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期待のアーティストに聞く! 横山奈美が「やり直す」もの

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日常で気に留められることのないトイレットペーパーの芯や食物の皮などを描き、新たな存在感を与える、1986年生まれの横山奈美。初台のケンジタキギャラリー東京で開催中の個展「やり直し」(7月30日まで)にて新作を発表している横山に、作品について聞いた。

捨て去られるものの宿命と自立

 フランス新古典主義の画家、ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングルの《泉》に描かれた、水瓶を持つ裸婦。横山奈美は木炭画のシリーズ「女神になりたい女について」で、こうした西洋画の女性やヴィーナスなどと同じポーズをとる日本人女性を描いてきた。しかし画面の中の女性たちは堂々たるポーズとは不釣り合いに、一様に憂いのある表情を見せていることがわかる。「自分は西洋人になれない。それを自覚した瞬間の顔を描いています」。

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横山奈美 女神になりたい女について 2016 木炭紙に木炭、鉛筆 86.5×68.5cm

 思春期、華やかに脚光を浴びるアメリカのアイドルに憧れた横山は、その後、大学で「絵画」の背景に鎮座する西洋の歴史と文化を知り、自分を含む日本人の「宿命」ともいえる欧米コンプレックスに気づく。そんななか、近代日本を代表する洋画家、岸田劉生の展覧会を訪れたことをきっかけに「劉生が西洋への憧れを脱し、独自の絵画を確立したように、作品を通して『宿命』の先を表現したい」と考えたという。やがてその眼差しは、トイレットペーパーの芯、フライパンからこぼれ落ちた数本のモヤシなど、不要とされる些細なものの「宿命」にも向けられていった。「絵画によって、それらをモニュメンタルな存在へと変えられるのではないかと思いました」。

 ケンジタキギャラリー東京にて7月30日まで開催中の個展「やり直し」では、新作8点を発表。本展一番の大作《最初の物体》の中では、横たわる物体を微かな光が照らす様が表される。荘厳な趣のある物体の正体は、フライドチキンの骨。鳥の肉体を支え、調理され、ゴミになる。作家はその最後の骨の姿を、自身の背丈よりも大きな静物画として「やり直し」させた。そこに描かれるのは、定められた「宿命」からの自立の物語でもあるのだ。

文=野路千晶
『美術手帖』2016年8月号「ART NAVI」より)

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横山奈美「やり直し」
会期:2016年6月17日~7月30日
会場:ケンジタキギャラリー/東京
住所:新宿区西新宿3-18-2
電話番号:03-3378-6051
開館時間:12:00~19:00
休館日:日、月、祝
URL:www.kenjitaki.com

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