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Channel: bitecho[ビテチョー]
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期待のアーティストに聞く! 大田黒衣美が見つめる素材と身体性

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1980年生まれの大田黒衣美(おおたぐろ・えみ)は、チューインガムに加工を施した平面作品や、絵具に代わりに石膏を用いたドローイングなどの作品を制作してきた。KAYOKOYUKI(東京・駒込)にて開催中の個展「channel」では、チューインガムのシリーズを写真として展開した新作を中心に発表。さまざまな素材を用い、ときには大量生産品を作品へと転化させてきた大田黒に、作品について聞いた。

海を隔てた対岸の奥にあるイメージ

 木のそばで横たわる人、あぐらをかく人、または無造作な身体の一部。大田黒衣美が制作するシリーズ作品「sun bath」は、くつろぐ人々の姿をチューインガムでかたどり、微かな表情を切り込みが見せる平面作品だ。

「ガムは栄養を得るものでも飲み込むものでもない、ただリラックスするために食べる、人間ならではの嗜好品だと思いました」。しかし、その表面はしだいに褪色し、切り込みは失われる。はかなく変容する様は人間の肉体そのものを示唆する。KAYOKOYUKIにて4月23日より開催される個展「channel」では本シリーズの新たな展開として、写真を中心としたインスタレーションを展示する。

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大田黒衣美 sun bath 2016
Courtesy of the artist and KAYOKOYUKI

 作家はこれまで、絵具の代わりに石膏を用いたドローイングや、ウズラの卵の殻を用いた平面作品などを制作してきた。石膏、殻、ガム、そのすべてに当てはまるものは、絵具のなめらかさとは対をなす、粗く厚い質感だ。大田黒はそうした素材のほうが、より「自分の描きたいイメージを出しやすい」と話す。そして、そのイメージの在りかは個展タイトルの「channel(海峡)」で示されている。「制作時は、水面の様子を刻々と変える海の向こうにある島の、さらに奥を眺めているような感覚。人間の内なる動物性は、そのくらい遠い場所にあるのかもしれません」。

 素材の状態変化によって本来の姿から遠のいていくと同時に、じょじょに前景化する「sun bath」の身体性は、そのような遠い場所から、時間をかけてもたらされているようにも見える。「あくびやくしゃみといった意志で制御できない反応は、隠された動物性の一端だと思う。そんなふうに、一見すると普通だけど、割り切れない可笑しさを作品を通して見せたいです」。

文=野路千晶
『美術手帖』2016年5月号「ART NAVI」より)

大田黒衣美「channel」
会期:2016年4月23日~5月29日(会期延長のため、6月5日まで)
会場:KAYOKOYUKI
住所:東京都豊島区駒込2-14-2
電話番号:03-6873-6306
開館時間:12:00~19:00(日〜17:00)
休館日:月、火、祝、5月2日〜8日

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