2016年5〜6月、国内外で幅広く活動する彫刻家・美術家、小谷元彦のアメリカで初となる個展「Depth of the Body」がニューヨーク・チェルシーのギャラリー「アルバーツ・ベンダ」で開催された。同時期に開催されていたアートフェア「フリーズ・ニューヨーク」の会場で作家にインタビューを行い、 今回の展示のテーマ、日本人アーティストの海外での活動、そしてニューヨークのアートシーンについて語ってもらった。
会期:2016年5月5日~6月25日(終了) 場所:Albertz Benda 住所:515 W 26th St, New York NY, 10001 USA 電話番号:+1-212-244-2579 開館時間:10:00~18:00 休館日:日休 URL:http://albertzbenda.com
地主は繰り返し「それは愛ですか」と問うていく。そして「愛が何なのかなんてわからないよ。だから、これが愛だとか、愛じゃないとかは言えないけど、たぶんこれは愛だと思う」と彼女は声を強める。「最後にもう一つ」と地主が問いかけると、「Oh my god!」と口走った彼女はもうこれ以上、愛について思いつかないといった様子で苦笑いを浮かべる。すると、リボンから手を離し、腕を閉じ、心が何かにとらわれたかのように「動きたくないとき」と、そう言ったのだ。「それは愛ですか」と地主が問い返すと、今度は微笑を浮かべ、小さくうなずいた。そのとき彼女と彼女を撮影する地主の頭上を、飛行機が轟音とともに低く飛び、通り過ぎていく。近づいてくる音とホールドされる感覚。無関係に現れているかのような瞬間は収束し、シナリオのない即興の恐ろしい精度によって対話のリアリティーが映し出される。想起の場となるその思いがけない一瞬を、地主は撮ろうとしていたのである。
IMA gallery(六本木)でフランス・リール在住の写真家、石橋英之の個展「Présage / Connotations」が9月24日まで開催中だ。今回が3年ぶりとなる日本での個展に際し、8月26日にはアーティスト、ミヤギフトシと『美術手帖』編集長、岩渕貞哉によるトークイベントが予定されており、「記憶とアート」をテーマに鼎談が行われる。
ファウンドフォトを使ったコラージュやアプロプリエーションといった手法を用いて写真表現を続けている石橋英之は、2013年に個展「Présage」をBTギャラリー(東京)で開催し、その後、同タイトルの写真集『Présage』(IMA Photobooks、2015年)を刊行。2015年にはGallery Vol de Nuits(マルセイユ・フランス)やアムステルダムで毎年開催されるUNSEENフォト・フェアに出展するなど、活躍の場を広げている。