1969年にマンガ家としてデビューしてから現在まで、『ポーの一族』や『トーマの心臓』など、幅広い世代から愛される名作を生み続けてきた萩尾望都(はぎお・もと)。彼女は「花の24年組」と称され、1970年代の少女マンガ黄金期を築きあげた立役者の一人だ。そんな萩尾望都のSF作品の原画展が、武蔵野市立吉祥寺美術館で開催される。日本少女マンガ史に残るSF作品のカラーイラストレーション、コミック生原稿など、200点を超えるSF原画が一堂に会する、贅沢な展示だ。
1997年『残酷な神が支配する』で手塚治虫文化賞マンガ優秀賞を受賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞を受賞、2012年には少女漫画家として初の紫綬褒章を受章した萩尾望都。彼女は、幼い頃から絵を描き、マンガや小説に親しんでおり、小説やギリシャ神話、児童向けのSFなどを読んだり、親戚の本屋でマンガを模写したりしていたという。
高校生の時に手塚治虫の『新選組』に感動しマンガ家を目指すことを決意。たびたび作品を雑誌に投稿し、1969年に「ルルとミミ」でデビューを果たす。竹宮恵子との共同生活のなかで、マンガ家を目指す同世代の女性たちと切磋琢磨の日々を送った。彼女らは昭和24年頃の生まれであることから、のちに「花の24年組」と称され、SF、ファンタジー、同性愛の要素などを取り入れた新しい感覚の作品を生みだした。

萩尾は、小学館にネームを持ち込んだ際、編集者の山本順也の目に留まり、70年代から本格的に作品を発表していくことになる。1976年には、従来の少女マンガには見られなかった本格的なSF作品『11人いる!』の連載を開始、その後はレイ・ブラッドベリを原作とするシリーズや『百億の昼と千億の夜』(光瀬龍原作)、『スター・レッド』、『マージナル』など、次々とSF作品を連載する。心理学を学んで発表した『メッシュ』や、2011年の東日本大震災に影響を受けて制作された『なのはな』など、精力的に活動を続けている彼女は現在も、月刊『YOU』(集英社)にて『王妃マルゴ』を連載中だ。
萩尾の作品は、他の作家や漫画家にも大きな影響を与えてきた。萩尾は、紫綬褒章受章時のインタビューで、「漫画は、カット割りで読み手の気持ちをとことん揺さぶることができ、映画や音楽のように読み手の感情を一気に引き込むことができる」と語っている。そして、それを体現したような作品に、多くの人が魅了されてきた。彼女のファンにかぎらずとも、萩尾望都のSFの魅力を十分に味わうことができる展示となっている。
場所:武蔵野市立吉祥寺美術館
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-16 FFビル(コピス吉祥寺A館)7階
電話番号:0422-22-0385
開館時間:10:00〜19:30
休館日:4月27日、5月25日
URL:http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2016/02/post-138.html