女性デザイナーのアルミ・ラティアが1951年にヘルシンキで創業したマリメッコ。いまやファブリックだけでなく家具や日用品も手がけるライフスタイルブランドとして、世界中で親しまれている同ブランドの日本初となる大型巡回展が、12月17日より東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開幕した。同展は高知県立美術館、島根県立石見美術館、西宮市大谷美術館を経ての開催となる。
本展では、フィンランド・デザイン・ミュージアムの所蔵作品から、ファブリック約50点、ヴィンテージのドレス約60点、デザイナーによるスケッチやインタビュー映像など、計200点以上を公開。マリメッコの歴史を概観するものとなっている。
開会にあたり、フィンランド・デザイン・ミュージアムのユッカ・サヴォライネン館長は次のようにスピーチを行った。「マリメッコをただのファッション、テキスタイルの会社だとは思わないでいただきたい。マリメッコはフィンランドの精神そのもの。フィンランドのクリエイティビティそのものです。マリメッコの精神は、人々に幸せを与えたい、という非常に民主的な考えにもとづいている。60年前からフィンランド人の生活の一部となっています」。
この言葉からも、マリメッコがいかにフィンランドに根付き、愛されているのかがわかる。マリーのドレスを意味する「マリメッコ」。そのシンプルで、親しみやすい名前からは、マリメッコの女性に対するスタンスもうかがい知れる。
フィンランド・デザイン・ミュージアム学芸員のハリー・キヴィリンナはこう語る。「女性がコルセットで体を締め付けていた50年代に、シンプルなカットで、緩やかなシルエットを生み出したのがデザイナーのヴオッコ・ヌルメスニエミ。多くの女性に自由を与えました。これがマリメッコの象徴的な服です。模様を壊さないためにカットをほとんどしていません」。マリメッコは新しいデザインで、新しい思想をもたらしたとも言えるだろう。
「マリメッコ」と聞いてまず思い浮かべるのが、代表的なパターン《ウニッコ》だ。ケシの花を意味する《ウニッコ》は、マイヤ・イソラが1964年にデザインしたもの。これについては面白いエピソードがあるという。「50年代、世界中に花柄が流行していました。そこでアルミ・ラティアは花柄を禁止した。それを聞いたイソラが《ウニッコ》をつくったんですね。喧嘩を売るような行動ですが、デザイナーは自由を求めるものなのです」。いまや全世界で愛されるウニッコの意外な誕生秘話だ。本展では会場で一番初めにこのファブリックが来場者を迎えてくれる。

また本展には、マリメッコの歴史を変えた服も展示されている。それはジャクリーン・ケネディが購入した服だ。「1960年夏、ケンブリッジのショップ、デザイン・リサーチでにジャクリーン・ケネディが来店し、9着のドレスを購入しました。その年の11月に夫であるジョン・F・ケネディが大統領になったので突如として注目されるようになったのです。ジャクリーンお気に入りのブランドとして、数百の記事で取り上げられました」。会場には実際の洋服と、ジャクリーンがマリメッコを着て表紙を飾る1960年12月26日号の『スポーツ・イラストレイテッド』誌などがあわせて展示されている。

鮮やかな色彩と、唯一無二のパターンで多くの人々を魅了するマリメッコ。本展は、そのデザインを歴代のデザイナーたちとともに紹介し、その歴史を多種多様な資料で紐解いている。なお、展覧会を見たあとはマリメッコグッズでいっぱいのミュージアムショップに立ち寄るのもお忘れなく。
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~19:00(12月31日を除く金・土は〜21:00、入館は30分前まで)
休館日:1月1日
入館料:一般 1400円 / 大高生 1000円 / 小中学生 700円
URL:http://www.bunkamura.co.jp
【関連イベント】
映画『ファブリックの女王』特別上映
日時:12月17日〜12月22日 各日19:25~
会場:Bunkamura ル・シネマ
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
料金:1200円(マリメッコ展のチケット提示で1000円)