「さいたま市」は、日本でもっとも多い人口を誇る県庁所在地のひとつ。そこで暮らす約127万人の人々に向けて創造と交流の場をつくる芸術祭「さいたまトリエンナーレ 2016」が9月24日から開催される。国内外から34組のアーティストが集結、「未来の発見!」をテーマに新作を発表し見慣れた「生活都市」をアートで彩る。
2001年、浦和市、大宮市、与野市の合併により生まれた「さいたま市」(現在は岩槻市も合併)。ここで生活する127万人に向けて、創造と交流の場をつくることを目的とした芸術祭がスタートする。テーマは「未来の発見!」。「生活都市」という場でアートがどのように作用できるのかの試金石となる芸術祭だ。

さいたま市の歴史や古代の物語にインスピレーションを得た、幻想的な立体作品群を制作
おもな開催エリアは、都市的風景を代表する「与野本町駅〜大宮駅周辺エリア」、生活都市・さいたまの特徴が色濃い「武蔵浦和駅〜中浦和駅周辺エリア」、時空のエアポケット・非日常空間を出現させる「岩槻駅周辺エリア」の3か所。国内外で活躍する34組のアーティストが選ばれ、全員がこの場所でしか構想しえない新作に取り組む。「共につくる、参加する芸術祭」であることも大きな特徴で、市民を交えたワークショップも進行中だ。
生活都市を支える「サラリーマン」をモチーフに、目で見て楽しく、新しい視点や発見をもたらすような立体作品をつくる
ディレクターの芹沢高志は「この地域は、田畑に樹林地、住宅地、繁華街、超高層などが連なる、日本の土地利用の見本帳のような場所。都市と自然がどう折り合いをつけるのか、その境目でこそ浮き彫りになる。日常の場でどうアートが力を発揮するのか。アーティストたちは非常に面白い発見を提示してくれています」と話す。
アートの創造性とは、現実の別の姿や置き去りにされた想いや記憶、ささやかな喜び、思ってもみなかった可能性を感じさせてくれることでもある。見慣れた風景のなかにある美しさが、どんな発見や変化をもたらしてくれるのか。アートの魔術の現場に立ち会いたい。
さいたま市の風景や音からインスピレーションを得て、見慣れたはずの日常風景を全く違う姿で捉え直す映像作品を展開
ディレクター・芹沢高志さんに聞くみどころ
私たちは、さいたま市を、日本を代表する「生活都市」と位置づけました。つまり、大いなる日常が広がる場所。そこにアートという非日常を持ち込みます。私たちの生きる現場で、いかに想像力を羽ばたかせるか? 「未来の発見!」とは、未来を想像することに他なりません。
発表されるアートプロジェクトはすべてが新作。アーティストが、ディレクターたちと丁寧な対話を重ねて生み出してきたものばかりです。しかも創作のプロセスをできるかぎり市民に公開して、多くの人が自分のこととして参加できるように、さまざまな工夫をこらしてきました。また、なるべく気軽にアートに接してもらうために、一部のパフォーマンスを除き、展示はすべて鑑賞無料です。
永峰美佳=文
(『美術手帖』2016年8月号より)
会場:埼玉県さいたま市 (与野本町駅~大宮駅周辺/武蔵浦和駅~中浦和駅周辺/岩槻駅周辺) ※会期中は、主要エリアのほか、市内各地で各種アートイベントを実施予定
開場時間:10:00〜18:00(※最終入場は17:30まで)
鑑賞料: 無料 ※一部公演を除く
URL:http://saitamatriennale.jp
秋山さやか、アイガルス・ビクシェ、チェ・ジョンファ、日比野克彦、川埜龍三、アダム・マジャール、目、長島確、野口里佳、大友良英、小沢剛、ウィスット・ポンニミット、SMF(Saitama Muse Forum)、鈴木桃子、アピチャッポン・ウィーラセタクン、ユン・ハンソル 他