美術館の役割は、美術作品を展示することだけではない。作品やそれにまつわる資料を収集し、研究し、適切に保管すること、またそのような活動から得られた有益な情報が広く活用されるような発信や仕組みを考えていくことも美術館の重要な役割だ。3月20日、六本木の国立新美術館にて「日本の戦後美術資料の収集・公開・活用を考える」と題したシンポジウムが開催される。
近年、海外からも注目を集めている日本の戦後美術。作品はもちろんのこと、関連資料が適切に整理・保存され、研究が進むことで、より国際的な評価は高まっていくことだろう。2015年、大阪市が建設を進めている新しい美術館に、戦後日本屈指の前衛芸術グループ「具体美術協会」に関連する貴重な資料数万点が寄贈された。資料は、リーダーの吉原治良の蔵書をはじめ、展覧会やパフォーマンスの様子を記録した映像や写真、協会の機関誌、ポスターやパンフレットまで、種類や形状も多岐にわたる。こうした資料の収集、公開、そして活用は、美術館を中心とする関係機関の大きな課題だ。
このたび開催されるシンポジウムでは、この大阪新美術館建設準備室の「具体美術協会」関係資料を中心に、美術館の資料整備とアーカイブ方法について専門家や研究者を招き考える。インターネットが普及した現代、国内外の各美術館が所蔵品のデジタルデータ化や、外部からもアクセスできる検索システムの導入を行っているが、今のところ、その整理方法や公開の仕組みに共通のルールや正解はない。実際に美術館の所蔵品に日々接する学芸員や、戦後美術の調査・研究を行ってきた研究者たちが、アーカイブについてどのように考えているかを聞ける機会だ。

具体美術協会は、1954年に誕生し、関西を中心に活動した。吉原治良は大阪の生まれで、具体美術協会の活動拠点であった「グタイピナコテカ」があったのは、新美術館の設立予定地である中之島だ。いまや「GUTAI」の名で国際的にも認知されている具体美術協会の活動を、ゆかりの地である大阪市の新美術館は、今後どのように世界に向けて紹介していくのだろうか。シンポジウムでは、今年度の資料整理成果発表として、具体美術協会の関係映像フィルムの一部公開上映も予定している。
〜大阪新美術館建設準備室所蔵「具体美術協会」関係資料を中心に〜
会場:国立新美術館 3階講堂
住所:〒106-0032 東京都港区六本木7-22-2
電話番号(国立新美術館):03-5777-8600(ハローダイヤル)
参加費:無料
URL:http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu120/artrip/
シンポジウムに関する問合せ:06-6469-5189(大阪新美術館建設準備室 平日 9:00〜17:30)