお菓子が。長時間にわたる収録において、上田や藤ちょこの息抜きになっている

筆のタッチを生かして雰囲気のある背景に

パース定規で、かっちりした構図を描いた後は、手書きの線で作品の表情をつくりこんでいきます。直線を多用した建築の描写に対して、有機物である植物や、窓の向こうのかすんだ背景は、筆やスプレーのツールで、やわらかさを出していきます。

藤:では、次の作業に移りましょう。人物の後ろにブラシノキを描くという構想がありましたよね。まずは、撮影した写真の中から素材となるものを選びます。柵の後ろ側から生い茂っているような向きの構図がいいですね。資料ウインドウでは、画像を反転させることもできます。

上田:わー、便利!

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作画しながら、同じ画面上で資料を参照できる「資料」ウインドウ。ボタンひとつで簡単に左右を反転し、構図に合わせることができる

藤:第5回で背景の森を描いたときのように、背景や遠景の自然物は、線画を引かず筆で絵具をのせていくような感じで塗り重ねていくほうが、自然な感じになると思います。資料ウインドウの下のスポイトマークを使うと、資料用の画像の中の色を拾うことができます。

uedareina09_12.jpg資料ウインドウを並べながら、ブラシノキを描く。スポイトツールで、資料ウィンドウの中の色を拾う

上田:[ブラシノキの葉を大まかに描く]こんな感じですか?

藤:はい、そうです。森を描いたときもそうですが、上田さんは、自然物を描くほうが得意そうですね。

上田:[ブラシノキの葉を淡々と塗り重ねながら]直線は苦手です......。

藤:なぜ直線だらけのこの構図に(笑)。

bt:チャレンジャーですよね!

藤:ペン先の色を変えて陰影をつけると、木のボリュームが出てきます。あとは細めのペンも使って、ブラシノキの花のモコモコ感を出せるといいと思います。目立つところ何か所かでいいです。

上田:はーい。[ペンの色を赤くして花の部分を描く]

藤:同じように葉っぱも、少し細かい部分を書き足すといいと思います。

上田:はーい。[細いペン先で細かい葉の部分を描く]

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太いペン先でブラシノキの全体のボリュームを出したあとは、細いペン先で赤い花びらや葉の細部を描き足す

藤:じゃあ、いったんここまでの作業を保存しましょう。

上田:「ファイル」から......「保存」......

藤:壁や窓の桟も、新しいレイヤーに塗りましょう。

上田:はい![塗りつぶしていく]あとは、床!

藤:黒い窓枠の下のレイヤーで作業すれば、その範囲をざっくり指定して塗りつぶすだけで大丈夫ですよ。窓の外の風景はどうしましょうか? 写真に写っているビル群と森を描いてもいいですし、別の風景を描いてもいいですよ。例えば、いまブラシノキを描いたので、窓の向こうにも木を描いて、植物園のような場所にすることもできます。

上田:せっかくなので、いま見えているビル群と森を描いてみたいと思います。

藤:遠くの風景なので、こちらも線画を引かずに、絵の具を塗り重ねていくように描いていきましょう。ちょっと大変かと思いますが、がんばりましょう。

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資料ウインドウに、ベースにしている写真のレイヤーと同じ画像を表示させて、窓の外の風景を描く。細部は資料ウインドウを参照しつつ、うすく表示させた写真をなぞるように描いていく

藤:写真をもとにしていても、自分の手で描き起こすことで、絵に馴染むというか、絵に雰囲気が出てくるんです。

上田:ふぁ〜............疲れた............

藤:あともうちょっとです(笑)。空の部分は、ビル群のレイヤーの下に新しいレイヤーをつくって塗りつぶせばいいと思います。

上田:[空の部分を薄い青で塗りつぶす]んー?

藤:空とビル群のベースの色が同系色なので、ビル群がぼやけてしまいましたね。ビル群の周辺の空の部分に、エアーブラシツールで薄く白を入れると、ビル群が浮き上がってくると思います。

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空の色にグラデーションをつけ、ビル群を立たせていく。レイヤーを分けて作業をすると、こうした小技も活きる

上田:さっすが〜〜♪

開発:「空間ができました」ね。

上田:「空間ができた」〜〜!

藤:では、ファイルを保存して、今回の講座は終了です。おつかれさまでした。

第9回の講座内容を上田麗奈が動画でおさらい!

 第9回「背景編」のイベントファイルを早回しで再生しながら、上田麗奈と藤ちょこ先生が、おさらいします。

 
【上田麗奈と藤ちょこ先生のデジタルペイント講座】
 
第1回 第2回 第3回 第4回
 
第5回 第6回 第7回 第8回
 
第9回 第10回 第11回 第12回
 

PROFILE
うえだ・れいな 富山県生まれ。声優。第5回81オーディション特別賞・小学館賞、第9回声優アワード新人女優賞受賞。アニメ「Dimension W」(2016年、百合崎ミラ役)などに出演。12月21日には、ミニアルバム「RefRain」にて歌手デビューする。特技は水彩画・ボールペン画、趣味は掃除。

ふじちょこ 千葉県出身、東京都在住のイラストレーター。ライトノベルの挿絵やカードゲームのイラストを中心に活動中。「openCanvas」のメインビジュアルを担当。「賢者の弟子を名乗る賢者」「八男って、それはないでしょう!」挿絵、「カードファイト!!ヴァンガード」カードイラストなど。BNN新社より画集「極彩少女世界」発売中。pixiv:藤原 27517  Twitter:@fuzichoco  公式サイト:http://fuzichoco.com

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ペイントソフト openCanvas パッケージ版
ペイントソフト openCanvas
価格:【パッケージ版】通常版 6,800円(税抜)/ガイドブック付き 7,800円(税抜)
   【ダウンロード版】通常版 5,370円(税抜)
URL:http://store.junglejapan.com/ext/oc/

動作環境(※詳細はメーカーのホームページでご確認ください。)
OS:Windows Vista Service Pack2、Windows 7 Service Pack1、Windows 8/8.1、Windows 10
HDD:インストール用に10MB以上の空き容量(画像の保存、作業領域用に2GB以上の空き容量を推奨)
CPU:SSE2に対応するx86互換プロセッサ
メモリ容量:OSが推奨するメモリ容量(32bitは4GB、64bitは8GB以上を推奨)
ディスプレイ:1024×768、True Color(1280x768以上を推奨)
インターネット接続:アクティベーション(シリアルキーの認証)、自動アップデートにはPCのインターネット接続環境が必要
周辺機器:Wacomタブレットからの筆圧に対応、TabletPC APIに対応したタブレットPCからの筆圧に対応
入力対応フォーマット:BMP、JPEG、PNG、PSD、OCI(openCanvas形式)、WPB(openCanvas1.1形式)
入力対応フォーマット:BMP、JPEG、PNG、PSD、OCI(openCanvas形式)
「openCanvas」のご購入は、こちら!

太宰原作、森山未來とエラ・ホチルドの話題作が横浜で再演決定

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「横浜ダンスコレクション2017」のプレ事業として、森山未來とエラ・ホチルドによるパフォーマンス作品『JUDAS, CHRIST WITH SOY ユダ、キリスト ウィズ ソイ~太宰治「駈込み訴え」より~』が上演される。横浜赤レンガ倉庫にて、2017年1月4日〜6日。

 本作は、俳優・ダンサーの森山未來が、文化交流使としてイスラエルに滞在中、気鋭の振付家・ダンサー、エラ・ホチルドと共作したもの。太宰治の短編「駈込み訴え」を題材に、キリストと彼を「裏切った」弟子、ユダの複雑な関係性を表現する。これまでにイスラエルと愛媛、横浜で上演され、話題となった。

 二つの異なる視点、文化、言語が重なり合うこの作品は、上演のたびに更新されていく。今回は、音楽に作曲家・音楽家の蓮沼執太を迎えての再演となる。

 森山は、「作品は、太宰治の小説からエッセンスを抽出していますが、ストーリー通りに展開しているわけでもなく、エラと自分のどちらがユダでどちらがキリスト、と役を決めているわけでもありません。(中略)観てくださった方が何を想像するかはとても自由です。想像する時間を楽しんでほしいなと」と語る。チケットは10月28日発売。

 また、提携企画として、スパイラルガーデン(東京・青山)にて12月27〜29日に、ダンスと音楽のコラボレーションパフォーマンス『SAL -Dance and Music Installation-』 が上演される。エラ・ホチルドと森山未來のほか、青葉市子、阿部海太郎、堀つばさ、吉井盛悟、U-zhaanが参加予定。

JUDAS, CHRIST WITH SOY ユダ、キリスト ウィズ ソイ~太宰治「駈込み訴え」より~
日時:2017年1月4日 19:30〜、1月5日 15:00〜、1月6日 15:00〜(開場は開演の30 分前)
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館 3階 ホール
住所:横浜市中区新港1-1-1
電話番号:045-211-1515
URL:http://www.yokohama-akarenga.jp/

【関連イベント】
SAL -Dance and Music Installation-
会期:2016年12月27日〜29日
時間:各日20:30〜(開場は20:00)
会場:Spiral Garden
住所:港区南青山5-6-23 Spiral 1階
電話番号:03-3498-1171
URL:http://www.spiral.co.jp/sal

杉本博司が設計!MOA美術館が17年2月にリニューアル開館

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1982年に熱海に開館し、現在改修休館しているMOA美術館が、2017年2月5日にリニューアルオープンを迎える。基本設計とデザイン監修を手がけるのは、現代美術家・杉本博司と建築家・榊田倫之が主宰する「新素材研究所」。「創立者・岡田茂吉の願いを継承した美術館」「伝統と現代を融合したデザイン」「素材の見立てによる空間の創造」の3つをコンセプトに、大きく生まれ変わる。

美術品のための設計

 「ロンドンギャラリー(新素材研究所設計、2009年)を見たときから『これは』と思って(杉本への依頼を)決めていた」(内田篤呉MOA美術館長)という今回の改修では、共用部分となるロビーエリアをはじめ、展示室やショップ、カフェなどをリニューアル。古代や中世、近世に用いられた素材や技法を、現代にどう再編して受け継いでいくかという課題に取り組む「新素材研究所」が様々な試みを行っている。

 「スター建築家が設計した世界中の美術館で個展を行い、辛い思いをしてきた。いつか自分で使い勝手のいい美術館を作ってみたいと思っていた」と語る杉本。既存部分との調和や、美術品を最も美しく見せるための空間づくりを意識して進められてきたというリニューアル。その具体的な中身を見てみよう。

前代未聞の黒漆喰

 MOA美術館の改修で、まず注目したいのが来館者を迎えるメインエントラスドアだ。高さ4メートルの巨大なドアは、漆芸家で人間国宝の室瀬和美による漆塗のものへと変更。杉本の「室町時代の根来塗(黒漆による下塗りに朱漆塗りを施す漆器)の風味を出したい。マーク・ロスコの絵画にも似て、東大寺の根来盆にも似て、そのどちらでもないもの」というコンセプト案に基づき、桃山時代に流行した片身替(左右の半身が異なる紋様のもの)のデザインとなる。

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展示室イメージ 基本設計・デザイン監修:新素材研究所|杉本博司+榊田倫之

 大きく変化した展示室には、「左官業界でも前代未聞」(杉本)となる幅20メートルにおよぶ黒漆喰の壁が挿入される。「江戸黒」と呼ばれる深い漆喰には職人の手の跡が残り、それ自体が「素晴らしい抽象絵画のよう。サイ・トゥオンブリーの初期の絵のように見える」(同)。黒漆喰はガラスケースへの映り込みを防ぐほか、展示室に新たな動線を生み出すなど、様々な効果を生みだす。また、今回の改修では野々村仁清の国宝「色絵藤花文茶壺」のための特別な展示スペースも新設。こちらも同様の黒漆喰によってドーム状に囲われ、「黒漆喰の宇宙のような空間」(榊田)になっているという。

 このほか、樹齢数百年の行者杉を使った框(かまち)を配し、畳が敷かれたケースで展示される尾形光琳の《紅白梅図屏風》や、新たに開発された免震機能を備えた畳表、光学設計された照明など、随所に杉本らしい工夫が見られる。

 リニューアルオープンを飾る展覧会は、リニューアル記念名品展+杉本博司「海景ーATAMI」。尾形光琳の《紅白梅図屏風》が1年ぶりに公開されるほか、杉本博司が同作を撮影し、2015年に発表された《月下紅白梅図屏風》も展観。また杉本の代表作である「海景」シリーズから、熱海の海をテーマにした「海景ーATAMI」も展示される。

 杉本は同じ静岡県内で三島に「IZU PHOTO MUSEUM」(2009年開館)を、小田原では「小田原文化財団 江之浦測候所」(2017年秋開館予定)を手がけており、今後は杉本建築の"聖地巡礼"も可能になりそうだ。

リニューアル記念名品展+杉本博司「海景ーATAMIー」
会期:2017年2月5日~3月14日
会場:MOA美術館
住所:静岡県熱海市桃山町26-2
電話番号:0557-84-2511
開館時間:9:30~16:30
休館日:無休
入館料:一般 1600円 / 大高生 1000円 / 中学生以下無料
URL:http://www.moaart.or.jp

【関連イベント】
スペシャルプレビュー 新作能『利休ー江之浦』
企画・監修:杉本博司
出演:浅見真州、観世銕之丞ほか
日時:2017年2月12日 14:00~
会場:MOA美術館能楽堂
料金:A席 12000円 / B席 10000円 / C席 8000円 ※全席指定
チケット発売:2016年11月12日よりチケットぴあにて

写真で「仕掛ける」アーティスト、加納俊輔が個展開催

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Maki Fine Arts(東京・江戸川橋)では、写真を軸とした作品を発表している加納俊輔の個展「コンストラクション断面」を開催している。会期は10月22日〜12月11日。

 加納俊輔は1983年大阪生まれ。2014年に「第8回shiseido art egg」で入選し、開催した個展「加納俊輔 | ジェンガと噴水」(資生堂ギャラリー)で注目を集めた。近年では、上田良、迫鉄平とのユニット「THE COPY TRAVELLERS」としても活動し、アーティストブックも出版するなど、活動の幅を広げている気鋭の作家だ。

 マンガのフキダシや集中線を身の回りのものに重ねた写真シリーズ、実物と写真との境界を曖昧にする立体作品など、何気ないモチーフに「仕掛け」を施し、見る人の知覚を揺さぶる作品を発表してきた加納。「写真を見るということを『イメージを見ること』と捉えるのではなく、『イメージが貼りついた物質を見ている』と捉えなければならないと思っている」と語り、「見る」行為を問い直すような活動を展開している。

 Maki Fine Artsで約1年半ぶり、4回目の個展となる本展は、シンガポールで撮影した工事現場などのスナップショットを用いた「specious notion」シリーズと映像作品を中心に、新作を展示する。12月11日まで。

加納俊輔「コンストラクション断面」
会期:2016年10月22日〜12月11日
会場:Maki Fine Arts
住所:東京都新宿区改代町4 黒川ビル1階
電話番号:03-5579-2086
開館時間:12:00〜19:00
休館日:月、火、祝
URL:www.makifinearts.com

国際芸術センター青森にて、滞在アーティストが「カエテミル」展

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国際芸術センター青森(ACAC)にて、アーティスト・イン・レジデンス・プログラムの成果展が開催中。展覧会タイトル「カエテミル」をテーマに、5人のレジデンス・アーティストが制作した作品を発表<する。12月11日まで。

 国際芸術センター青森は、アーティスト・イン・レジデンス・プログラムを中心事業とした施設として、2001年12月に開館。安藤忠雄が手がけた創作棟、宿泊棟、展示棟からなり、国内外のアーティストが一定期間滞在しながら創作活動を行っている。

 今回は、有川滋男、鎌田友介、台湾出身のリ・イェンファ、フランス出身のジョナサン・シティフォン、ブラジル出身のレナータ・クルスの5人がプログラムに参加。目の前の事象や世界を再編集し、枠組みを再設定することで世界の見方を変えるきっかけを与えるアーティストの仕事に着目するとともに、アーティストが一時的に居住地を変えるアーティスト・イン・レジデンス特有の変化や、外的要素による心身の変化など、さまざまな「カエテミル」(=変化)をテーマにしたプログラムだ。期間中には参加アーティストによるワークショップやレクチャーも開催予定。

カエテミル
会期:2016年10月22日~12月11日
会場:青森公立大学国際芸術センター青森
住所:青森市合子沢字山崎152-6
電話番号:017-764-5200
開館時間:10:00~18:00
休館日:会期中無休
入館料:無料
URLhttp://www.acac-aomori.jp/

【関連イベント】
オープニング・アーティスト・トーク
日時:10月22日 14:30〜16:00
会場:展示棟ラウンジ・ギャラリーA、B
参加料等:無料、申込不要

鎌田友介レクチャー「別の建築史」
日時:10月30日 14:30~16:30
会場:展示棟ラウンジ
参加料等:無料、申込不要

有川滋男ワークショップ「xxはxxのためにxxする」
日時:11月3日 14:00〜16:30
会場:創作棟
参加料等:無料、定員15名(応募締切10月29日、応募者多数の場合抽選)

レナータ・クルス ワークショップ「日用品の物語」
日時:11月12日 10:00〜15:00
会場:創作棟
対象:小学校6年生以上
参加料等:無料、定員10名(申込締切11月7日、応募者多数の場合抽選)

ジョナサン・シティフォン レクチャー
日時:12月3日 14:30〜16:00
会場:展示棟ラウンジ
参加料等:無料、申込不要

リ・イェンファ レクチャー
日時:12月11日 14:30〜16:00
会場:展示棟ラウンジ
参加料等:無料、申込不要

ファミリーツアー
日時:11月6日 11:00〜12:30
会場:ACAC敷地内
対象:歩ける年齢以上のお子さまとご家族
参加料等:無料、申込不要

ギャラリーツアー
日時:12月4日 14:30〜15:30
会場:ギャラリーA、B
参加料等:無料、申込不要

シャネルのカール・ラガーフェルド、銀座で写真展を開催

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「シャネル」のデザイナーとして世界的に知られるカール・ラガーフェルドが、銀座のシャネル・ネクサス・ホールで写真展を開催する。

 ラガーフェルドは1938年ドイツ生まれ。55年にピエール・バルマンのアシスタントとして働き始め、その後62年に独立。以後、数々のビッグメゾンのデザイナーとしてキャリアを積み重ねてきた。その一方、87年からはシャネルの広告キャンペーンを制作するため、プロの写真家としての活動も開始している。

 本展では2008年にヴェルサイユ宮殿で開催された個展のなかから、選りすぐりの作品を日本で初公開。羊皮紙を模した紙を使い、スクリーンプリントの古い技法によって制作された作品は、ラガーフェルド本人の意向により、ガラスやフレームでの額装を行わず、直接壁に貼り付けられ、鑑賞者が紙の質感や、画面の細部まで堪能できるようになるという。

 今回展示される作品は、ヴェルサイユ宮殿を被写体にしたもので構成されており、ラガーフェルドはこの場所について「具現化されたおとぎ話の世界であり、過去のものでありながら私たちの想像力に語りかけてくれるところ」とコメントしている。

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© Karl Lagerfeld
太陽の宮殿 ヴェルサイユの光と影 カール・ラガーフェルド写真展
会期:2017年1月18日~2月26日
会場:シャネル・ネクサス・ホール
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
電話番号:03-3779-4001
開館時間:12:00~20:00
休館日:無休
入館料:無料
URL:http://www.chanel-ginza.com/nexushall

何翔宇(へ・シャンユ)の個展が都内2か所で同時開催

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特定の歴史や社会的条件を示唆しながら現代社会の構造を鑑賞者に問いかける何翔宇(へ・シャンユ)。2014年には上海ビエンナーレ、2015年はリヨン・ビエンナーレに参加し、国際的な活動を続けている彼が、身体感覚に着眼した作品を集めた個展が、Kaikai Kiki GalleryとSCAI THE BATHHOUSEの2か所で同時開催される。

 何は1986年生まれで、「80後 (80后))」とよばれる世代に属している。瀋陽師範大学で絵画を学んだ後、北京とベルリンに制作の拠点を置き、世界各地で展覧会を行うなど、国際的に注目を集めているアーティストだ。

 127トンのコーラを煮詰め、残留物を展示する《Cola Project》や、中国軍が使用する重戦車をなめし革で再現する《Tank Project》など、大規模かつ話題性の高いプロジェクトで知られる何翔宇だが、今回の出展作品でも、「コンセプチュアルでありながら、現代社会へのアクチュアリティを備える」という作風を見ることができる。絵画と映像作品を出品予定。

 なお同時開催となるSCAI THE BATHOUSEでは、足の裏にインクを塗り、飛び跳ねる動きの軌跡を記録した新作《My Feet》や、鑑賞者に与える黄色の効果を探る《Lemon》シリーズを含む平面、立体作品全10点が展示される。

何翔宇「save the date」(Kaikai Kiki Gallery)
会期:2016年10月28日~11月24日
会場:Kaikai Kiki Gallery
住所:東京都港区区元麻布2-3-30 元麻布クレストビルB1
電話番号:03-6823-6039
開館時間:11:00~19:00
休館日:日・月・祝休
入館料:無料
URL:http://gallery-kaikaikiki.com/

何翔宇「save the date」(SCAI THE BATHHOUSE)
会期:2016年10月28日~12月3日
会場:SCAI THE BATHHOUSE
住所:東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
電話番号:03-3821-1144
開館時間:12:00~18:00
休館日:日・月・祝休
入館料:無料
URL:http://www.scaithebathhouse.com

 


「震災と芸術」を考える企画展、川崎市岡本太郎美術館で開催

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東日本大震災から今年で5年。地震が絶えないこの国で、アートができることとは、いったいなんであろうか。そんなテーマを問いかける展覧会「つくることは生きること 震災《明日の神話》」展が、川崎市岡本太郎美術館にて1月9日まで開催されている。

 常に地震の危険と隣り合わせの日本。日々の生活を一瞬のうちに壊し尽くしてしまう震災や、それによって引き起こされる悲しみ、苦しみに対して、アートが果たす役割や意味が問われている。

 本展では、東日本大震災の直後から現在まで、アートで復興を支える活動を続けてきた団体「ARTS for HOPE」(アーツフォーホープ)の活動の記録や、プロジェクトを通じて生み出された作品を展示。また、安藤榮作、片平仁、平間至らアーティストたちが震災後に手がけた作品や、岩井俊二、大久保愉伊による映像作品・映画も紹介する。

 さらに、岡本太郎の代表作である、第五福竜丸事件をモチーフとした巨大壁画《明日の神話》と、岡本が東北で撮影した写真を公開。原爆に対して人々が力強く立ち上がるイメージとそこに込められたメッセージを、岡本と東北との関わりとともに紹介し、危機的な状況のなかで発揮される芸術の力や可能性を考える。

つくることは生きること 震災《明日の神話》展 Art for Life: Earthquake
会期:2016年10月22日~2017年1月9日
会場:川崎市岡本太郎美術館 
住所:神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-5
電話番号:044-900-9898
開館時間:9:30~17:00
休館日:月(1月9日を除く)、11月4日、11月24日、12月29日〜1月3日
入館料:一般 900円 / 大高生・65歳以上 700円 / 中学生以下無料

師匠は仙厓!? 情熱の画家、ピエール・アレシンスキー展

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抽象でも具象でもない自由な世界を表現する画家、ピエール・アレシンスキー。Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)にて、ベルギーを代表する現代美術家のひとりである彼の、日本初の回顧展が開催されている。会期は12月8日まで。

 1927年にベルギーで生まれたアレシンスキーは、48年に結成された前衛美術集団・コブラの運動に最年少メンバーとして参加した。表現主義的な傾向が強く、激しい筆致と鮮やかな彩色を特徴とする同グループは短命に終わったものの、アレシンスキーはその後もこのような表現を継承していく。

 アレシンスキーの造形のルーツにはまた、日本美術がある。禅画の絵師・仙厓を師と仰ぎ、その洒脱な造形に感化された。加えて、文筆家としても活躍し、文字や記号に対して強い関心を持っており、日本の前衛書道家・森田子龍(1912〜98)の即興的な筆遣いにも影響を受ける。55年に日本を訪れた際には 、短編映画『日本の書』の撮影も行った。

 60年代にはマンガの表現から発想し、枠を設定して描く独自の造形様式を生み出すなど、新たな表現にも果敢に挑戦したアレシンスキーは、89歳の現在もなお、新たな作品を発表し続けている。日本初の大規模回顧展となる本展では、初期作から最新作まで約80点を紹介し、アレシンスキーの画業全体を一望できる。禅との関わりも深いため、東京国立博物館で開催中の「禅─心をかたちに─」展とあわせて鑑賞するのもおすすめだ。

ピエール・アレシンスキー展 
会期:2016年10月19日~12月8日
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
電話番号:03-5777-8600
開館時間:10:00~19:00(入館は18:30まで)
※毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
休館日:10月24日
入館料:一般 1400円 / 大高生 1000円 / 中小学生 700円

前澤友作、マーク・ニューソンの記念碑的作品を1.2億円で落札

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公益財団法人現代芸術振興財団は、10月25日にパリで開催されたオークション「ヘヴィー・メタル」セールで、同財団創設者であり、スタートトゥデイ代表取締役の前澤友作が、LOT No.13のマーク・ニューソン《ポッド・オブ・ドロワーズ》を102万ユーロ(約1億1580万円)で落札したと発表した。

 マーク・ニューソンは、ロンドンを拠点に活躍するインダストリアル・デザイナー。2005年には『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出されるなど、現代のデザインシーンを代表する存在として知られている。今回落札された《ポッド・オブ・ドロワーズ》は、ジャン・プルーヴェやシャルロット・ペリアンなどによる、20の金属製の名品が集まるオークション「ヘヴィー・メタル」に、目玉作品として出品されたもの。

 マーク・ニューソンがシドニー美術大学の卒業から間もない1987年に制作し、《ロックヒード・ラウンジ・チェア》に続く、キャリアの最初期に位置付けられる同作。現在ではニューヨーク近代美術館や、パリ装飾芸術美術館にも収蔵されるなど、ニューソンの主要作品の一つに数えられる。ヨーロッパ装飾芸術の流れを汲むニューソン。《ポッド・オブ・ドロワーズ》は、1925年にパリで開催されたアール・デコ博覧会で名匠アンドレ・グルーが「フランス大使夫人の部屋」のためにデザインした西洋だんす「シフォニア」 から着想を得たものだ。マーク・ニューソンを知る上で最も重要な作品であり、またミュージアム・ピースでもある同作の落札について、前澤は次のようにコメントしている。「トトロのようなシルエットに、手作業で張り付けられたアルミの質感がなんともいえない名作。早く撫でてみたいです」。

 前澤はこれまでも自身のコレクションを展覧会で展示しており、同作についても、今後現代芸術振興財団が主催するいずれかの展覧会での展示が予定されているという。

来たれ現代の絵師! 「第8回 アダチUKIYOE大賞」募集中

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伝統木版画の技術を保存し、技術者を育成することを目的に設立されたアダチ伝統木版画技術保存財団が主催する「第8回 アダチUKIYOE大賞」の募集が始まっている。募集対象となるのは「浮世絵」が意味している「現代風の絵」だ。

 浮世絵を今に伝え、草間彌生や山口晃など、現代のアーティストとも積極的にコラボレーションするなど、浮世絵の世界を更新し続けるアダチ版画研究所は、1994年に「アダチ伝統木版画技術保存財団」を設立。同財団が2009年に立ち上げたのが「アダチUKIYOE大賞」だ。

 同賞では、若手の摺師・彫師の技術を活かす場として、「現代の絵師」を募集。応募者の絵が下絵となり、彫師と摺師の手によって木版画となり、現代の浮世絵として誕生する。これまでの大賞受賞者には吉田潤や、大坂秩加のほか、福田美蘭などが名を連ねており、木版に対する関心の高さがうかがえる。

 8回目の今年は、「街」をテーマに作品を募集中。街道が整備された江戸時代にも、日本各地の名所を題材に、数多くの作品が描かれてきた。人々が暮らし、今の時代を映す鏡でもある街」。大きなテーマではあるが、その分自らのイマジネーションを発揮しやすいのではないだろうか。浮世絵には版木と摺りを経ることで生まれる、独特な風合いが宿っている。もともと「現代風の絵」を意味していた「浮世絵」。新しい表現に貪欲な、今を生きる若手アーティストやイラストレーター、デザイナーに挑戦してもらいたい。

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第8回 アダチUKIYOE大賞
応募締切:2016年12月25日 必着
応募資格:国籍、年齢、経歴など一切不問
作品規格:平面作品(デジタル作品不可)23×34.5×1cm以内。未発表のオリジナルに限る
応募点数:1人1点
出品料:無料
審査委員:小山登美夫(ギャラリスト)、三井田盛一郎(東京藝術大学美術学部絵画科准教授)、山下裕二(明治学院大学文学部芸術学科教授)、安達以乍牟(アダチ伝統木版画技術保存財団理事長)
賞:[大賞]1名。賞金50万円
  [優秀賞]1名。賞金20万円
  [佳作]最大2名。賞金5万円
  大賞・優秀賞には賞金のほか、現代の職人の技で作品を木版画として制作(完成した木版画を進呈)
  受賞作品は2017年2月に発表予定。
応募方法:WEBサイト(https://foundation.adachi-hanga.com/award2016/

MoMA、ドコモのEmoji(絵文字)をコレクションに収蔵

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ニューヨーク近代美術館(MoMA)は27日、NTT DOCOMOが開発した絵文字176種を同館のコレクションに収蔵したと発表した。

 この絵文字はNTT DOCOMOが1999年に携帯電話に導入したもの。絵文字は現在「Emoji」として、世界中で受け入れられており、今回の収蔵品はその原点とも言える。開発は95年にNTTドコモに入社した栗田穣崇の監修のもと行われた。栗田は「iモード」生みの親としても知られている。

 この絵文字についてMoMAは、「新たな視覚言語発展の種」としており、「クローバルなデジタルコミュケーションの新しいかたちとして急速に広まった」と評価。同館では今年12月に、この絵文字をフィーチャーしたインスタレーションを展開する予定だという。

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