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弘前のレンガ倉庫が美術館に 即興パフォーマンスのプレイベント

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青森県・弘前市の「吉野町煉瓦倉庫」が、2020年の開館を目指し、美術館を核とした施設に改修される。8月21日、プレイベントとして即興アートパフォーマンス「光と音のサーカス」の公演を開催。前日には、舞台美術をつくるワークショップも予定されている。

 吉野町煉瓦倉庫(旧・吉井酒造煉瓦倉庫)は、明治・大正期に酒造倉庫・工場として建てられた建造物。同市出身のアーティスト・奈良美智が3度にわたってこの場所で展覧会を開催しており、市に寄贈した立体作品《AtoZメモリアルドッグ》(2007)も設置されている。この倉庫を改修し、これまで美術館がなかった弘前市の新しい文化拠点とする計画が発表されている。

 今夏、施設開館前のプレイベントとして開催される「光と音のサーカス」は、現代美術作家・小金沢健人、物語音楽家・CINEMA dub MONKS、照明作家・渡辺敬之による特別編成の即興アートパフォーマンス。煉瓦倉庫内の特徴的な黒い壁に囲まれた空間の中で、小金沢が手がける映像、渡辺がつくる光と闇、そしてCINEMA dub MONKSが奏でる音楽のコラボレーションが展開される、新しいかたちのパフォーマンスイベントだ。

 公演当日には改修前の倉庫内をめぐる見学ツアーも実施されるほか、前日にはワークショップも開催予定。年齢を問わず無料で参加できるワークショップでは、布を裂いたり巻いたりして、公演で使われる舞台装飾を完成させる(見学ツアーとワークショップはともに要申し込み)。

「光と音のサーカス」 弘前公演
日時:2016年8月21日 開場13:30、開演14:00
会場:吉野町煉瓦倉庫
住所:青森県弘前市吉野町2-1
出演:CINEMA dub MONKS(曽我大穂、ガンジー西垣)、渡辺敬之、小金沢健人
問い合わせ:0172-31-0195(NPO法人harappa)
入場料:無料
URL:http://harappa-h.org/

【関連イベント】
ワークショップ
2016年8月20日 14:00〜
参加料:無料
定員:20人
申し込み:0172-31-0195/post@harappa-h.org(NPO法人harappa)

吉野町煉瓦倉庫見学会
2016年8月21日 13:00〜、16:00〜
参加料:無料
定員:各回25人
申し込み:0172-31-0195/post@harappa-h.org(NPO法人harappa)

デヴィッド・ボウイのアートコレクション、サザビーズで初公開へ

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2016年1月に他界したデヴィッド・ボウイはミュージシャンや俳優としての顔だけでなく、アート・コレクターとしての側面も持っていた。そのコレクションがロンドンのサザビーズで11月、「ボウイ/コレクター」と題したセールで公開される。サザビーズ・ヨーロッパの取締役会長オリバー・バーカーは同セールについて「多彩で、自由で、飾り気がない。デヴィッド・ボウイのコレクションは、20世紀最大の創造的精神の持ち主の一人の個人的な世界観を垣間見ることができるまたとない機会」とコメントしている。

僕が買わずにいられない唯一のもの、それはアートだ。 デヴィッド・ボウイ

 その言葉どおり、デヴィッド・ボウイの約400点に及ぶコレクションの中には、ヘンリー・ムーアやグラハム・サザーランド、フランク・アウエルバッハ、ダミアン・ハーストなど美術史上、重要な位置を占めるアーティストたちが名前を連ねている。

 なかでもダミアン・ハーストについては、1995年の『モダン・ペインティングス』誌上で、「僕にとっての同時代作家とは、ダミアン・ハーストだ」と語るほど称賛しており、『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューでは「ハーストは別格だ。彼の作品はとても感情的で主観的で、彼自身の個人的な恐怖心ー死への恐怖がとても強いんだねーと深く関わっていて感動的だと思う。浮ついたものだとは全く思わない」とコメントを残している。

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ダミアン・ハースト Beautiful, Shattering, Slashing, Violent, Pinky, Hacking, Sphincter Painting 1995
予想落札価格25〜35万ポンド(約3375〜4725万円)©Sotheby's 

 また、ボウイはアウトサイダー・アートやシュルレアリスム、アフリカ現代美術にも関心を持つとともに、エットレ・ソットサスと彼の率いたデザイナー集団メンフィス・グループの作品も集めており、領域の広さが感じとれる。作品の分野も絵画、素描、立体、版画、写真と多岐にわたっているのも特徴だ

 このボウイ・コレクションについて、遺産管理者は「デヴィッドのアート・コレクションは、個人的な興味から始まり情熱によって形成されたものです。彼は、コレクションの(美術館などへの)展覧会貸し出しを惜しまず、いつでも協力的で、作品を他の人と分かち合うことに喜びを感じてもいました」とし、「特に個人的な思い入れのある作品は、今後も遺族の手元に残ることになりますが、今回の出品作品が、より多くの人に楽しまれる機会を持ってもらうことは何よりだと思います」との談を出している。

 オークションは11月10日と11日にロンドンのサザビーズで開催されるが、それに先立ち世界各地で下見会が開催。ロンドンは既に終了しているが、今後はロサンジェルス(9月20日・21日)、ニューヨーク(9月26日〜29日)、香港(10月12日〜15日)へと巡回する。また内覧会は11月1日〜10日にサザビーズ ロンドンで開催される。

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ジャン=ミシェル・バスキア Air Power 1984
予想落札価格250〜350万ポンド(約3億3750万〜4億7250万円) ©Sotheby's
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フランク・アウヘルバッハ Head of Gerda Boehm 1965
予想落札価格30〜50万ポンド(約4050〜6750万円) ©Sotheby's

小谷元彦、NY初個展。「海外で個展をする事」気概を語る!

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2016年5〜6月、国内外で幅広く活動する彫刻家・美術家、小谷元彦のアメリカで初となる個展「Depth of the Body」がニューヨーク・チェルシーのギャラリー「アルバーツ・ベンダ」で開催された。同時期に開催されていたアートフェア「フリーズ・ニューヨーク」の会場で作家にインタビューを行い、 今回の展示のテーマ、日本人アーティストの海外での活動、そしてニューヨークのアートシーンについて語ってもらった。

チェルシーで個展を開催するということ

 これまでに日本国外での展示を多く経験してきた小谷だが、意外にもアメリカでの個展は今回が初。会場は、世界中から多くのアートコレクターが集まるニューヨークのアートシーンの中心部、数百件のギャラリーが立ち並ぶチェルシー地区。著名アーティストを擁する有力ギャラリーが集結するこのエリアで個展を開催することは、アーティストたちにとって格別の意味を持つ。

 加えて、会期となった5〜6月は、ニューヨークのアートシーンにおいて特に重要な時期とされている。5月初旬に多くのアートフェアが市内で開かれるのに合わせ、国内外からたくさんのコレクターたちが集まる。ギャラリーにとっては新しい顧客を獲得する絶好の機会となるため、力の入った展示が多く開催されるのだ。今年はアニッシュ・カプーア、リチャード・セラ、シグマー・ポルケなどのメガギャラリーの企画展示が注目を集め、週末のチェルシーは盛況となった。一方、アーティストにとっては、このシーズンの企画で目立つのは難しい。小谷にとっても、プレッシャーを感じながらの個展開催となったと言う。

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小谷元彦 Skeleton 2016 Courtesy of Albertz Benda

喪失、再生と日本人の精神性

 「大きな喪失を経験した人間はどう回復していくか」をテーマとした今回の個展は、彫刻とビデオの作品がおよそ半分ずつの構成。耳、手、内臓、骨、足など身体の一部分がモチーフとなった作品が並び、展示全体で人間の全身ができ上がるようなイメージになっている。

 制作活動を始めた頃から小谷は、「ファントム・リム(幻肢)」と呼ばれる現象に興味を持ってきた。これは、事故などで手や足を失ったあとに、その部分がかゆくなったり痛むような感覚を通じ、失われた部分がまだ存在するような錯覚を起こすこと。 大きなロスをしたあとに新しい感覚を手に入れ、自分を変化させ新しいかたちで生きていく。「日本人は、そういうことをずっと繰り返してきた民族」と語る小谷は、喪失から再生に至るプロセスに大きな意味を見出している。そして2011年の東日本大震災のあと、この思いはさらに強くなったと言う。

 日本では昔から、災害によって壊滅的な被害を受けるたび、残されたものを利用しながら再生することを繰り返してきた。そのなかには、火事で焼け残った頭部に新たな体を接ぎ合わせて再建した仏像のような、一見グロテスクなものも多くある。小谷は「再構築を繰り返しながら、ぎこちない姿をした新たな存在を受け入れていく寛容さが、日本の精神性の根底に培われてきたように感じる」と話す。制作を通じて表現していきたいのは、そういった「日本の本質に関わるような部分」でもあると言う。

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背骨のようにも、内臓のようにも見える小谷元彦の彫刻作品《New Born》 (2016) 
Images courtesy of Albertz Benda

街が生む、作品のスケール感

 巨大作品ブームといわれる昨今。インタビューの場となった「フリーズ・ニューヨーク」のアートフェア会場には、比較的こじんまりとした作品が多く見えたが、アーティストの立場からみると、このような空間でコンパクトに見える作品も決して「小さく」はないという。「日本では、ここに並んでいるようなサイズの作品を制作するスペースを確保すること自体が困難。その点では、日本と海外のアーティストの間には大きな壁があると感じる」。

 チェルシーのギャラリーを見て回った際にも、小谷にとって印象に残ったのは巨大な作品の多さだった。「残念ながら、海外の大きい作品に囲まれると、日本人アーティストの作品は目立たない。日本人は小さく精密につくることは得意だけど、大きくするのは苦手なんです」。東京とニューヨークの生活では、普段の視界のスケール感自体が違うため、必然的に生まれる表現のスケール感にも大きな差が生じる。「無理やり大きくした作品は、どこかでボロが出てしまう。大きい作品が流行っているからといって、日本から大きいものを簡単に持ってこれないのも難しいところ」と小谷は話す。

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デミアン・ハーストの作品が並んだ、「フリーズ・ニューヨーク」内のGagosianのブース。中央奥の円形の作品は「スピン・ペインティング」シリーズ

日本人アーティストが抱える「ハンデ」

 また、ニューヨークで日本人アーティストが展示する場合、欧米アーティストの作品を手配するのに比べ、 搬送にかかるコストが大きくなる。言葉の壁も立ちはだかる。 小谷は「多くの日本人アーティストにとってニューヨークは遠い」という。

 それに加え、海外の美術関係者には「日本人アーティストの扱いは難しい」と思われがちだ。その一因は、プレゼンのスキル不足。プレゼンの経験を積み重ねている欧米のアーティストに比べ、わかりやすく自分の作品について説明することができる日本人アーティストはまだまだ少ないのが現状。翻訳・通訳者を介せば意思の疎通を図ることはできるが、「作品を通じて何を伝えたいのか」はアーティストの言葉で発信する必要がある。それが明確になっていない状態で作品を売り込むのは、ギャラリーにとっても至難の技なのだ。

 巨大化し、あらゆる表現が出尽くしたのではないかとすら思えるコンテンポラリー・アート。それでも制作する意義を明確化することが、アートマーケットにおいて重要になってきている。熱心なコレクターはアーティストから直接話を聞いて、もっとアーティストや作品について知りたいと思うもの。小谷もそういった場面を実際に経験し、「英語が拙くても自分で話すのが大事」と感じているという。

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耳の鼓膜をイメージした小谷元彦《Aero Former》 (2013)。お椀型に熱と空気によって作り出した凹凸が見える
Images courtesy of Albertz Benda

ショック・バリューの時代に。武器は緻密な構成力

 小谷は「日本人アーティストは、欧米のアーティストに比べ、緻密で細かい作業を重ね、一定の質を保つ能力に長けている傾向がある。集中力がオフになって表現が散漫になることがなく、作品全体をクオリティのばらつきなく構成できるのが一種の強み」と話す。インパクトが強い作品が多いチェルシーでの個展にも、「しっかり見てもらえば見劣りしないはず」という気概を持って挑んだという。

 最近のニューヨークのギャラリーでは、即時的に注目を集める「ショック・バリュー」の高い企画が続いている。セルフィーが流行し、記念撮影をするために作品に背を向ける人たちの姿も定着してきて、観客が作品を見る時間はどんどん短くなっているように見える。

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小谷元彦《A Cosmic Traveler of Blindness》 (still) (2016) 視覚を失った方とのコラボレーションで、触覚の問題を深海の身体の在り方として捉えた作品。Courtesy of Albertz Benda

 そんななか、小谷の個展では、ビデオ作品に見入って微動だにしない人や、彫刻の細かさに思わず声をあげ、いろいろな角度から精査する人など、作品にじっくり向き合う観客の姿が見受けられた。会場となったアルバーツ・ベンダのオーナー、トーステンも「お客さんたちからかなりポジティブな反応が返ってきている」と手応えを感じていた。

 海外のアートマーケットにおける潮流や、重要とされていることを押さえながらも、それに迎合することなく自分の表現とテーマを貫き、じっくり勝負をする小谷の姿は、日本人アーティストが世界で活躍する可能性を提示しているのではないのだろうか。

小谷元彦 「Depth of the Body」
会期:2016年5月5日~6月25日(終了)
場所:Albertz Benda
住所:515 W 26th St, New York NY, 10001 USA
電話番号:+1-212-244-2579
開館時間:10:00~18:00
休館日:日休
URL:http://albertzbenda.com

アートを台座から考える! 竹岡雄二展が埼玉県内2会場で開催中

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この夏、ドイツを拠点に活動する美術家・竹岡雄二の展覧会「台座から空間へ」が、埼玉県内2つの美術館(埼玉県立近代美術館、遠山記念館)で協同開催されている。作品を「見せること」にフォーカスした同展は、竹岡が永年テーマにしている台座という切り口から、作品が展示される空間・場所・環境について考える。黒川紀章設計の建築と文化財指定の和風建築、2館のそれぞれ魅力的な建築の中で、竹岡作品が来館者を静かに迎えてくれる。夏休みの終わりに、埼玉へアートな小旅行はいかがだろうか。

 そこに本来あるべきはずのものがなく、そこにあり得ないはずのものがある。ところで、そもそも「そこ」は、どのような場所であったか......。
竹岡雄二の作品は、反語的にものを見せ、そのものを取り巻く環境や場所について考えさせる。

 竹岡が活動の初期から制作のテーマとしているのが台座である。彼は台座そのものを作品として見せる「台座彫刻」によって、作品が展示されている空間の意味合いや、作品を成立させる環境を鑑賞者に意識させた。以降、「空間呈示」というコンセプトのもとに制作活動を展開している。

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竹岡雄二 オレンジの台座 2000 個人蔵(埼玉県立近代美術館に出品)
Photograph by Achim Kukulies, Düsseldorf / © Yuji Takeoka, courtesy of WAKO WORKS OF ART

 現在「竹岡雄二 台座から空間へ」を開催中の2館の会場を巡ると、1980年代から現在までの竹岡の作品を通覧できると同時に、竹岡の一貫したコンセプトを、自身の体験として理解することができるだろう。

 古今東西の通例として、台座の上には、崇拝や鑑賞の対象がのっている。台座の上にあれば、それが他のものとは別格の、貴重で高価なものであることが、誰の目にも明らかになる。台座は、その上にのせるものを人々の注視の対象とする一種の装置とも考えられるだろう。竹岡は、何ものっていない台座を、画廊や美術館の空間に造形作品として設置してきた。

 もちろん、竹岡の作品がすべて台座の形をしているわけではない。建築の一部を切り取ったような作品や、家具に模した形態の作品もある。ただし当然ながら、展示空間に設置されたそれらの作品は、どれも建築や家具としては機能しない。支えるもののない柱、遮るものも仕切るものもない壁、保管するものが入っていないケース......。

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左──竹岡雄二 カラヴァッジョ 2007 個人蔵 
右──竹岡雄二 無題 1996 マンツ・コレクション, シュトゥットガルト
ともに埼玉県立近代美術館に出品 Photograph by Achim Kukulies, Düsseldorf / © Yuji Takeoka, courtesy of WAKO WORKS OF ART

 埼玉県立近代美術館というホワイトキューブの中に存在するそれらの形態をまじまじと見つめていると、そもそも「今日、自分は美術館に、何を見ようと思って来たんだっけ?」という奇妙な気分になってくるかもしれない。美術館という施設に、そして台座の上に、私たちは何を期待し、何を想定しているだろうか。鑑賞者も作品も、展示室という「見せる」仕組みの中にいることを強く実感する。

 対して、もう一会場の遠山記念館の遠山邸は住居として建てられた。贅沢な資材と職人技が建物の隅々まで用いられ、いまや文化財にも指定されているように、建物自体がどこをとっても賞玩に値するものではあるけれど、あくまで生活の場として設計されている。畳の部屋にポツンと設置された「台座彫刻」が放つ特別な存在感。ただ、それは異質というよりも、不思議に建物に同化して、あたかもそこで何かの用途を全うしているようにも見える。

 そこに置かれた1点の台座彫刻を見つめることで、周囲の空間や環境に対する意識が芽生える。2会場それぞれの展示から受ける印象の類似と差違とは、竹岡の揺るぎない「空間呈示」というコンセプトを理解する大きな一助となることだろう。

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竹岡雄二 展見 1988 個人蔵(遠山記念館に出品)
撮影:椎木静寧 / © Yuji Takeoka, courtesy of WAKO WORKS OF ART

 今回2館を訪問した際、両館それぞれの学芸員から、展覧会の作品搬入時、監視のアルバイトスタッフや運送会社のスタッフから「この台座の上の作品はいつ設置されるんですか?」という質問があがったという同種のエピソードを聞いた。あまり予備知識を入れずに両館を訪れたほうが、竹岡作品のコンセプトの核心に触れられるかもしれない。

 なお、展覧会内容の予備知識は不要でも、両館のアクセス情報は事前にしっかり確認しておくことをおすすめする。特に、公共の交通機関を利用して遠山記念館を訪問する場合は、バスの運行本数が限られているので計画的に。一方の館の鑑賞券の半券を見せると、もう一方の美術館の観覧料が2割引きになる「タケオカ割」の利用もお忘れなく。8月21日には、埼玉県立近代美術館で同展担当学芸員2名によるトークイベントも開催予定だ。

竹岡雄二 台座から空間へ
会期:2016年7月9日~9月4日

会場:埼玉県立近代美術館
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
電話番号:048-824-0111
開館時間:10:00~17:30
休館日:月休
観覧料:一般 1000円 / 大高生 800円
URL:http://www.pref.spec.ed.jp/momas/

会場:遠山記念館
住所:埼玉県比企郡川島町白井沼675
電話番号:049-297-0007
開館時間:10:00~16:30
休館日:月休
観覧料:一般 700円 / 大高生 500円
URL:https://www.e-kinenkan.com

関連イベント「キュレーターズ・トーク、ノーカット版」
日時:2016年8月21日 13:00〜16:30(30分前開場、入退室自由)
会場:埼玉県立近代美術館 2F 講堂
参加費:無料(定員100名、先着順)

激動の時代に何が描かれた? 広島で「1945年±5年」展 

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 終戦の年である1945年を境に、前後5年間に制作された日本の美術作品を紹介する展覧会が、広島市現代美術館にて開催されている。激動の時代を生きた美術家たちは、どのような表現を行い、どのように社会と関わってきたのだろうか。会期は10月10日まで。

 開戦から敗戦、そして占領統治時代を美術を通じて振り返り、日本の歴史における大きな転換点となった11年間を改めて見つめ直す本展。芸術活動にも様々な規制が及んだ戦時中、戦争協力を求められた画家たちによって、いわゆる戦争画が生み出されたことはよく知られている。本展では、戦争画の紹介にとどまらず、多彩なモチーフや表現方法で時代の空気を映し出した作品を展示する。

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久保守 戦後の風景 1947 東京都現代美術館蔵

 11年間を11章に区切り、油彩画を中心に、約70人の作家による200点近い作品を展示。岡本太郎、小磯良平、東山魁夷、藤田嗣治、松本竣介、水木しげるらの作品が並び、日本美術や戦後文化の歴史に名を残した昭和時代の作家たちの作品を一度に見ることのできる機会ともなっている。

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鶴岡政男 重い手 1949 東京都現代美術館蔵

 時代とともに戦争画に生じた変化を概観し、当時の美術家の心情や、戦争画そのものの役割を観客に問いかけるほか、戦争協力に限られない画家たちの営みを紹介。会期中には関連プログラムとして、特別講演会や学芸員によるギャラリートークも予定されている。尚、本展は2016年5月21日〜7月3日に兵庫県立美術館で開催された巡回展である。

1945年±5年 戦争と復興:激動の時代に美術家は何を描いたのか
会期:2016年7月30日~10月10日
会場:広島市現代美術館
住所:広島県広島市南区比治山公園1-1
電話番号:082-264-1121
開館時間:10:00~17:00
休館日:月曜日(ただし9月19日、10月10日は開館、9月20日は休館)
入館料:一般 1030円 / 大学生 720円 / 高校生・65歳以上 510円
URL:https://www.hiroshima-moca.jp/the1945/

近江商人発祥の地が舞台 BIWAKOビエンナーレ2016開催

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豊臣秀次が築いた城下町「近江八幡旧市街」を舞台に、今回で7回となる「BIWAKOビエンナーレ2016 "見果てぬ夢~Eternal Dream"」が9月17日より開催される。近江商人発祥の地として栄えた江戸時代からの市内街並を歩いて回りながら、気鋭の若手実力派を中心に60組以上のアーティストの作品を見ることができる。

 2001年から始まったこのビエンナーレは、今回で7回目を迎える。会場となる近江八幡旧市街は、豊臣秀次が築いた城下町を基礎に、近江商人発祥の地として発展。江戸期に建てられた町家が軒を連ね、国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている。しかし市内には、放置された多くの空き町家が点在する。BIWAKOビエンナーレは、これらの残された貴重な建物の保存と活用を試みてきた。

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2016年、初参加となる山本基。浄化や清めを喚起させる「塩」を用いた作品。床に巨大な模様を数日から数週間かけて一人で描き上げる。写真は《たゆたう庭》(2013)の「エルンスト・バルラッハ・ハウス,ハンブルク」での展示風景

 はじまりから16年という歳月は、BIWAKOビエンナーレを一つの「作品」へと育んできた。「建物の交渉、作品の制作から展示まで、すべてが一つの作品」と語るのは、総合ディレクターの中田洋子。今年も60数組のアーティストを選定した。その基準は「私自身が感動できるか否か」。作家も大御所というよりは、若手実力派が多い理由は、「無名なのにすごい作品だったら、これまでにない感動を覚えるでしょう」。コンセプチュアルな理論派より、気骨がありコツコツと職人のように積み上げていく作品に惹かれるという。今回、林茂樹、山本基などの作家が新たに加わった。ここから世界へ活躍の場を広げる作家も多い。

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青木美歌《未生命の遊槽》(2010)展示風景。「生命」をテーマにガラスで繊細な造形を制作(2010年、2012年、2014年出展作品)

 鑑賞者は、10数か所に点在する作品を巡るのだが、多くの会場が徒歩2〜3分の距離にあり、散歩コースにもぴったり。美しい町家や由緒ある寺を訪れ、最後に八幡山の山頂にある展望館に足を伸ばせば、碁盤の目の街並みが見下ろせる。土地に潜む気配と作品の融合。この秋、密度の濃い時間を近江八幡で過ごしたい。

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林茂樹 Koz-o type R 2009 Photo by Katsura Endo
やきものの産地に生まれ、セラミック表現の可能性を追求。綿密に計算された技術のもと、立体作品を制作する初参加の林茂樹 

総合ディレクター・中田洋子さんに聞くみどころ

 BIWAKOビエンナーレに来ていただいた方々は、無条件に感動していただけると思います。私はアートとは、言葉や次元を超えて、直接、魂のいちばん奥に届くものであってほしいと願っています。人類は戦争や殺戮を繰り返し、しかし生き続けている。そういった愚かな行為とバランスをとり、拮抗するための「知恵」がアートなのではないか。

 また、BIWAKOビエンナーレは、海外の人たちにも好評です。日本人が積み上げてきた美意識を呼び覚まし、それを誰もが生まれながらにして持っているという誇りを、共有できる場を目指したい。ぜひ、足を運んでいただき、たった一度きりの一人ひとりの生を、言葉ではなく、心で感じ取ってくださればと思います。

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度會保浩《window-earthenware pot》(2014)展示風景。陶板やガラスなどの素材、ステングラスの技法を駆使して、機能を奪われた立体造形物へと変化させた作品

永峰美佳=文
『美術手帖』2016年8月号より)

BIWAKOビエンナーレ2016
"見果てぬ夢~Eternal Dream"
会期:2016年9月17日~11月6日
会場:滋賀県近江八幡旧街
開場時間:10:00~17:00
休館日:木休(木曜祝日の場合は翌日振替、最終週は休みなし)
入館料:一般 2500円【2300円】/ 学生(高校生以上) 2000円【1500円】/ 中学生以下・障がい者 無料 ※【】は前売
URL:energyfield.org/biwakobiennale

【参加アーティスト】
青木美歌、淺野健一、市川平、井上剛、内田望、パンチョ・キリシ、河合晋平、クレメント・ジャンダール、コシノヒロコ、サークルサイド、田中誠人、中川周士、二階武宏、ヨアナ・ハウロット、三木サチコ、南野馨、林茂樹、ガブリエラ・モラウェッツ、八木玲子、山本基、度曾保浩 他

アート・カップル9組による「ニュー・インティマシー」展が開催

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作家を「個人」ではなく「カップル」という新しい関係性で作品を発表する展覧会「NEW INTIMACIES/ニュー・インティマシー」は、アーティストの菅かおると田中和人によって企画され総勢9組の「親密な」カップルが参加している。本展は、巣鴨に移転したXYZ collectiveのこけら落としとして、9月4日まで開催中。

 「新しい親密さ」を意味するタイトルの展覧会「NEW INTIMACIES/ニュー・インティマシー」では、アートに深く関わる2人1組、計9組を招待し、「個人」ではなく「カップル」ならではのコラボレーションから生み出される作品に、新たな価値を見出そうとする。

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菅かおる+田中和人 Memory of Blue Vase (photograph) 2016 Cプリント 56x45.7cm

 「カップル」とは人と人が築く社会の最小単位であるが、本展においてそのかたちはさまざまだ。

 例えば、「一作家の作品制作が一個人に還元、または所有される状態を構造的に回避している」と主張し共同パフォーマンスを行ってきた荒川医は、同じくニューヨークを拠点にし、作曲を中心に活動するサージ・チェレプニンと2007年より断続的に共同制作に取り組んでいる。

 その他、同時代のアートを考える団体「CAMP」の井上文雄と月1回のピクニックを開催する「picniic(ピクニイク)」の永田絢子。ギャラリーMISAKO & ROSENを経営するギャラリスト夫婦、ローゼン・ジェフリーとローゼン美沙子などが参加。多角的なアートへのアプローチや多様な2人の間柄から、アートとの、そして人と人との新しい関係の可能性を体感することができる。

 会場であるXYZ collectiveは、アーティストのCOBRA、松原壮志朗、ミヤギフトシがディレクターを務め運営するアーティスト・ラン・スペースで、今回が巣鴨に移転後初の展覧会となる。なお、開催中は木〜日のオープンとなる。

NEW INTIMACIES/ニュー・インティマシー
会期:2016年8月7日~9月4日
会場:XYZ collective
住所:東京都豊島区巣鴨 2-13-4-B02
開館時間:14:00~19:00
休館日:月火水休
URL:http://newintimacies.tumblr.com/

【参加カップル】
荒川医 (artist) + サージ・チェレプニン (artist)
井上文雄 (CAMP) + 永田絢子 (picniic)
菅かおる (artist) + 田中和人 (artist)
COBRA (artist)+ 八重樫ゆい (artist)
齋木克裕 (artist) + 西脇エミ (artist)
高木瑞季 (olive) + 竹崎和征 (artist)
ニコラス・ガンバロフ(artist) + リサ・ジョー (artist)
パピーズ・パピーズ (artist) + フォレスト・オリーボ (Contemporary Art Daily)
ローゼン・ジェフリー (gallerist) + ローゼン美沙子 (gallerist)

2020年に笑うのは? ワタリウムでナムジュン・パイク展

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「ビデオアートの父」として知られるアーティスト、ナムジュン・パイクの没後10年を記念した展覧会「ナムジュン・パイク展 2020年 笑っているのは誰?+?=??」が、ワタリウム美術館(東京・渋谷)にて開催されている。前期は10月10日まで、後期は10月15日〜2017年1月29日。

 1932年にソウルで生まれたナムジュン・パイクは、1950年に起きた朝鮮戦争をきっかけに日本へ移住し、東京大学で学んだ。卒業後、現代音楽を学ぶために渡ったドイツでジョン・ケージやジョージ・マチューナスらと出会い、フルクサスの活動に参加。1963年に世界初のビデオアートを発表して以後、東西文化の融合や仏教的世界観をテーマに、最新のテクノロジーを用いた作品を次々に発表してきた。

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ナムジュン・パイク ボイス 1988 

 テレビの研究のため日本に滞在し、日本人のエンジニアと共同製作したアートロボット「K-456」によるパフォーマンス「ロボット・オペラ」を発表するなど、日本にゆかりの深いアーティストでもあるパイク。本展では、前身のギャルリー・ワタリ時代より、何度もパイクの展覧会を開催してきたワタリウム美術館のコレクションから、70年代~90年代にかけての代表作、計230点を展示。会場を6つの部屋に分け、ヨーゼフ・ボイスとの共作、未発表の原稿やインタビュー映像なども紹介して、パイクの人間像や思想を浮かび上がらせる。

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ナムジュン・パイク ニュー・キャンドル 1993

 「2020年 笑っているのは誰?」という展覧会のタイトルは、1993年にワタリウム美術館にて開催された個展「パイク地球論」に際して、パイクがカタログに寄稿したテキストからとられたもの。その答えは、展覧会の中に隠されているという。

没後10年 ナムジュン・パイク展 2020年 笑っているのは誰?+?=??
会期:(前期)2016年7月17日~10月10日 (後期)2016年10月15日〜2017年1月29日
会場:ワタリウム美術館
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
電話番号:03-3402-3001
開館時間:11:00~19:00(水曜日は21時まで延長)
休館日:月曜日、10月11〜14日、12月31~1月3日
入館料:大人 1000円 / 学生 800円 / 小中学生 500円 / 70歳以上 700円
URL:http://www.watarium.co.jp/exhibition/

ギャラリストの新世代 サトコオオエコンテンポラリー・大柄聡子

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2016年2月、江東区を東西に流れる小名木川のほど近くにSatoko Oe Contemporaryは開廊した。ギャラリーが主に紹介するのは、1970〜80年代生まれの作家による現代美術。ギャラリーの代表を務め、彼らとは同世代である大柄聡子に同所の設立に込めた思い、今後の展望を聞いた。

生活と美術をつなぐ場所
Satoko Oe Contemporary ディレクター・大柄聡子

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取材時に開催していたのは画家、鹿野震一郎の個展。写真左に見える壁は、本展に際して特別に設置されたもの

美術に触れたロンドンの日々

 都内有数のアートスポット、清澄白河の中核を担ったギャラリーコンプレックスが、ビルの老朽化に伴い解体に至ったのは2015年秋のことだ。大柄聡子は同コンプレックスのギャラリーのひとつ、シュウゴアーツに2005年から10年間にわたって在籍し、ギャラリー移転のタイミングでの独立を決心した。「ギャラリーの転機が、自分の人生を振り返るきっかけになりました」。大柄は建築・空間デザインを学ぶため18歳でロンドンに移住。当時、ダミアン・ハーストを筆頭としたヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)の台頭により活気のあった同地で、様々な美術作品に触れる機会があった。「建築物の設計に加え、展覧会を訪れる授業、アーティストと共同で展覧会を構成するプログラムもありました。でもまさか自分がギャラリーを立ち上げるなんて、その頃は想像もしていなかったです」。

2つの「天職」を経て

 7年半の海外生活を経て、実家のある愛知県豊田市へと戻った大柄は就職活動に取りかかるも、難航。そんななかで、ある日母が「気晴らしに」と連れ出してくれたのが豊田市美術館だった。「実家は同市に転居したばかりで、私はこの美術館の存在を知らなかったんです」。谷口吉生が建築を手がけた館内には、留学時に目にした作品がいくつも展示されていた。「館全体が、とても生き生きして見えた。ここが自分の居場所だと直感的に感じたので"どうしたらここで働けますか?"と監視員の方に声をかけ、当日中に履歴書を書きました(笑)」。ほどなくして大柄は晴れて監視員となり、その後は学芸員アシスタントとしての業務がスタートした。

「監視員、アシスタント、どちらも本当に楽しく天職だと思った。でも美術館で数年間働き、今後のことを考えなければならない時期にさしかかったとき、ひとつの選択肢として"ギャラリー"が浮上しました」。そしてイケムラレイコ、カールステン・ヘラー、丸山直文など、自身が感銘を受けた作品を手がけた作家の多くに「シュウゴアーツ所属」という共通点があることに気づいた大柄は、当時、奇遇にもスタッフを募集していた同ギャラリーに応募。スムーズに採用が決定した。「ギャラリーでは毎日のように新しい体験と出会い、戸惑うことも多かったです。代表の佐谷周吾さんや同僚の懐の深さに助けられた10年間でした」。

日本でギャラリーを運営すること

 Satoko Oe Contemporaryに所属する作家は、池崎拓也、池田光弘、岩永忠すけ、金氏徹平、鹿野震一郎、升谷真木子、森千裕、ケサン・ラムダークの現在8名。「90年代に活動をスタートさせたギャラリストの先輩たちは、日本に数々のコレクターを生みだした。次は私たちの世代が連携し、同世代のコレクターを育てていきたいです」。そう話す大柄が目指すのは、作家と、彼らを支えるコレクターのバックアップだ。

「日本では美術に対するハードルが高く、若年層は"買わない世代"と言われているけど、社会には美術が必要。"こんな作家たちが今の日本に生きている"ということをギャラリーの活動を通じて伝えていきたいです」。

もっと聞きたい!

Q.注目のアーティストは?

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森千裕 トンネルの絵 2015 © The artist

 森千裕です。幼少期のお絵描き帳の中に見つけたモチーフから着想を得た絵画作品や、ブラウン管テレビに映るSFアニメのワンシーンを撮影した写真のほか、立体、インスタレーションなど手法や作風が多彩。いつも着眼点がおもしろいんです。今秋にはギャラリーでの個展を予定しています。

Q.思い出の一品は?

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 ボードゲーム「カタンの開拓者たち」です。以前、河原温さんのご自宅を上司と訪れた際、3人で対戦。その後「練習しなさい」と譲り受けました。河原さんはゲームを通して、仕事相手である私たちの性格を見透していたのではないか。今は懐かしく、そんなふうに思います。

PROFILE
おおえ・さとこ 愛知県生まれ。チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン(現チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ)卒業。豊田市美術館、シュウゴアーツ勤務を経て2016年、Satoko Oe Contemporaryを設立。

文=野路千晶
『美術手帖』2016年8月号「ART NAVI」より)

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Satoko Oe Contemporaryの入り口
Satoko Oe Contemporary
住所:東京都江東区白河3-18-8 第二杉田ビル1階
電話番号:03-5809-9517
開廊時間:12:00〜19:00
休廊日:日、月、祝
URL:www.satokooe.com

上田麗奈と藤ちょこ先生のデジタルペイント講座⑧ 線画編

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初心者にもやさしい直感的な操作が可能な多機能・低価格のペイントソフトとして、多くのクリエイターから支持を得ているペイントソフト「openCanvas」。声優の上田麗奈が、同ソフトのメインアートワークを手がけた人気イラストレーター・藤ちょこさんにその魅力を教わる連載です。前回からは写真をベースにした新たなイラストの作画に挑戦している上田。今回は過去の講座の作業を復習しつつ、写真素材をもとに人物を描き起こしていきます。

写真素材から人物を描き起こす

声優の上田麗奈と、イラストレーターの藤ちょこ先生、それぞれの仕事で多忙を極める2人の日程調整は容易ではありません。この日の講座は、上田のスケジュールの合間を縫い、ランチタイムに決行。各回の記事に掲載している動画は倍速再生をしていますが、実際には地道で時間を要する作業と収録が行われています。午前中の仕事を終え、空腹の上田が到着です。

上田麗奈(以下、上田):おつかれさまです。お腹ペコペコ〜。

開発チーム(以下、開発):ビルの入口にあった牛タンのお店、気になりますねぇ。

bt:お弁当も販売しているようでしたし、お昼ご飯を食べてから収録しますか?

上田:いえ、先に収録してご褒美に食べます!

藤ちょこ(以下、藤):では、講座を始めますね。第7回で描いたパース線のレイヤーは、今回は一度、非表示にします。パース定規も、パース定規のウインドウの目のマークをクリックすると非表示になります。この上に新しいレイヤーを作成して、キャラクターの線画を描いていきましょう。

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空腹をぐっとこらえての講座スタート

藤:今回の作品の場合、人物の髪の毛とそれ以外のレイヤーを分けて描いておくといいと思います。

上田:じゃあ、新しいレイヤーを作成して、レイヤーの名前は「きゃ」...「ら」...「せ」...「ん」...「が」(=キャラ線画)。パソコン、苦手〜。

開発:これだけ絵が描けるのに、キーボードの文字入力はやっぱりまだ慣れないんですね(笑)。

藤:では、最初に身体のアウトラインを描いていきましょう。写真のレイヤーの表示濃度を薄くして、人物の輪郭をなぞるように線画を描いていきます。第2回のときの作業と一緒ですね。今回もストローク設定の「手ぶれ補正」の機能を利用すると、綺麗な線が描けますよ。

上田:こんな感じでなぞっていけばいいですか?[ペンツールのペン先を細めの設定にして輪郭線をなぞる]

藤:そうですね。洋服の大きめのしわなども同時に描いておきましょう。髪の毛の部分は、また新しいレイヤーを作成して、髪の毛の流れをなぞるように。ペン先の色を変えて描いておくとわかりやすいですね。写真のレイヤーを非表示にすると、描き漏れがないか確認できますよ。

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第2回でラフから線画を起こしたときと、作業は基本的に同じ。今回は写真がラフのレイヤーに相当する

上田:[写真のレイヤーの表示/非表示を切り替えながら]こんな感じでいいかなぁ〜。

藤:はい、大丈夫です。

塗り分け作業を自動選択ツールで効率化

藤:それでは第3回の講座のときと同じように、塗り分けの作業をしていきます。最初は肌の部分からいきましょう。ペン先の濃度を100%に設定して、肌のパーツを塗りつぶしていってください。

上田:塗り分けのときは、わかりやすい色で塗りつぶせばいいんですよね?

第6回までの講座内容をしっかり習得している上田。藤ちょこ先生のナビゲーションで、スムースに作業を進めていきます。

上田:これでレイヤーの透明部分をロックして......色を選んで......塗りつぶしツールで......はいっ。[塗りつぶした部分がうすだいだい色に変わる]

藤:はい、いい感じですね。

上田:服の部分を塗り分けるときは、髪の毛の部分にまではみ出していいんですか?

藤:髪の毛の部分は、洋服のレイヤーの上にくるので、はみ出してしまって大丈夫ですよ。

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これまでの講座で、作画の流れをきっちり把握している上田。細かいポイントについて、藤ちょこ先生に確認をとりながら進めていく

bt:今回の講座は、この塗り分けの作業までです。これが終わったらお昼ご飯ですよ。

上田:今日のお昼は牛タンだぁ、牛タンだぁ♪

藤:上田さん、がんばってください(笑)。そんなときは、ペンツールで地道に塗りつぶすより早く仕上げる方法がありますよ。塗りつぶしたい部分を「自動選択」ツールで指定して一気に塗りつぶす方法です。

開発:作業効率を上げるために、また新しい機能が覚えられますね。

藤:塗りつぶしたい部分の周縁をペン先でなぞってください。線が途中で切れないように囲むイメージで。そうしたら、画面左のツールメニューの花火のようなマークをクリックして、いま囲んだ部分の内側をクリックしてみてください。

上田:こうですか?[ピンクのペンで囲った部分の内側に、範囲が選択される]

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同色の範囲を選択する「自動選択」ツール。ペンで囲んだ内側の白い領域を選択できる

藤:はい。そうしたら、画面上のメニューの「選択範囲」の「拡張」を選んで、値を3ピクセルくらいに設定します。そうすると、いま選択されている範囲の境目が外側にずれて範囲が広がるんです。これで、ペンの線と選択されていた範囲のすき間が埋められるので、この部分を選択したまま、画面の上のバケツマーク(塗りつぶしツール)をクリックしてください。

上田:[選択範囲が一瞬で塗りつぶされる]なるほど〜。洋服の色は、写真のワンピースと同じ色にしようかな。

藤:「資料」ウインドウの「スポイト」ツールで、ワンピースの色を拾うことができますよ。それから、作業の途中にファイルを保存するのも忘れないでくださいね。

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今回の収録場所は外光が差し込むガラス張りの部屋。印象派の絵画のようなイメージが膨らむ

藤:髪の毛の部分は、つむじからの流れを意識して、線を積み重ねて描いていきましょう。

上田:はい。[シャッ、シャッ、シャッ]

藤:髪の毛が束でまとまっているところは、ペン先を太くすると効率よく進められますよ。細めのペンと太めのペンをうまく使い分けながら作業してみてください。

上田:牛タン〜〜〜。[シャシャシャシャシャシャシャシャシャ]

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資料ウィンドウ(画像左上)でもとの写真を参照しながら、風になびく髪の流れをブラシツールで描いていく。地道に線を重ねることで、しなやかな髪の毛の表現に

藤:上田さんのペンを動かすスピードが早くなっている(笑)。いいですね、おしゃれな感じになってきました。上田さん、やっぱりこういう点や線を重ねていく作業が得意なんですね。

上田:読者の方に「またその話か」と言われてしまいそうです(笑)。[ひたすら髪の毛の線を重ねていく]......ん〜、もうこのくらいでいいかな。

藤:そうしたら、レイヤーの透明部分をロックして、「矩形塗りつぶし」ツールで、好きな色に塗りつぶしてください。

上田:はい。[塗り分けた各パーツの色を決める]これで保存![ファイルを保存]

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もとの写真(左)と、openCanvasで描いた作品(右)。中間色でやわらかい色調に仕上がった

藤:はい、上田さん、今回もおつかれさまでした!

bt:おつかれさまでした。さぁ、ランチタイムです。

上田:いぇ〜〜い!

第8回の講座内容を上田麗奈が動画でおさらい!

 第8回「線画編」のイベントファイルを早回しで再生しながら、上田麗奈と藤ちょこ先生が、おさらいします。

 
【上田麗奈と藤ちょこ先生のデジタルペイント講座】
 
第1回 第2回 第3回 第4回
 
第5回 第6回 第7回 第8回
 
第9回 第10回 第11回 第12回
 

PROFILE
うえだ・れいな 富山県生まれ。声優。第5回81オーディション特別賞・小学館賞、第9回声優アワード新人女優賞受賞。アニメ「Dimension W」(2016年、百合崎ミラ役)などに出演。特技は水彩画・ボールペン画、趣味は掃除。

ふじちょこ 千葉県出身、東京都在住のイラストレーター。ライトノベルの挿絵やカードゲームのイラストを中心に活動中。「openCanvas」のメインビジュアルを担当。「賢者の弟子を名乗る賢者」「八男って、それはないでしょう!」挿絵、「カードファイト!!ヴァンガード」カードイラストなど。BNN新社より画集「極彩少女世界」発売中。pixiv:藤原 27517  Twitter:@fuzichoco  公式サイト:http://fuzichoco.com

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ペイントソフト openCanvas パッケージ版
ペイントソフト openCanvas
価格:【パッケージ版】通常版 6,800円(税抜)/ガイドブック付き 7,800円(税抜)
   【ダウンロード版】通常版 5,370円(税抜)
URL:http://store.junglejapan.com/ext/oc/

動作環境(※詳細はメーカーのホームページでご確認ください。)
OS:Windows Vista Service Pack2、Windows 7 Service Pack1、Windows 8/8.1、Windows 10
HDD:インストール用に10MB以上の空き容量(画像の保存、作業領域用に2GB以上の空き容量を推奨)
CPU:SSE2に対応するx86互換プロセッサ
メモリ容量:OSが推奨するメモリ容量(32bitは4GB、64bitは8GB以上を推奨)
ディスプレイ:1024×768、True Color(1280x768以上を推奨)
インターネット接続:アクティベーション(シリアルキーの認証)、自動アップデートにはPCのインターネット接続環境が必要
周辺機器:Wacomタブレットからの筆圧に対応、TabletPC APIに対応したタブレットPCからの筆圧に対応
入力対応フォーマット:BMP、JPEG、PNG、PSD、OCI(openCanvas形式)、WPB(openCanvas1.1形式)
入力対応フォーマット:BMP、JPEG、PNG、PSD、OCI(openCanvas形式)
「openCanvas」のご購入は、こちら!

現代写真の巨匠トーマス・ルフの日本初となる本格的回顧展が開催

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巨大ポートレートやデジタル画像からコレクションした作品などを発表し、1990年代以降の現代写真を牽引しているドイツの写真家トーマス・ルフ。日本初となる本格的な回顧展が東京国立近代美術館(東京・竹橋)で開催され、初期作品から未公開の最新作まで一気に公開される。期間は8月30日〜11月13日。

 1958年ドイツ生まれのトーマス・ルフは、デュッセルドルフ芸術アカデミーの写真学科に入学。ドイツの近代建築物を即物的に撮影するするベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻のもとでアンドレアス・グルスキーやトーマス・シュトゥルートらとともに学び、「ベッヒャー派」として、現代写真を代表する作家の一人である。

 ミニマル・コンセプチュアルアートから多大な影響を受けたルフは、1979年に誰もいない家族や友人の自宅室内を撮影した「Interieurs(室内)」シリーズの制作を開始。1980年代からは友人たちを証明写真のように撮影した「Porträts(ポートレート)」シリーズを発表し、数々の国際展に参加するなど世界的な注目を集めていった。その後はこれまでの作風から一変、1990年以降は機械やデジタル技術を駆使した実験的な作品の制作に取り組み、現在のスタイルに至っている。

 本展では、初期の頃の作品である高さ約2メートルにも及ぶ「Porträts」作品群や少年時代から強い関心を寄せていた宇宙がテーマの「cassini」や「ma.r.s.」、そしてインターネット上の画像素材を解体し人間の視覚や現代の情報空間を再考する「nudes」や「jpeg」など、全18シリーズ約125点の作品を展示する。また、プレス写真を使って制作された最新作「press++」シリーズの一部の作品が世界初公開されるなど、新たな写真表現を探究し続ける写真家の軌跡を一堂で鑑賞することができる。

トーマス・ルフ展
会期:2016年8月30日~11月13日
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
電話番号:03-5777-8600
開館時間:10:00~17:00、金曜日は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月休(ただし9月19日、10月10日は開館し、9月20日、10月11日は休館)
観覧料:一般 1600円 / 大学生 1200円 / 高校生 800円 / 中学生以下無料
URL:www.momat.go.jp

「暮らし」の芸術祭 さいたまトリエンナーレ2016が開幕!

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「さいたま市」は、日本でもっとも多い人口を誇る県庁所在地のひとつ。そこで暮らす約127万人の人々に向けて創造と交流の場をつくる芸術祭「さいたまトリエンナーレ 2016」が9月24日から開催される。国内外から34組のアーティストが集結、「未来の発見!」をテーマに新作を発表し見慣れた「生活都市」をアートで彩る。

 2001年、浦和市、大宮市、与野市の合併により生まれた「さいたま市」(現在は岩槻市も合併)。ここで生活する127万人に向けて、創造と交流の場をつくることを目的とした芸術祭がスタートする。テーマは「未来の発見!」。「生活都市」という場でアートがどのように作用できるのかの試金石となる芸術祭だ。

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川埜龍三 犀の角がもう少し長ければ歴史は変わっていただろう(原画スケッチ) 2016
さいたま市の歴史や古代の物語にインスピレーションを得た、幻想的な立体作品群を制作

 おもな開催エリアは、都市的風景を代表する「与野本町駅〜大宮駅周辺エリア」、生活都市・さいたまの特徴が色濃い「武蔵浦和駅〜中浦和駅周辺エリア」、時空のエアポケット・非日常空間を出現させる「岩槻駅周辺エリア」の3か所。国内外で活躍する34組のアーティストが選ばれ、全員がこの場所でしか構想しえない新作に取り組む。「共につくる、参加する芸術祭」であることも大きな特徴で、市民を交えたワークショップも進行中だ。

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アイガルス・ビクシェ さいたまビジネスマン 2016
生活都市を支える「サラリーマン」をモチーフに、目で見て楽しく、新しい視点や発見をもたらすような立体作品をつくる

 ディレクターの芹沢高志は「この地域は、田畑に樹林地、住宅地、繁華街、超高層などが連なる、日本の土地利用の見本帳のような場所。都市と自然がどう折り合いをつけるのか、その境目でこそ浮き彫りになる。日常の場でどうアートが力を発揮するのか。アーティストたちは非常に面白い発見を提示してくれています」と話す。

 アートの創造性とは、現実の別の姿や置き去りにされた想いや記憶、ささやかな喜び、思ってもみなかった可能性を感じさせてくれることでもある。見慣れた風景のなかにある美しさが、どんな発見や変化をもたらしてくれるのか。アートの魔術の現場に立ち会いたい。

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アピチャッポン・ウィーラセタクン インビジビリティ(仮)  2016 Courtesy of Kick the Machine Films, 2016
さいたま市の風景や音からインスピレーションを得て、見慣れたはずの日常風景を全く違う姿で捉え直す映像作品を展開

ディレクター・芹沢高志さんに聞くみどころ

 私たちは、さいたま市を、日本を代表する「生活都市」と位置づけました。つまり、大いなる日常が広がる場所。そこにアートという非日常を持ち込みます。私たちの生きる現場で、いかに想像力を羽ばたかせるか? 「未来の発見!」とは、未来を想像することに他なりません。

 発表されるアートプロジェクトはすべてが新作。アーティストが、ディレクターたちと丁寧な対話を重ねて生み出してきたものばかりです。しかも創作のプロセスをできるかぎり市民に公開して、多くの人が自分のこととして参加できるように、さまざまな工夫をこらしてきました。また、なるべく気軽にアートに接してもらうために、一部のパフォーマンスを除き、展示はすべて鑑賞無料です。

永峰美佳=文
『美術手帖』2016年8月号より)

さいたまトリエンナーレ 2016
会期:2016年9月24日~12月11日
会場:埼玉県さいたま市 (与野本町駅~大宮駅周辺/武蔵浦和駅~中浦和駅周辺/岩槻駅周辺) ※会期中は、主要エリアのほか、市内各地で各種アートイベントを実施予定
開場時間:10:00〜18:00(※最終入場は17:30まで)
鑑賞料: 無料 ※一部公演を除く
URL:http://saitamatriennale.jp

【参加アーティスト】
秋山さやか、アイガルス・ビクシェ、チェ・ジョンファ、日比野克彦、川埜龍三、アダム・マジャール、目、長島確、野口里佳、大友良英、小沢剛、ウィスット・ポンニミット、SMF(Saitama Muse Forum)、鈴木桃子、アピチャッポン・ウィーラセタクン、ユン・ハンソル 他

 

青森県美でアート×博物資料の「青森EARTH」展が今年も開催

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青森県立美術館にて、企画展「青森EARTH2016 根と路(みち)」が開催されている。同館による企画展示シリーズの5回目となる今年は、「旅と土着」をキーワードに、美術作品のほか、青森県にまつわる考古・民族・自然誌資料を紹介。会期は9月25日まで。

 開館10周年を記念し、2012年より毎年開催されてきた「青森EARTH」シリーズの集大成として位置付けられている本展。縄文時代の遺跡が点在する土地に根ざした「新たな美術」を探求することを目指し、青森県にルーツをもつ考古遺物、民族資料、自然誌資料を、「旅と土着」を切り口に選出された美術作品と組み合わせて展示している。

 本展で紹介されるのは、ランドアートの第一人者、ロバート・スミッソンの映像作品や、淺井裕介とのべ335名のボランティアスタッフにより青森の土で描かれた巨大絵画のほか、アピチャッポン・ウィーラセタクン、石川直樹、三瀬夏之介ら国内外のアーティスト16組による「大地との関わりから生まれた作品」の数々。青森県出身で、同館に作品が多数コレクションされている奈良美智は、三内丸山遺跡などから出土の縄文遺物から着想を得た新作焼き物作品7点を出品している。

 また、美術作品とあわせて、青森県出身の政治家・探検家で、千島列島や南西諸島の調査を行い、青森市長も務めた笹森儀助(1845-1915)の関連資料や、同館からほど近い三内丸山遺跡出土の考古遺物、さらには岩石標本などの自然誌資料も展示。青森県の風土や「旅と土着」によって生まれた文化をうかがい知ることができる展示品を一堂に紹介し、縄文時代から続く創造の系譜を提示する試みとなっている。

青森県立美術館開館10周年記念
青森EARTH2016 根と路
会期:2016年7月23日~9月25日
会場:青森県立美術館
住所:青森市安田字近野185
電話番号:017-783-3000
開館時間:9:00~18:00
休館日:8月8日、8月22日、9月12日
URL:www.aomori-museum.jp

「愛」の感触を語る。地主麻衣子「新しい愛の体験」展

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1984年生まれの地主麻衣子(じぬし・まいこ)は、大学在学中にドローイングや小説を制作、2010年から映像を撮り始め、これまでさまざまなメディアを組み合わせた作品で独創的な表現方法を探究してきた。HAGIWARA PROJECTS(東京・初台)で開催した個展「新しい愛の体験」では、タイのチェンマイで現地の女性との対話を撮影した映像作品を発表。「愛」をテーマに紡がれる被写体と撮影者のコミュニケーションの記録を、中尾拓哉がレビューする。

中尾拓哉 新人月評第5回
リボンに触れる手つき
地主麻衣子「新しい愛の体験」展

「あなたと愛について話したいんです」と、率直な言葉で対話がはじまる。半透明なリボンが木の枝から垂れ下がり、黒い服を着た女性が白いタイルの上に裸足で立っている。この映像作品は、地主麻衣子がタイのチェンマイに滞在し撮影したものである。本展会場では、映像とともに二人が話をしている舞台が再現されており、自然と鑑賞者は愛について問われ、このささやかな対話篇の当事者となるよう誘われる。

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新しい愛の体験 2016 HDビデオ 42分 © Maiko Jinushi Courtesy of HAGIWARA PROJECTS

「あなたの愛のイメージを教えてもらえますか」という地主の問いにたいして、「ライトグレー」と述べる彼女の答えは、白と黒の中間色として、万物の陰陽を連想させる抽象的なものである。また「完全な愛を得たときの気持ちを歌で表してください」と言われれば、オーケストラの曲を口ずさみ、そして「安全じゃないと感じたらどうしますか」と尋ねられれば、「腕を閉じる」とジェスチャーをする。話はある一定の深度で次々と流れていき、イメージ、感情、体感が少しずつ呼び覚まされる。

 足下のタイルには、ときに花や水がまかれ、花を踏む感触、水の冷たさが快/不快となって彼女へと伝わっていく。このような非言語的コミュニケーションが織り込まれることで、造形的言語が語り出す場が確保されているのである。思い返せば、彼女ははじめからずっとリボンに触れていた。指先の点を面に含ませるように、リボンの線を立体的に巻きとる。まるで、視覚がとらえている表を、触覚であれば裏とともに、あるいは全方位から同時に包み込んでいけるというように。その指の絡まりは、イメージ、感情、体感を撹拌し、かたちのないものを想起する手つきとなる。

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新しい愛の体験 2016 HDビデオ 42分 © Maiko Jinushi Courtesy of HAGIWARA PROJECTS

 地主は繰り返し「それは愛ですか」と問うていく。そして「愛が何なのかなんてわからないよ。だから、これが愛だとか、愛じゃないとかは言えないけど、たぶんこれは愛だと思う」と彼女は声を強める。「最後にもう一つ」と地主が問いかけると、「Oh my god!」と口走った彼女はもうこれ以上、愛について思いつかないといった様子で苦笑いを浮かべる。すると、リボンから手を離し、腕を閉じ、心が何かにとらわれたかのように「動きたくないとき」と、そう言ったのだ。「それは愛ですか」と地主が問い返すと、今度は微笑を浮かべ、小さくうなずいた。そのとき彼女と彼女を撮影する地主の頭上を、飛行機が轟音とともに低く飛び、通り過ぎていく。近づいてくる音とホールドされる感覚。無関係に現れているかのような瞬間は収束し、シナリオのない即興の恐ろしい精度によって対話のリアリティーが映し出される。想起の場となるその思いがけない一瞬を、地主は撮ろうとしていたのである。

 こうして、ある完成された瞬間が、カメラに残されると同時に過ぎ去っていく。しかし、「私」と「あなた」で紡がれる古くからある方法と非言語的コミュニケーションによって、深度を変えてたどりついた対話の奇跡を、「愛」に重ねることができるのであろうか。目前の半透明なリボンに触れると、ざらついた質感のわずかな摩擦から、温度を持たないイメージは温度を持つ体感へと変わり、彼女の手つきに表れていた、不確かなもののとらえようのなさに、確かな共感が生まれるのである。

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「新しい愛の体験」展の展示風景

PROFILE
なかお・たくや 美術評論家。1981年生まれ。第15回『美術手帖』芸術評論募集にて「造形、その消失においてーマルセル・デュシャンのチェスをたよりに」で佳作入選。

(『美術手帖』2016年8月号「REVIEWS 10」より)

地主麻衣子「新しい愛の体験」
会期:2016年5月28日~6月25日(終了)
会場:HAGIWARA PROJECTS

地主麻衣子(じぬし・まいこ)は1984年神奈川県生まれ。2010年多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。主な個展に15年「おおきな口、ちいさな手 もしくは ちいさな口、おおきな手」(Art Center Ongoing、東京)。主なグループ展に15年「Zero Gravity」 (マタデロ・マドリード)、16年「リターン・トゥ」(トーキョーワンダーサイト本郷、東京)。本展は、タイ・チェンマイにて「愛」をテーマにタイ人の女性と対話を行い、その様子を複数のカメラで記録した映像作品と、映像を基にした写真作品を展示した。

世界を旅するイタリア人夫妻による写真展が銀座のシャネルで開催

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イタリア出身の写真家ティツィアーナとジャンニ・バルディッツォーネ夫妻の写真展「TRANSMISSIONS people-to-people」が、シャネル・ネクサス・ホール(銀座)で9月2日より開催される。バルデッツォーネ夫妻は、2010年より知識の伝承をテーマとした写真プロジェクトに取り組み、世界中の師弟に出会いその姿をカメラに収めてきた。本展では、連作写真集『Transmissions』(2010-2016)収録作品が展示される。

 1977年、マダガスカルでの出会いにより共同制作を開始したティツィアーナとジャンニ・バルディッツォーネは、被写体である人物との出会いと関係を通じて、「他者」との共有や理解を深めることを目的とし、数々の写真プロジェクトに取り組んでいる。

 世界中を旅してさまざまな分野の100人以上の師弟に出会ってきたバルディッツォーネ夫妻は、その関係性を探究、知識が伝えられていく過程や創造への感動に注目し、細かな動きや表情をカメラにおさめてきた。

 1985年にインドの先住部族をテーマにした撮影をはじめ、以降長期のプロジェクトに携わるようになる。これまでの多くは現代社会からは隔たれた文化の多様性が守られたアジアやアフリカを訪れ、世界各地で写真集を出版、ヨーローッパやアメリカを中心に展覧会を行ってきた。近年では、サハラ、シベリア、アジア各地の砂漠、雪原、草原に暮らす遊牧民を撮影した写真集および巡回展『Nomad Spirit』(2005-2010)があげられる。

 本展では最新の連作写真『Transmissions』(2010-2016)より、ミャンマー、インド、マリ、モンゴルなど、多彩な地域で伝統の技を伝える人々の姿をとらえた作品を展示。バルディッツォーネ夫妻の旅と出会いの軌跡をたどることができる。

ティツィアーナ&ジャンニ・バルディッツォーネ「TRANSMISSIONS people-to-people」展
会期:2016年9月2日~9月30日
会場:シャネル・ネクサス・ホール
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
開館時間:12:00~20:00
URL:http://www.chanel-ginza.com/

会期:2016年9月2日~9月22日
会場:伊勢丹新宿店本館4階=センターパーク
住所:東京都新宿区新宿3-14-1
電話番号:03-00-0000
開館時間:10:30~20:00

「美術検定」をもっと楽しもう! 2つの関連イベントが開催

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2003年に始まった「アートナビゲーター検定」を前身とし、2007年より行われている「美術検定」が9月1日と7日、ブックカフェ6次元(東京・荻窪)と蔦屋家電(東京・二子玉川)で2つの関連トークイベントを開催する。

 今回開催されるのはトークイベント「美術検定ナイト~語る、伝える、作ることで学ぶ美術の歴史」とアートークライブ「ザ・ニュースペーパー福本ヒデ『ザ・美術検定』」の2つ。

 トークイベントでは美術検定1級を合格し、アートナビゲーターとして美術館やアートイベントなどでガイド活動を行う東孝彦、アートブログ「青い日記帳」を主宰し、さまざまな美術展の情報を発信するアートブロガーの中村剛士、絵画教室ルカノーズを主宰し、自らもアーティストとして美術教育や美術史をテーマに制作を続ける三杉レンジの3名をパネラーとして迎え、語る、伝える、そして作る立場から美術の歴史を学ぶ極意に迫る。

 またアートークライブでは社会風刺コント集団「ザ・ニューズペーパー」のメンバーで、美術検定合格者でもある"美術芸人"福本ヒデが、アートクイズを解きながらおもしろ楽しく美術を学ぶ魅力を語る。

 なお、1113日開催の美術検定は106日が申込み締切りとなっている。

トークイベント「美術検定ナイト~語る、伝える、作ることで学ぶ美術の歴史」
講師:東孝彦、中川剛士、三杉レンジ
日時:2016年9月1日 19:30~21:00(開場19:00)
会場:ブックカフェ6次元
住所:東京都杉並区上荻1-10-3-2F
料金:1500円(ドリンク付)
申し込み:定員に達したため締切りました。


アートークライブ ザ・ニュースペーパー福本ヒデ「ザ・美術検定」
講師:福本ヒデ
日時:2016年9月7日 19:00~20:00(開場18:30)
会場:蔦屋家電2F E-room2
住所:東京都世田谷区玉川1-14-1 二子玉川ライズ S.C. テラスマーケット
料金:1500円

櫛野展正連載:アウトサイドの隣人たち ⑧家族をつなぐ壁新聞

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ヤンキー文化や死刑囚による絵画など、美術の「正史」から外れた表現活動を取り上げる展覧会を扱ってきたキュレーター・櫛野展正。現在、ギャラリー兼イベントスペース「クシノテラス」を立ち上げ、「表現の根源に迫る」人間たちを紹介する活動を続けている。彼がアウトサイドな表現者たちにインタビューし、その内面に迫る連載の第8回は、40年以上にわたって一家の出来事を新聞にしている山田義廣・トヨ子夫妻を紹介する。

 北海道の中央西部に位置する恵庭市。札幌市街と新千歳空港のほぼ中間に位置し、札幌市のベッドタウンとして発展してきた都市のひとつだ。この街に住む山田義廣・トヨ子さん夫妻は、40年以上にわたって、家族のために新聞を発行し続けている。その名は『家族新聞だんらん』。書かれている内容は、子どもたちの学校での出来事や家のリフォームなど、家庭のこと。タイトルの通りプライベートの話題がほとんどで一瞬覗き見ることを躊躇してしまうが、伝わってくる温もりと生き様が、その魅力だ。

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『家族新聞だんらん』の紙面。コンサートに行ったこと、部活動のことなど、家族の近況が書かれている

 山田義廣さんは、現在83歳。北海道西部にある増毛町にある漁師の家で生まれた。20歳のときから2年間、小学校の教員として働いたあと、恵庭市で陸上自衛隊に勤務。人事部の幹部として、定年まで務めた。いっぽう、3歳年下の妻・トヨ子さんは、新潟県岩船郡瀬波町(現在の新潟県村上市)で8人兄弟の7番目として生まれた。「家は貧乏だったけれど、家族は仲がよかったです」と当時を振り返る。1954年に北海道を襲った洞爺丸台風の倒木被害で、札幌営林局恵庭営林署(現在の森林管理署)が職員を募集することになり、当時18歳だった彼女は応募。就職難の時代だったが無事に採用され、恵庭市に移住して60歳まで勤務した。

 2人が出会ったのは、俳句などをつくる趣味の会でのこと。すぐに意気投合し、義廣さんが27歳、トヨ子さんが24 歳のときに結婚、3人の子どもを授かった。夫婦共働きだったため、子どもたちとのすれ違いを危惧したトヨ子さんは、家族に新聞づくりを提案。夫と子どもの同意を得て、1975年12月に手づくりの『家族新聞だんらん』を発行した。長女の和子さんが中学1年生、長男の広一さんが小学校6年生、次男の正人さんが1歳のときのことだった。

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掲出を終え、束にされた『家族新聞だんらん』の1〜200号。1975年から発行されており、年季を感じさせる

 週に1回のペースで新聞は発行。幼かった正人さん以外の4人が順番に執筆を担当し、新聞の内容やレイアウトは執筆者に一任された。昔の号を見ると、義廣さんの担当した新聞は紙面を埋めるためにその大半を家族の予定表が占めているのに対して、子どもたちはイラストを描いたり、トヨ子さんは時事ネタを枠外に盛り込んだりと、実に様々。発行した新聞は台所にある小さな黒板に押しピンで留め、みなで閲覧した。食事のときに、新聞に書いた内容が話題になることも多かったという。掲出を終えた新聞は束にして、押し入れで大事に保管した。

 1981年5月に和子さんが就職で家を離れることになったが、山田さん夫妻は『家族新聞だんらん』をやめなかった。以後は月に1度の発行になったものの、夫婦で執筆を続け、家を離れていった子どもたちのために、新聞をコピーして送り続けた。「新聞のネタに」と和子さんや広一さんが記事を提供することも多かったという。

 やがて子どもたちは成人を迎え、結婚。山田さん夫妻には7人の孫ができた。『家族新聞だんらん』は1号も欠かすことなく発行され、2014年2月には700号を突破。記念の号は、特集号として通常のものとは別に発行することもあるそうだ。「記事が尽きることはありません。むしろ、どれをトップ記事にするか困っているくらい」とトヨ子さんが話すように、総勢15人となった一家の話題は多い。過去には、バトミントンで世界選手権に出場した孫を追いかけて台湾に行き、現地取材を行ったこともあるという。数年前からは、トヨ子さんの提案で「私の現況」というコーナーが始まった。正月に子どもや孫など一家が集まった際にくじ引きをして、そのなかの12人がひと月ずつ、自らの近況を紹介する連載だ。

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『家族新聞だんらん』の600号記念号。新しく一家に加わった孫の写真が掲載されている

 最初は簡素だった紙面も、いつの間にか写真やカラフルな文字で鮮やかになった。当初家族で分担して書いていた記事は、編集長であるトヨ子さんが中心に書くようになった。夫の義廣さんは、紙面に貼る写真を縮小コピーするためにコンビニに行ったり、書かれた記事に間違いがないか校正をしたりと、補佐役に徹している。だが、山田さん夫妻を取り巻く家族の話題が中心ということは、いまも変わらない。トヨ子さんは、「何か記事のネタはないですか。あったら送ってください」と子どもたち三家族に、月に一度は電話をかけている。

 トヨ子さんは、この40年を振り返って「成長していくなかで子どもがどんなことを考えているのか、親はわからないんですよね。だから、みんなで回し読みができる新聞を始めたのですが、子どもたちは一切記事には悩みを書いてくれませんでした」と笑って語る。


 1977年11月に100号目を発行して地元の新聞に取り上げられたとき、「周囲からの反響が大きくて、ああ、こんなに大きく新聞に取り上げられることは普通じゃないんだ。この新聞をつくっているうちの家族は、仲がいいんだ」と、娘の和子さんは気づいたという。

『家族新聞だんらん』に、特別に優れた表現はない。ただ、畳の上に並べられた約40年分の分厚い紙の束が、僕のこころを刺激する。そっと目を閉じると、メールやSNS、チャットなどといった薄っぺらいコミュニケーションツールに頼りきった僕らが忘れてしまった、「一家団欒」のかたちが想起されるからだ。そして、こうして記事を書いているいまも、山田家の台所には40年分のピン跡がついた黒板に、また新しい新聞が貼られている。

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台所には、取材当日も『家族新聞だんらん』がかかっていた。黒板には、体調を思いやる一言が書かれている

PROFILE
くしの・のぶまさ 「クシノテラス」キュレーター。2000年より知的障害者福祉施設職員として働きながら、「鞆の津ミュージアム」(広島) でキュレーターを担当。16年4月よりアウトサイダーアート専門ギャラリー「クシノテラス」オープンのため独立。社会の周縁で表現を行う人たちに焦点を当て、全国各地の取材を続けている。クシノテラスWEBサイト:http://kushiterra.com/

藤井よしのりが恋愛術を教えるトークイベントが8月27日に開催!

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愛の伝道師と自称する藤井よしのりによるトークイベント「藤井よしのりのパンパン道場」が、8月27日にクシノテラスで開催される。Chim↑PomのエリイにLINEスキルを絶賛された藤井が、実際に投稿した写真やLINEメッセージを紹介しながら、そのナンパ術を語る。詳細はhttps://goo.gl/xJ0Mqj

「遅咲き」のアーティストによるグループ展が10月8日から開催!

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50歳を超えた4名のアーティストによるグループ展「遅咲きレボリューション!」が、10月8日〜2017年1月29日、クシノテラス(広島県・福山)で開催される。年齢にとらわれず挑戦し続ける作家たちの作品を通じて、年齢に伴うイメージの既成概念に問題を提起する。出品作家は、糸井貫二(ダダカン)、長恵、西本喜美子、マキエマキ。詳細はkushiterra.com

NADiff全館が会場! 森村泰昌展〈「私」の創世記〉開催

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東京・恵比寿のNADiff GalleryとMEMが合同で、森村泰昌展〈「私」の創世記〉を開催する。本展は森村泰昌の80年代から90年代にかけての初期の写真作品を紹介する3部構成の展示で、NADiff A/P/A/R/T建物内の各スペースで作品が展覧される。また店内では、本展に関連した森村泰昌の選書フェアやトークイベントも行われる。

 本展の第1部「卓上の都市」と第2部「彷徨える星男」 はNADiff A/P/A/R/Tの2・3階にスペースを構えるギャラリーMEM(3階は9月にオープン)で、また第3部「卓上の都市」は地階のNADiff Galleryにて開催され、NADiff A/P/A/R/T全館を使った展示となっている。

 第1部「卓上の都市」では、「卓上のバルコネグロ」と題された49点の作品を展示。同シリーズは、1985年に森村泰昌が今に連なる美術史のシリーズに発展していくゴッホの肖像を発表する直前に取り組んでいた静物写真のシリーズで、後の森村作品に特徴的な要素がすでにこのなかに見ることができる初期の重要作となっている。

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卓上のバルコネグロ 卓上の都市・日ざしのある広場 ゼラチン・シルバー・プリント 13.8x20.3cm 1984 ©Yasumasa Morimura, courtesy MEM

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卓上のバルコネグロ 森の塔・風が吹く ゼラチン・シルバー・プリント 30x30cm 1984 ©Yasumasa Morimura, courtesy MEM

 第2部「彷徨える星男」では、90年に制作されたデュシャンへのオマージュである最初のビデオ作品「星男」を上映、同シリーズの写真作品および関連のイメージを「女優家Mの物語」のシリーズから抜粋して展示する。

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星男 (旅立ち) ゼラチン・シルバー・プリント 15x10cm 1990 ©Yasumasa Morimura, courtesy MEM
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星男 (金閣寺にて) ゼラチン・シルバー・プリント 16.2x24.3cm 1990 ©Yasumasa Morimura, courtesy MEM
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MのセルフポートレイトNo.39ゼラチン・シルバー・プリント 31x20.5cm 1993©Yasumasa Morimura, courtesy MEM

 また第3部「銀幕からの便り」では、90年代の初期の貴重なビデオ作品がまとめて上映される。

森村泰昌展<「私」の創世記>
会期:2016年9月2日~10月10日(第3部) 9月2日〜10月2日(第1部前期/第2部) 10月4日〜11月6日(第1部後期)
会場:NADiff Gallery(第3部) MEM(第1部/第2部)
住所:東京都渋谷区恵比寿1-18-4
電話番号:03-3446-4977
開館時間:12:00~20:00
休館日:月休(祝日の場合は翌日)
オープニングトーク 「写真」の中を覗きこむ
出演:森村泰昌、鳥原学(写真評論家)
日時:9月3日 18:00〜
会場:NADiff a/p/a/r/t 店内
参加費:1000円

トークイベント 「写真」に耳を傾ける
出演:森村泰昌、藤原えりみ(美術ジャーナリスト)
日時:10月8日 15:00〜
会場:NADiff a/p/a/r/t 店内
参加費:1000円

石橋英之の写真展がIMAギャラリーで開催中 トークイベントも

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IMA gallery(六本木)でフランス・リール在住の写真家、石橋英之の個展「Présage / Connotations」が9月24日まで開催中だ。今回が3年ぶりとなる日本での個展に際し、8月26日にはアーティスト、ミヤギフトシと『美術手帖』編集長、岩渕貞哉によるトークイベントが予定されており、「記憶とアート」をテーマに鼎談が行われる。

 ファウンドフォトを使ったコラージュやアプロプリエーションといった手法を用いて写真表現を続けている石橋英之は、2013年に個展「Présage」をBTギャラリー(東京)で開催し、その後、同タイトルの写真集『Présage』(IMA Photobooks、2015年)を刊行。2015年にはGallery Vol de Nuits(マルセイユ・フランス)やアムステルダムで毎年開催されるUNSEENフォト・フェアに出展するなど、活躍の場を広げている。

 フランス語で「予兆」を意味する作品シリーズ「Présage」では、蚤の市で購入した古写真やポストカードの断片を精巧にコラージュし、まったく新しいイメージをつくり上げるとともに、制作時に混入したホコリなどの異物はあえて反映させることによって、作品の趣をより引き立たせている。

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石橋英之 Présage 2014 Courtesy of IMA gallery © Hideyuki Ishibashi

 前作までの手法を発展させた新作「Connotations」では、詩の言葉からインスパイアされた作品を制作。石橋の友人であるアメリカの女流詩人が自身の恋愛経験を綴った詩を原案に、キーワードのハッシュタグ検索から抽出したインターネット上のイメージや典型的なファッション広告のようなイメージを使い、それらをコラージュすることによって架空の男性のポートレートを作成。石橋は、社会に氾濫するイメージを組み合わせるという複雑な制作過程を経ることによって、どこか既視感を漂わせたイメージを創出し、鑑賞者に「ものを見る」という行為を問いかけようとする。

 8月26日には、アーティストのミヤギフトシと『美術手帖』編集長の岩渕貞哉を迎えたトークイベントを開催。「記憶とアート」をテーマに鼎談が行われる。また、トーク終了後は石橋のサイン会も予定されており、作家とともにその作品の背景に迫ることができるまたとない機会となっている。

石橋英之個展「Présage / Connotations」
会期:2016年7月29日~9月24日
会場:IMA gallery(IMA CONCEPT STORE内)
住所:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3F
電話番号:03-5572-7144
開館時間:11:00~19:00
休館日:日、月、祝休
URL:http://imaconceptstore.jp/

【関連トークイベント】
「記憶とアート」
日時:2016年8月26日 19:30〜21:00
会場:IMA CONCEPT STORE内
住所:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3F
出演:石橋英之(写真家)、ミヤギフトシ(アーティスト)、岩渕貞哉(『美術手帖』編集長)
参加料:1000円(税込)
お申し込みサイト:http://imaonline.jp/event/20160826.html

裸体と原美術館 篠山紀信の写真展「快楽の館」が開催

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篠山紀信の写真展「快楽の館」が、原美術館で9月3日〜1月9日に開催される。本展では約30名のモデルを起用したヌード写真を展示。すべての出品作品は会場である原美術館で撮り下ろした新作となっている。

 1940年東京生まれの篠山紀信は、日本を代表する写真家のひとりとして、芸能人やスポーツ選手など多岐にわたる有名人を被写体にしてきた。とりわけ女性のヌード写真を撮影しており、これまで数々のセンセーショナルな話題を巻き起こしている。

 個展が決定した際に篠山が提案したアイデア「ここ(=原美術館)で撮った写真をここに帰す(=展示する)」が展覧会のコンセプトに決定。作品約60点はすべて原美術館で撮影され、そのうちの何点かは撮影されたまさにその展示室の壁面に掲げられており、写真における撮影された過去の「イメージ」と今ここで展示されている「現実」が同時に存在する、交錯的な鑑賞体験を見る者に与えるだろう。なお、2012年から全国を巡回している「篠山紀信 写真力」展とは対照的に、本展は「ここ(=原美術館)」でのみの開催となる。

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篠山紀信 快楽の館(森村泰昌の常設展示作品と) 2016 © Kishin Shinoyama 2016

 原美術館は、1938年に個人邸として建てられた西洋モダニズム建築。今回の撮影は展覧会の合間の休館中に行われ、何もない純粋な空間と躍動する裸体が篠山のカメラによって、同館は「快楽の館」に変貌を遂げている。

 また、常設展示されている森村泰昌や宮島達男、奈良美智の作品とのコラボレーションも見どころのひとつ。会期中はさまざまなイベントを予定しており、詳細は決定次第、公式ウェブサイト等で発表される。

篠山紀信展 「快楽の館」
会期:2016年9月3日~1月9日
会場:原美術館
住所:東京都品川区北品川4-7-25 
電話番号:03-3445-0651(代表)
開館時間:11:00~17:00
休館日:月休(9月19日、10月10日、1月9日は開館)、9月20日、10月11日、年末年始(12月26日〜1月4日)
入館料:一般 1100円 / 大高生 700円
URL:http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html
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