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美術手帖 2016年8月号「Editor's note」

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2016年7月16日発売の「美術手帖 2016年8月号」より、編集長の「Editor's note」をお届けします。

 今号は特集に「キャラクター生成論」をお送りします。主に取り上げるのは、3DCGアニメーションとバーチャルリアリティー(VR技術)となる。

 3DCGアニメーションでは、日本を代表する二つの制作スタジオを取材している。ともに日本で独自に発展を見せている、3DCGによる空間・造形の説得力と、手描きアニメならではの質感やキャラクターの魅力をハイブリッドさせた「セルルック」と呼ばれる手法に挑み、新たな表現領域を開拓している。これは、3DCGの空間と物語世界の中で、2次元のキャラクターが縦横無尽に動き回るさまに没入する体験を喚起するものだろう。

 この没入感の延長上には、「PlayStation VR」(PS VR)の登場でついに私たちの手の届くところまできた、バーチャルリアリティーの世界が広がっている。そのPS VRのキラーコンテンツとされているのが、家庭教師となって女子生徒を教える『サマーレッスン』である。その革新性は、まさにキャラクターとのコミュニケーションを高いリアリティーで享受させることにある。それは鑑賞から参加へと、キャラクターとの新たな関係を切り結びながら、私たちの現実感覚を拡張していくものになるだろう。

 さて前号の特集では、アニメ・マンガの世界を3次元に置き換えて体感する「2.5次元舞台/ミュージカル」がみせる新しいリアリティーを探っている。2次元の世界を現実世界の中に読み込む「2.5次元文化」の想像力と、今回の3DCGやVRといった仮想現実の中に現実と拮抗するような体感を読み込む技術革新──これらは私たちがキャラクターとどう向き合い、どう関わるかについての現在進行中の状況に対する応答として、コインの裏表のようなものかもしれない。最終章の「2016年キャラクター論」では、更新されつつあるキャラクー概念を読み解くための論点を様々な角度からテーブルに上げてもらった。

 「鑑賞から主体的な参加へ」。これは美術も含めた他の分野にも敷衍される大きな流れであり、それに真っ先に取り組んでいるエンターテインメント産業から得られる示唆は大きい。

2016.07
編集長 岩渕貞哉
美術手帖 2016年8月号
編集:美術出版社編集部
出版社:美術出版社
判型:A5判
刊行:2016年7月16日
価格:1728円(税込)

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